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*dʰewgʰ- [dugan/doughty/दूध]

heldio #1124 での名台詞 "Wyrd oft nereð unfǣgne eorl, þonne his ellen dēah" の最後の1語がしびれる。

動詞の原形は dugan で活用形が dēah ということらしい。
口蓋音 /g/が/h/に変わっていく途中を見ているようだ。dugan と同語源の英語は doughty (勇猛な) や douth (優秀, 徳) という単語があるようだがあまり聞いたことがない。

でもどこかで見た気がする。そう思って語根を見てみると、印欧語根は *dʰewgʰ-/*dheugh-。意味は "to produce something of utility" とある。Wiktionary では "to hit (not missing)", "to be strong, have force" の意味もあるそうだ。これは、なんと数日前に調べた、現代ヒンディー語の  दूध (dūdh) "乳搾り・牛乳" につながる語だった!

「的を絞り力を込めてことに当たれば、必然的に相応の良い結果が生み出される」。動詞 dugan の根底にそんなニュアンスがあるような気がした。牛が大好きなインド語派では、その象徴がミルクだったのだろうか。牛の乳房を搾れば自ずと貴重な産物ミルクが出るように。そんな単純化できるものではないのは百も承知だが、生み出される上質なものみなぎるものとして上位に出てくるのが、Germanic では「勇気」、Indic では「ミルク」と、文化の違いも垣間見えた気がする。

印欧祖語 *dʰedʰówgʰe,
   to be productive
印欧語根 *dʰewgʰ-
   to hit (as opposed to missing)
   to produce, to produce something useful
   to be strong, have force

現代英語
   doughty /dάʊṭi/ 勇猛な
   douth /daʊθ/ 優秀, 徳

サンスクリット/ヒンディー語
   दुग्ध (dugdh), दूध (dūdh) "milk"

朝に顔を洗って “Wyrd oft nereð unfǣgne eorl, þonne his ellen dēah” と唱え、ミルクで煮出したチャイをグビっと飲んで今日も出勤するのだ。

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