第17回ミステリーズ!新人賞の一次選考結果を確認し、おれの中で鮮やかに展開された妄想

登場人物
おれ:大山哲夫。今回も新人賞に応募するが……。
おれの夢を阻む何者かA:名のとおりの悪役。なんかお高くとまっている。以下、お何A
おれの夢を阻む何者かB:男言葉を使うが、女性の設定。脳内元カノ。なんか怖い。以下、お何B
おれの今作:斬新なアイディアを盛り込んだ(と作者は思っている)今回の応募作。ミステリーズ!新人賞に応募。

   戦場。なぜか戦っているおれたち。
   お何AとBに追いつめられる、おれ。
お何A「落とされる作品を応募しにきたか、哲夫」
おれ「ええい!」
お何A「ぬかったな、哲夫」
お何B「こんなところで落選する己の作品の不出来を呪うがいい」
おれ「そうかな?」
お何B「もしも、夢をあきらめて実家にでも戻る意思があるのならば」
おれ「何を言う!」
お何A「道を誤ったのだよ。きさまのような小説家のなり損ないは、粛清される運命なのだ! わかるか!」
おれ「まだだ! まだ終わらんよ!」

   おれは奴らの猛攻から一時的に逃れる。
   だが逃げ込んだ先でまた追いつめられる。
おれ「劇場の跡か」
   お何Bが姿を現す。
お何B「たいした役者だったよ哲夫。話し合いの余地がないとするならば、ここがおまえの今作の死に場所になるな」
おれ「いや、もう1人、役者がいるな」
   お何Aが物陰から出てくる。
お何A「ふふふ」
お何B「そうだな。こんな芝居じみたことはAの領分だったな」
お何A「わたしは人々の才能の立会人に過ぎんから、そうも見えるか(注:何言ってるんだ、こいつ)。が、哲夫よりは冷静だ」
おれ「わたしが冷静でないだと?」
お何A「そうだよ。きさまはその歳(注:40代半ば)で定職にもつかず、途方もない夢を追いかけている」
お何B「Aの言うとおりだろう哲夫。ならば真っ当な生活を送るよう方向転換すればいい。その上で世界のことをともに考えよう」
おれ「わたしはただ、新人賞を獲得して夢をかなえたいだけだ」
お何B「では聞くが、一次選考で何度も自作が落選した世界で、おまえはこれ以上何をしようというのだ?」
おれ「たとえ落選作でも、キャラクターや題材はまた使えるときが来る。そのときを待つ」
お何B「世間の平均的な生き方に同調できなければ排除するだけだ。その上で就職と結婚をする。それがわかりやすく、一人前だと示すことになる」
おれ「世間に合わせただけの、自分を偽った生き方だと気づかんのか?」
お何B「世間の常識というものを洞察できない男は、排除すべきだ!」
おれ「それは違う! 本当に排除しなければならないのは、世間の常識に魂を引かれた人間たちだろう!  けど、そのためにおれが夢を捨てるなんて、間違ってる!」
お何B「愚劣なことを言う」
お何A「生の感情を出すようでは俗人を動かすことはできても、われわれには通じんな!」
おれ「人の夢を大事にしない世間の常識に従って、何になるんだ!」
お何A「天才の足を引っ張ることしかできなかったワナビどもに、何ができた? 常に世の中を動かしてきたのは、一握りの天才だ!」
おれ「違う!」
お何A「ちっぽけな感傷は、おまえ自身を破滅に導くだけだ!」

   困憊していくおれに、今作が語りかける。
おれの今作「あなたは、まだやることがあるでしょう。今までの新人賞で落選していったあなたの作品たちは、いつかあなたの夢がかなうと信じながら、落ちていったんです。ぼくも、あなたを信じますから!」

   自信を少し取り戻したおれは、お何Bとの決戦に向かう。
   お何Bのなんかすごい武器を押さえる。しかし……。
   (注:とりあえず、お何Aは無視)
おれ「これであの武器は使えまい!」
お何B「甘いな、哲夫」
   お何B、インターネットの画面を見せる。
   一次選考通過作の中に、今作の名はなかった。
おれ「な、なにィ!」
   敗北を知り、崩れ落ちるおれ。
お何B「これで新人賞への応募は終わりにするか? 続けるか? 哲夫!」
おれ「そんな決定権がおまえにあるのか?(注:いや、どうするか聞かれているんだけどね)
お何B「口のきき方に気をつけてもらおう!(注:質問を質問で返されてお怒り)
   おれ、戦場を爆破して命からがら逃げる。

おれ「今のわたしでは新人賞をとれん。今作よ、わたしを導いてくれ……!」


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