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学生の頃読んだ小説で、当時凄く共感してしまった一作を紹介していきたいと思います。

こんばんは。お疲れ様です。


 本日は趣味の話をしていきたいと思います。
最初にタイトルを紹介しますが今から14年前くらいに発刊された
『マテリアルゴースト』と言う、葵せきなによる日本のライトノベルになります。全五巻しかないのですが、なかなか設定なども凝っており一度読んでみるのをお勧めします。

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 また自分自身、当時かなりのライトノベルマニアで、月に二十冊以上買っていたのですがその中でも特にこの一冊は変わっていると言うか、異質と言うかちょっと説明しずらいんですよね。

 何故ならこの主人公の設定が当時の中ではなかなか見つからないもので、まず自殺志望で、口癖で「死にてぇ」とよく言っているが、その割に痛いことは嫌なので苦しまずに死ねる方法を探している。現在は家族から離れて一人暮らしをしている。

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 当時では主人公は多々あれど、いきなり自殺志願者で、口癖が「死にてぇ」と言うのはまずなく、その割に痛い事がダメなので苦しまずに死ねる方法を探しているとか既に物語が終わっているような設定だったんですよね。

 なので当時ラノベの後ろにあるあらすじを読んだ時は、これは買ってみなければと思い買ってしまいました
そしてその内容の方ですがこの主人公の能力が結構面白くて、ある時事故に合って得た特殊能力と言うのが
「自分の半径2m範囲内の幽霊を実体化させる」と言う幽霊以外には全く意味の無い物だったのです。

 当時の主人公としては本当にこんな能力でいいのか、とか思っていたんですが後々考えると凄くいい物だったと分かります。

 何故なら幽霊ならば物質化させて、問答無用で物理攻撃を可能に出来ると言うのだったからです。この設定を見た時、なるほど!と思わず言ってしまいました。

 そして物語に戻りますがこれは今でも結構ある設定で、この能力のおかげで記憶喪失の幽霊の少女のヒロインと出会い、奇妙な同棲生活を送る事になる。と言う物で最近でも結構あったりもしますよね。

 ただこの時はこのままラブコメ路線へ行くのかなと思っていたんですが、実際の所全く違い、物語が進んでいくと実は主人公が死にたがりになった理由と言うのは「自分の半径2m範囲内の幽霊を実体化させる」がこの能力が関係しており、物質化させて殺せると言う事は、それは物質化したら生き返っている状況になると言う事です。

 その為、世界の摂理を壊すことから、生きとし生けるもの全てから拒否されると言う重圧を世界から受け続けていたからと言う事が分かり、普通なら精神崩壊を起こしている所を強靭な霊力と精神力で「死にたがる」だけで抑えていたことが分かります。

 そうなんですよね、いきなりラブコメから世界のを巻き込む系へと変わってしまうんです。しかも何故世界を巻き込むのかと言うと、この主人公の能力の範囲がどんどん広がっていくからなんです。

 そしてその中で、実は記憶喪失の幽霊の少女のヒロインは世界の意思によって作られ、主人公を監視するために派遣された事やこのまま主人公の能力が強くなれば世界の生者と死者の境界が消えてしまうとか、ラスボスキャラが出てきたりとか、いろいろな葛藤があって終盤へ差し掛かかるのです。

 そしてさあラストバトルだと言う所の、最終巻の一つ前の巻でラスボスの策略であっけなく主人公が死んじゃうんですよね。いや、最終巻の前でいきなり主人公が死ぬとか、当時のラノベでは全く考えられなく、結構ヤキモキさせられたりもしました。

 それ故、当時リアルタイムで読んでいた自分としては、次の最終巻が出るまでの間は本当に色々と待たされた気分でした。

 四巻のラストから、一体どうやって展開するのかと思っていたのですが、まあ半分予想外。まさかこんな形で主人公を登場させるとはと言う物でした。


また最終巻だけあって、内容がかなり濃かったです。四巻のときも濃かったけど、今回は話が二転三転したからなぁ。正直、ラストをどうもって行くのかかなり心配でした

 何故ならヒロインの一人が主人公と言う大切な存在が抜けた穴を埋めるためにペットを飼うなんて良くあることかもしれないけど、このタイミングでこのヒロインがまずやらないと思ったその黒猫の名前を主人公の名前に似せるだなんて想像できませんでした。
他にもヒロインは結構いて、あっちもこっちでも結構テンションが下がる内容でした。

 しかも途中に新たな主人公とか、新キャラとかもう主人公どこ行ったのかなと思えるところも多々あったのですが、実は新キャラ(女)の一人が死んだ主人公だったのは素で驚きました。


 いや、まあ、確かにどうにか上手くやるんだろうなとは思ってましたが、まさかこんな形でやってくれるとは思いませんでした。考えてみたら今までの巻すべてが伏線になっていて叙述トリックとまでは行かないけれど、素直に驚くことは出来ました。


 で、それが各ヒロインにばれ、主人公が実は自身の能力でこの本の題名でもあるマテリアルゴーストに成っていた事が判明しました。ただ主人公が登場するまでで本書の半分使ってしまっていたのでほんと濃密度でした。


 ただここで素直に称賛したいのは、色々とばら撒かれた謎を一気に解決していて、なお萎えさせることがなかったんですからすごいです。生半可な作家だったらこの段階で萎えてテンションが一気に下がって読む気が無くなるのに、ここから読ませたいと思わせる内容だったのです。

 そして、そっから最終決戦までの間も素直にいい。主人公の帰還に各ヒロインみんな号泣のシーンもジンと来ました
それぞれのキャラの対応が、またそのキャラらしい反応で……。普通こういう死んだキャラが生き返るのって展開的には萎えることが多いのに、むしろ感動してしまったので文句の付けようが無かったです。


 その後、主人公が世界を救えるたった一人だということを言われたときも、「世界を救うなんて」とかいう感情はまったく起きず、
むしろ「おう! いけ!主人公!」と心の中で思ってしまって。
この時に自身は、完全に物語に囚われていました。

 また決戦前夜のヒロイン全員とのデートは、また泣かされました。
その時も、各ヒロインたちに告白され、それでもしっかりと自分の気持ちを伝えた主人公はいい奴だと思えた。

 ただ性格的には死にたがりの呪縛から解放された主人公は。エロゲ主人公みたいなヤツになってしまったけど、こういう選択をしっかり出来るのだから格好いい。まあ、まさか最後まであるヒロインの気持ちに気づかないほど鈍感を貫き通すとは思わなかったけどね。

 そして最終決戦。ヒロインと分かるシーンは名場面です。今回の巻は全体的に名台詞が多いけど、特にこの場面とエピローグでは、そのすべてのセリフが心に響いてくるものでした。

 主人公さえ一緒にいてくれれば、主人公が他の誰かと付き合おうと別に良かったとまで言う幽霊少女のヒロインの甲斐甲斐しさが胸を揺さぶるし、主人公の本気の思いが地の文や一人称から一々伝わってくるんです。
ただベタなんですけどね。ほんっと、ベッタベタで何処にでもあるような展開なのに、ずっと引き込まれているんですよ。そして色々あって幽霊少女のヒロインと別れを告げ、主人公は一度敗北したラスボスの元へ向かいます。


 そこでの決戦については、あんまり思うところはないです。ラスボスの過去とかは、ちょっと残念だったかなぁと思うエピソードのうちの一つです。
ここはもう少し、せめて前の巻辺りでもうちょっと補完していてくれたらよかったのにと思います。けれど、そんなことを言っても話自体はかなり良かったんですけどね。ここがもう一息あれば、もっとラスボスに共感できたかもしれません。


 また実質上の本物のラスボス、《世界の意思》との会話は、誰もが抱く問題です。そして、今までも世界中の様々な作品で言われてきた話で、そんな作品群の中の一つの決着でしたが、これはやっぱりこう落ち着くしかない問題です。

そりゃあ、日常生活を送っていると嫌なことはいっぱいある。だけど、だからと言って自分の世界に引きこもっていてはいけないんですよね。世界というのは、違う価値観を持っている他者がいるからこそ成り立っているし、楽しいものなのだから。


 まあ、何が言いたいかと言うと、自身としては最後の王道的な展開がとても嬉しかったんですよね。

 最後の最後で、幽霊少女のヒロインと主人公がお礼を言い合うところ、あのシーンがあるからこそ、すべては丸く収まるのです。別れでもなく、愛の言葉でもなく、互いを認め合い、思いが通じ合ったからこそ出る感謝の言葉。その言葉が、今までの物語すべてを語っているといっても過言ではありません。やはり王道は最高ですね!

 そしてそして、後日談。エピローグ。
 三年のときがたち、マテリアルゴーストとして生きて事件の後始末をしていた主人公。その間になんかいろいろ話が進んでて・・・って、結局幼馴染のヒロインとくっついたんですかあなた!?と言う感じでした。


 まさかのエピローグでの大どんでん返し。一体きっかけとなった事件はどんなものなのか気になるところです。まあ、予想外ではありましたけど、しかしそれでも違和感を感じないんですよね。他にこれしかないと言うヒロインが居たのに、一番これは無いだろうと言う幼馴染エンドだったとは。


 また主に違うヒロインとの会話で語られる、そんな幼馴染のヒロインとの三年間の生活は、面白おかしく、ってか幼馴染のヒロインの嫉妬深さがよく分かる物語でした。

この三年の甘い恋人生活も見てみたい。きっと真面目ながらも面白おかしい日々なんだろうな。

 ただ、そんな二人の別れの朝。それは、とてもさっぱりしたものでした。

 「いってらっしゃい」
 「……いってきます」


 いつもどおりのそのあいさつ。正直、ここだけでもハッピーエンドに等しい感動があります。だけど、これだけでは終わりません


 何故なら主人公が最後に会うのは、自身が本命だと思ったヒロインでした。
 まあ、言うならば幼馴染のヒロインに負けてしまった先輩ヒロインですが、その後もいろいろアプローチしていたらしく、その姿はなんだからしいなと思いなかなかいいキャラだなと思いました。
そして語られる先輩ヒロインの夢。『教師』になる、という将来の道。

実はこれアニメにもなった、生徒会の一存のシリーズに繋がるのです。これを思うと、生徒会二巻での先生のセリフが印象深いものになります。
 そういえば、ここでも伏線が一つ。先輩ヒロインの弟の話なんですけど、これも生徒会シリーズか、もしくは他のシリーズにつなげるための伏線かな。なんか気になります。 

それはともかく。この場面での一番のセリフはこれ。

 
「今日まで生きてくれて、ありがとう」


 これの場面を読んだら、涙腺が崩壊してしまいましたね。
 五巻の中でたくさんあった名台詞の効果を一気に発動させる、最強の一言。一番強烈な物でした。
 本当にこればっかりは言葉で表せるものじゃない。ここまで読んできたからこそ感じることが出来る感動。積み重ねがあって生きてくる言葉。これこそ、シリーズモノの一番大切なこと。それを味あわせてもらえるのは本当に少ないですね。

大抵の物は結構どこかで迷走したり、打ち切りになったり、先延ばしになったりしてしまい途中で終わってしまう物が多いですから。

 で、この感動を抱えたまま、ラストの主人公が消えるまでの場面の、幻影の幽霊少女のヒロインとの会話これですべてのエピローグが終了し、最後の一文。

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太陽に掲げた手のひらは、キラキラと、眩く、輝いていた。


 すっと胸がすくようなラスト。清々しい読了感。本当に、いい話を読んだと思える瞬間でした。

ただ素直に、面白いと思いながら読めて、面白いと思ったまま本を閉じることが出来た、ただそれだけです。
 でも、そんな読書こそが、一番幸せなものだと思います。

ただ、自分が面白かったと思えればそれでいい。楽しめたかどうか、それが一番重要なんです。


 その点で言えば、この『マテリアルゴースト』という作品は、文句なしの面白さを持っていたと思います。

全体的にバランスがいいから特にそう思えるのです。ギャグに特化した小説や、シリアスに特化した小説もいいですが、こういう風にバランスがいいもので、全体的にレベルが高いものは、それだけで読み応えがあります。

正直ここまで褒め続けようと思うのは、ゼロの使い魔のヤマグチノボル先生に続いて二人目でした。ただ『葵せきな』という作家のこの作品は自身の中では本当の意味では一番なのかもしれません。


 あの当時のラノベの主人公としては、本当にあり得ない設定だなと思ったんですが最後まで読むと全てがすっきりします。またこのラノベが出て暫くしてからコミックになったりしたのですが、数年たっていた事もあってその頃には斬新さも薄れていた為か一番面白くなる場所まで行く前に打ち切りにあってしまったようです。

ですのでアニメ化まで持っていけなかったのが、自身としては本当に残念でなりませんでした。

では、かなりの長文になってしまいましたが、この辺で本日は終わりにさせて頂きます。もしこの記事が少しでも皆さんに読んで貰えたら幸いです。


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