5/26 ちあきなおみ「喝采」

ちあきなおみの歌が好きだ。中でも切実に力強く歌い上げる歌が好き。

「喝采」は何度も何度も聴いている。というか毎日口ずさんでいる。

暗い待合室
話す人もない私の耳に
私の歌が通り過ぎてゆく

ちあきなおみ「喝采」


どれだけ口ずさんでも残り続ける謎みたいなものがこの歌にはある。
特にこの部分の歌詞の情景を思うと、私は取り憑かれたように想像に耽ることがある。

この場面で「通り過ぎてゆく」私の歌とは、本当に待合室のラジオか何かで流れている歌なのだろうか。それはそれでドラマチックだけど、そうではない、と考えることもできる。

過去の思いに引きずられて訪れた故郷、その葬式の薄暗い雰囲気の待合室で、ひとりぼっちでいる主人公。このとき暗いのは部屋の明かりではなく、主人公を取り囲む世界だろう。その闇が主人公の輪郭をむしろはっきりと描き出し、場違いな感覚、孤独感を印象づける。

大切な人すらもいなくなった故郷はもう自分の居場所ではないのかもしれない。そう問いかけた時、ふと頭の中に「私の歌」が通り過ぎる。まるで自分の居場所を思い出させるように。

たったあれだけの短い歌詞にこんなにも情景が溢れている。私は本当にこの歌が好きだし、特に若い頃のちあきなおみの切実に語りかける歌い方が大好きだ。



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