ふりかえり高校数学 第2回

この記事は,これから大学で数学を扱うには高校の内容を忘れてしまったという仲間うちで行った勉強会の内容である.そのため,内容は最低限であって何か則っているわけではないし,高校生や社会人の参考になるかどうかというのも全くわからないことを最初に断っておく.

文頭で %記号を用いている段落はちょっとしたつぶやきだと思ってほしい.

Chapter 2 数

2.1 数の集合

まずは自然数 $${\mathbb{N}}$$ から始める.$${\mathbb{N}}$$ のような記号は,その数すべてをまとめて表す集合の記号であり,自然数の場合それは $${\mathbb{N}}$$ と表すことがある.

% 集合とは,大雑把に言えばものの集まりのことである.

% $${\mathbb{N}}$$ は自然数の英語名 Natural number の頭文字からとったといわれる.

自然数 $${\mathbb{N}}$$ はものの個数を数えるような日常的な数たちで,多くの場合は0を含まず,切の良い

$$
1, 2, 3, 4, 5, 6, \ldots
$$

という数たちである.

% 議論の展開上,0 を自然数とすることがあるから,多くの場合と言った.

ここで重要なのは,集合の数同士での演算結果である.例えば,自然数同士の足し算と掛け算の演算結果はすべて自然数になる.しかし,次のような引き算と割り算は自然数では表せない.

$$
3 - 5,\\
5 \div 3.
$$

このように,その演算結果がすべてその集合に含まれる演算は,その集合はこの演算について閉じているということがある.つまり,自然数 $${\mathbb{N}}$$ は足し算と掛け算では閉じているが,引き算と割り算では閉じていない.

そこで,さらに引き算について閉じている数の集合が整数 $${\mathbb{Z}}$$ である.

% $${\mathbb{Z}}$$ は数の独語名 Zahlen からとった説がある.

整数 $${\mathbb{Z}}$$ は,自然数に 0 とマイナス($${-}$$)の符号をつけた自然数が加わった数の集合である.整数 $${\mathbb{Z}}$$ は自然数 $${\mathbb{N}}$$ を含み,足し算と掛け算について閉じている.つまり,自然数は整数である.また自然数では表せなかった引き算についても

$$
3 - 5 = -2
$$

のように,負の数が加わったことで閉じている.しかし,整数同士の割り算による数の一部は整数で表すことができない.つまり,整数 $${\mathbb{Z}}$$ は割り算について閉じていない.

そこで,いっそ数を割り算で表してしまうような数の集合が有理数 $${\mathbb{Q}}$$ である.

% $${\mathbb{Q}}$$ は商の英語名 Quotient からとったといわれる.ちなみに,有理数の英語名は Ratinal numberであり,有 "理" 数というよりかは 有 "比" 数であるとか言われたりする.

とある有理数 $${q}$$ は,2つの整数 $${m \neq 0, n}$$ を用いて,

$$
q = \frac{n}{m}
$$

と表せる.任意の整数 $${z}$$ は $${m = 1}$$ の場合である.したがって,有理数 $${\mathbb{Q}}$$ は整数 $${\mathbb{Z}}$$を含んでいる.

% $${m \neq 0}$$ としたのは,割り算では割る数が 0 という場合の値が定義できず,割り算という計算では結果を矛盾なく決めることができないからである.ゼロ除算とか呼ばれる.

これらの数の集合について,それぞれに数が加わっていったり,数の集合をもちいて数を作ったりしたことから,自然数 $${\mathbb{N}}$$ は整数 $${\mathbb{Z}}$$ の一部であり,整数 $${\mathbb{Z}}$$ は有理数 $${\mathbb{Q}}$$ の一部である.つまり,自然数 $${\mathbb{N}}$$ は有理数 $${\mathbb{Q}}$$ の一部でもある.このように,自然数 $${\mathbb{N}}$$ は整数 $${\mathbb{Z}}$$ に含まれ,整数 $${\mathbb{Z}}$$ は有理数 $${\mathbb{Q}}$$ に含まれるという包含関係を持っている.

最後は 無理数 $${\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}}$$ である.これは有理数 $${\mathbb{Q}}$$ には含まれない数の集合である.つまり,有理数 $${\mathbb{Q}}$$ では表しきれないような数すべてを含んでいる.

% $${\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}}$$ というのは,この後に出す数の集合,実数 $${\mathbb{R}}$$ には含まれるが有理数 $${\mathbb{Q}}$$ には含まれない数という差集合($${\backslash}$$)の書き方を用いた表現である.

これで,単純な数はすべて集合に含められたことになる.それは,無理数 $${\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}}$$ が有理数 $${\mathbb{Q}}$$ 以外の数すべてを含めたことからわかる.

% 単純な数といったのは,虚数単位をもちいて定義される複素数 $${\mathbb{C}}$$ を避けるためである.少なくとも,高校では普段使いせずある程度隔離されている.ちなみに,複素数の英語名は Complex number である.

ここで,これらの総合として,有理数 $${\mathbb{Q}}$$ と無理数 $${\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}}$$ を合わせて実数 $${\mathbb{R}}$$ という.

% $${\mathbb{R}}$$ は実数の英語名 Real number の頭文字からとったといわれる.

高校では,基本的に断りのない限りは実数 $${\mathbb{R}}$$ のこととして話を進めていく.

% 逆に言えば,これまでの話はどちらかといえば逆順であって,大枠に実数という集合があって,そのなかで主要な数の集合とは何かを書いてきたといってもいい.

2.2 絶対値

% 絶対値はある値を扱うときに便利な記号である.とくに気負わずに,こういう記号を導入すると簡単に表せることがあるという程度に考えてほしい.このような記号を導入することで,記述を省略できたり見た目を簡単に表すというのはよくあることだ.

絶対値はある数 $${x}$$ に対して

$$
|x| = \begin{cases} x & (x \geq 0)\\
-x & (x < 0)
\end{cases}
$$

とした値である.これは言葉で言えば,数 $${x}$$ が正ならそのまま,負なら $${-1}$$ 倍を掛けて正の数にする働きを表している.

とはいえ絶対値は上の表式として等しいから,このように場合分けして書き換えることを忘れてはならない.

% 言葉での説明は簡単に言い表すためであって,その定義通りには解釈しきれないだろう.

このときに気を付けて欲しいことは,$${x < 0}$$ のときには $${-x}$$ が表す数は正であることだ.これは, $${x < 0}$$ の両辺を $${-1}$$ 倍してやれば $${-x > 0}$$ よりわかる.

% この不等式の変形はまだ扱っていないが,具体的には $${x = -1}$$ とすれば $${x < 0}$$ であり,これを $${-1}$$ 倍すれば確かに $${(-1) x = (-1) \times -1 = 1}$$ となり正となる.

2.3 根号と平方根

% 根号も絶対値のようなある値を扱うために便利な記号である.

2..1 根号の定義

0 以上の実数 $${a}$$ について

$$
x^2 = a
$$

を満たす 0 以上の数 $${x}$$ はただひとつに決まる.これを $${\sqrt{a}}$$ と表し,記号 $${\sqrt{}}$$ を根号という.

% 0以上の数 $${x}$$ というところに注意してほしい.負の場合はマイナスで表現できるから,根号の定義には含む必要がない.

性質らしく言えば,根号とは2乗すれば $${a}$$ に等しくなる正の数 $${x}$$ を記号をもちいて $${\sqrt{a}}$$ と表すことにした,すなわち2乗したら $${a}$$ である正の数を $${\sqrt{a}}$$ と表すという話である.

% 実数の2乗は $${(-1)^2 = 1}$$ より必ず 0 以上であるから,2乗して負となるような実数,つまり $${x = \sqrt{-a}}$$ なる実数 $${x}$$ は存在しないため $${a}$$ は正の実数と断わった.

2.3.2 平方根の定義

% 平方根は方程式に近いが,根号を用いる例として一応扱う.ここでのメインは根号であることは強調しておく.

平方根とは数 $${a}$$ に対して

$$
x^2 = a
$$

を満たす $${x}$$ のことである.この $${x}$$ を $${a}$$ の平方根という.

% 平方は2乗の意味をもつ.ちなみに立方は3乗の意味をもつから,$${x^3 = a}$$ を満たす $${x}$$ なら立方根と言ったりする.

この $${x}$$ は根号を用いて表すと簡単である.つまり,$${x^2 = a}$$ を満たす $${x}$$ が正であれば $${\sqrt{a}}$$ であり,負であれば $${-\sqrt{a}}$$ が満たすから $${x = \pm \sqrt{a}}$$ が平方根である.

まずは簡単な例として 4 の平方根を考えてみる.つまり

$$
x^2 = 4
$$

なる数 $${x}$$ のことであり,これは明らかに $${ x = \pm 2}$$ である.実際 $${(\pm 2)^2 = 4}$$ より $${x^2 = 4}$$ を満たす.したがって 4 の平方根は $${\pm 2}$$ である.

% 論理的なところは気にしていない.つまり,$${x = \pm 2}$$ 以外に解が存在しないことについては,方程式について扱っていないためここでは考えない.

次に 3 の平方根を考えてみる.つまり

$$
x^2 = 3
$$

なる数 $${x}$$ のことであり,根号を用いれば $${x = \pm \sqrt{3}}$$ と表せる.

では,ここで少し考えてみる. 3 の平方根は何か簡単な数で表せるだろうか.

先に考えた 4 の平方根というのは,根号を用いなくても経験的にでも聞いただけだとしても 2 と -2 が満たすとわかるだろうが,2乗して 3 になる数 $${x = \pm \sqrt{3}}$$ というのは簡単に言うことはできない.実際,この数は $${\sqrt{3} = 1.732 \ldots}$$ と循環せず無限に続く無理数で,簡単には言い表せないし書くこともできなかった.

しかし,このように根号を用いれば,中身が簡単にわからないような数についてもある程度簡単に表すことができて便利である.

2.3.3 性質

根号が含まれた式はどのように計算されるのかを見る.

$$
\begin{array}{cc}
\sqrt{a} \times \sqrt{b} &=& \sqrt{ab} & (a, b \geq 0)\\
\sqrt{m^{2} a} &=& m \sqrt{a} & (m, a \geq 0)\\
\sqrt{a} \div \sqrt{b} &=& \sqrt{\dfrac{a}{b}} & (a, b \geq 0)
\end{array}
$$

第1式は,$${x = \sqrt{a} \times \sqrt{b}}$$ とおけば,$${x > 0}$$ で

$$
\begin{array}{}
x^2 &=& (\sqrt{a} \times \sqrt{b})^2\\
&=& (\sqrt{a})^2(\sqrt{b})^2\\
&=& ab
\end{array}
$$

であるから,この平方根 $${x}$$ は根号を用いて $${\sqrt{ab}}$$ と表せる.すなわち,$${x = \sqrt{a} \times \sqrt{b}}$$ だったから,

$$
\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{ab}
$$

である.

第2式と第3式は第1式を応用すればわかる.$${b = m^2}$$ とするか $${1 \div b = 1 / b}$$ を用いるかでよい.

実際,第2式は $${b = m^2}$$, $${(m \geq 0)}$$ とすれば,第1式より

$$
\sqrt{m^2 a} = \sqrt{m^2} \sqrt{a} = m \sqrt{a}
$$

となる.

なお,ここで注目すべきなのは $${m \geq 0}$$ のとき $${\sqrt{m^2} = m}$$ という性質だろう.これは第1式をもちいれば

$$
\sqrt{m^2} = \sqrt{m} \times \sqrt{m}
$$

であり

$$
\begin{array}{}
\sqrt{m^2} &=& \sqrt{m} \times \sqrt{m}\\
&=& (\sqrt{m})^2\\
&=& m
\end{array}
$$

と確かめられる.

では,$${m < 0}$$ のときはどうなるだろうか.第1式は $${m \geq 0}$$ でないからもちいることができない.そこで $${n = -m}$$ とおけば $${n > 0}$$ であって第1式をもちいることができ,$${m^2 = n^2}$$ は成り立つから

$$
\sqrt{m^2} = \sqrt{n^2}
$$

となって,第2式で確認した $${m \geq 0}$$ のとき $${\sqrt{m^2} = m}$$ という性質を $${n}$$ について用いて

$$
\begin{array}{}
\sqrt{m^2} &=& \sqrt{n^2}\\
&=&n\\
&=& -m
\end{array}
$$

となる.したがって,$${m < 0}$$ のとき $${\sqrt{m^2} = -m}$$ となる.

$${\sqrt{m^2}}$$ についてまとめれば

$$
\begin{cases}
m & (m \geq 0)\\
-m & (m < 0)
\end{cases}
$$

となる.ここで,これは絶対値の定義と全く同じだから

$$
\sqrt{m^2} = |m|
$$

であることがわかる.

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