見出し画像

脇役・関根大気あっての牧秀悟(2023.6.18 Sun 横浜DeNA 6-1 千葉ロッテ)


 前の晩は寝られなかった。
 ベイスターズにとって初の交流戦優勝のためには、読売などの結果次第とはいえ、日曜・月曜の連勝が必要な情勢だった。
 しかし、この日曜の千葉ロッテ戦の先発は佐々木朗希。日本屈指の投手を相手に勝たないといけないプレッシャーは相当なもので、単なる観客の私もまた、寝られないような緊張感に襲われていた。
 しかし、終わってみれば今シーズン一番の完勝であった。

先発・佐々木朗希は既に5勝


 殊勲は四番・牧秀悟。牧は4安打2打点の活躍で佐々木を攻略、さらに五番・宮﨑敏郎が6回ウラにライトスタンドポール脇最前列への2ランを放ち、引導を渡したという試合だった。
 だが、私が注目したいのは、一番・関根大気だ。
 関根は第一打席で低めストレートとフォークを見極めると、4回ウラの第二打席も先頭となり、2ストライクから4球をファウルにした。160km/h台のストレートをファウルにするのは一苦労だったろうが、関根は遂行して10球目で佐々木から初めての四球を勝ち取った。粘り勝ち。
 このとき、観客の私は「5球はファウルで粘れ!」と言っていたのだが、ベイスターズ全体で待球作戦を佐々木に仕掛けるとしたら、その先兵は関根以外にはないと思ったからだ。関根は見事に一番打者として佐々木攻略作戦を遂行し、橋頭保を築いたといえる。
 そして二番・楠本泰史もまた、2球目の160km/hストレートを三犠打にした。最近ベイスターズは犠打の失敗が多かったのだが、ここはきれいに決めた。
 三番・佐野恵太もセカンドゴロで進塁打でつなぎ、2回ウラに二塁打を打っていた牧が3球目フォークをレフト前タイムリー、という流れだ。
 関根・楠本・佐野が無安打で走者を三塁に進め、唯一当たっている四番・牧につなげるという、佐々木攻略のためのチームプレイだ。
 たしかに日本屈指の投手・佐々木朗希を打つのは、佐野・牧・宮﨑のいずれかだろうと想像がつく。牧は昨年もZOZOマリンで佐々木からホームランを打っているから、この中では牧が最も期待値が高いと言えたし、その通りになった。
 だが、あらためて見直してみれば、この作戦は関根が出塁しないと実現しないのである。牧だけでは得点できない、関根の出塁がカギである。
 その関根の第三打席もまた先頭打者、6回ウラ、初球真ん中低めストレートをいきなりセンター前ヒットとした。佐々木にすれば、またファウルで粘るのかなというところで、関根に意表を突かれた形となった。
 楠本のバスターエンドランは失敗したが関根の二盗が成功、佐野は空振り三振だったものの、牧が初球を外野前進守備を大きく超えるレフトオーバー三塁打で得点。牧は三塁に滑り込んでガッツポーズ。
 またしても、牧が主役、脇役は関根、である。

牧は快走して三塁に滑り込んだ


 この直後、五番・宮﨑敏郎が初球を2点本塁打。佐々木はあきれたような笑いを浮かべる。ZOZOマリンならライトフライだろう、と言いたげだが、ここは横浜スタジアム、ハマスタなりの戦い方をすべきところであり、甘えに過ぎない。
 現実には、佐々木朗希がベイスターズ打線に攻略された、という結果だけが残る。そこに言い訳が入る余地は無い。
 ダグアウトに下がった佐々木は水をがぶ飲み、顔は紅潮していた。

 この日は番長の早め早めの采配が目だった。2回の時点でリクエスト2回を使い切ったのは愚策のように見えたが、選手たちに「持てるもの総動員で勝つ!」という意思が伝わるきっかけになったかもしれない。
 5回ウラ、二塁走者・ソトに代走・神里和毅を出し、投手・石田健大に代打・オースティンを投入。これらは得点としては実らなかったが、矢継ぎ早に作戦を実行していくリズムが勝利を生んだようにも見えた。

 チームとして工夫すれば、日本屈指の佐々木朗希に勝てる。
 ならば、大竹耕太郎にも村上頌樹(しょうき)にも伊藤将司にも才木浩人にも西純矢にも同様に勝てるはずではないか。大瀬良大地にも、戸郷翔征にも。
 これまでのベイスターズ打線は調子次第の丁半ばくちのように見えたが、人智を尽くして「打線」として作戦を遂行する旨味をベイ各打者が覚えたら、もっと打てるようになるだろう。
 その主役は四番・牧秀悟、脇役は一番・関根大気だ。

この日は「牧の影武者」(そっくりさん)ご招待
あわやサイクルの4安打した牧は最高やね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?