見出し画像

『巨人と共に』 前編

森の巨人と少女の旅物語
2023年4月20日5月13日:X(Twitter)投稿分


scene1:出会い
人里離れた森小屋に、猫と暮らしはじめた少女。
食事の用意をしていると突然家が揺れ窓の外が暗くなった。
慌てて飛び出し見上げたその先には、こちらを覗き込む巨人の姿が、、


Scene2:暖かいスープ
「驚かせてごめんよ、とても美味しそうな香りがしたから、、」と言いながら頭をかいた。
少女はとても驚いたが、その優しい目と声に安心し笑顔になった。
すぐに小屋に戻り「どうぞ召し上がれっ」と、鍋いっぱいのスープを巨人に手渡した。


Scene3:多すぎるお礼
翌朝、巨人は大量の食料を抱えてやって来た。
「昨日は美味しいスープをありがとう!これはお礼だよ」
少女はあまりの多さに驚き言った。
「気持ちはとても嬉しいけどこんなに貰えないわ。森の動物たちの食べ物がなくなっちゃう」 そう言われ、巨人はしょんぼりうつむいた。

 

Scene4:祖母との思い出①
そして巨人は懐かしむ表情で言った。
「君はとてもよく似ている。ずっと前にここに住んでいた子にも同じことを言われたよ、、」
少女は驚き「えっお婆さまを知っているの!?」
そう、少女の祖母は幼い頃ここで暮らしていたのだ。
その祖母が亡くなりここに越して来たのだった。


Scene5:祖母との思い出②
少女は祖母との思い出を話しはじめた。
「私が寝る前にはいつも巨人の話を聞かせてくれたの」
「とても優しい巨人の話、、大好きだった!」
「お婆さまが考えた作り話だと思ってたけど、、」
「あれは本当の話、あなたとのお話しだったのね!」


Scene6:祖母から孫へ
祖母からの話を次々と思い出し、そして最後の話。
「一緒に行こうと約束した場所があったけど、街へ越すことになって、その約束は果たされなかった、、」と、
少女はしばらくうつむき、そして決断した表情で
「お願い!私をそこへ連れて行って!」
その言葉に驚き慌てる巨人。


Scene7:巨人の涙
巨人は目を閉じ泣きながら言った。
「やっぱりあの子の孫だ。気が強くて少し強引で」
「、、そうか覚えていてくれたんだね」
「僕もずっと覚えていたし、行けなくてとても残念だった、、」
そして目を開き、 「よしっ行こう!僕も君とあの場所を見たい!」


Scene8:旅立ちの前に
巨人は森の動物たちのリーダーを集め、これからしばらくこの森を離れることを告げた。
動物たちは寂しく不安だったが、いつも優しく見守ってくれた巨人の願いが叶うことを誰もが望み、快く送り出そうと笑顔で応えた。
「みんなありがとうっ!」


Scene9:旅立のとき
少女の旅支度も終わり、巨人の肩にのった。
いよいよ出発「みんな行ってくるよ!」 そう告げると、巨人は約束の場所に向かって歩き始めた。
一歩踏み出すごとに森は大きく揺れる。
動物たちはその揺れが小さくなくなるまで巨人を見送り続けた。


Scene10:果てない景色と想い
巨人の肩から見る景色は、まるで鳥になった気分だった。
地上からは見ることのできないどこまでも広がる景色に、少女の感動は止まない様子。
しかし、これから向かう約束の場所は巨人もまだ見たことのないとても美しい世界だと言う。
少女は益々胸を躍らせた。


Scene11:夕暮れ
そこは巨人の足でも何日もかかる遠い場所。
半日歩き通しで巨人の歩みも遅くなった。
少女は巨人を気遣い「もう陽も落ちてきしどこかで休みましょう」
その言葉に反応し、少し歩みを早めながら
「うんっ後もう少し、丁度あの先の大きな崖まで行って休もう!」


Scene12:そびえる壁
その崖は巨人ですら見えげるほどの高さだった。
辺りを見渡すが、この崖を登らなければその先に進むことはできなさそうだ。
「今日はここで寝て、明日に備えてしっかり疲れを取ろう」
そう言うと崖を背に腰を下ろした。


Scene13:夜の騒音
腰を下ろしたとたんすぐに巨人は眠りについた。
「よっぽど疲れたのね、ぐっすりおやすみなさい」
そう言って少女も猫と巨人のゴワゴワの髭に座り眠った。
しかし、しばらくして騒音とともに目を覚ました。
それは巨人のいびきだと気づく。 とても眠れそうにない、、

Scene14:突き出した岩陰
しばらくすると、崖の上から岩がゴリゴリと擦れるような音が聞こえてきた。
目を向けるとそこには大きく突き出した岩が。
あんなに大きな岩が落ちてくれば、いくら巨人でもただでは済みそうにない。
少女は慌てて巨人に起きるよう、大きな声で叫んだ。


Scene15:崖の主
しかし巨人は一向に起きる気配がない。
そして突き出た岩とは逆の方向から長く巨大な影がゆっくりと近づく、、
それは巨人を掴めるほど大きな岩の手だった。
崖の上に巨人の大きさを遥かに凌ぐ、岩の巨人が見下ろしていた。


Scene16:
大きな手は眠ったままの巨人を掴み軽々と持ち上げた。
これに気づいた巨人は驚き声をあげる。
その様子に岩の巨人はしかめ面で「シ〜、、静かにしろっ」
巨人はグッと声を飲み込んだ。


Scene17:共通の悩み
「よし、それでいい」と岩の巨人の表情は柔らかくなり、
「君のいびきに驚いて目が覚めたんじゃ」
「よほど疲れておったのじゃろうが、こうもうるさいと眠れんっ」
「なぁ嬢ちゃん」 そう言われ、少女は照れながらうなずいた。


Scene18:防音対策
「とは言え君もしっかり寝ておかんとな」
そう言うと、少し離れた場所に巨人を立たせ 「その場を動くなよ」
と声をかけた途端、 ゴゴゴッと巨大な岩の壁が競り上がり、巨人をすっぽりと囲ってしまった。
「この中で眠ればいびきも漏れず、みんなゆっくり眠れるじゃろ」


Scene19:目覚めと共に
「よく眠れたか?」
二人共もスッキリした表情で「はいっお陰様で!」
そして目的地のことを話し、一緒に行こうと誘った。
しかし残念そうに「ありがとう。じゃがここから離れることはできない」 「ここから君たちの旅の無事を祈ってるよ」 そう言って二人を送り出した。


Scene20:孤独な巨人
再び目的地へと歩き出した巨人たち。
振り返ると岩の巨人はまだこちらに手を振っていた。
長い間訪れる者はなく独り寂しかったのだろう。
彼の半身は崖と同化しこの崖を離れることができないようだ。
旅の帰りにまた訪れ、今度はゆっくり土産話をしようとうなずき合う。

後編に続く(Scene21)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?