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星降る夜、天と地に春を願う/2021/3/11


私の日記などはいいので、こちらを読んでください。



今まで私は羽生結弦の生き様、精神性に対する信仰をさんざん語ってきた。これからもきっと語っていくだろう。しかし、彼のパフォーマンスについて言葉にしたことは、振り返れば数えるほどしかなかったかもしれない。
そこで、今日の日記では、「今見たい」羽生結弦の演技を振り返ろうと思う。


🌿「天と地のレクイエム」

「レクイエム」を謳ってはいるものの、これは、生きている人間の、"生かされてしまった"人間の歌だと思う。生々しい痛み、悲しみ、怒り、悩み、迷い、そして苦しみ。先が見えない闇の中でもがき続ける人間の姿。

そんな演技が、シーズン最終戦の世界選手権では大きく変化していた。そこには、光があった。
全てを受け入れる祈りの光が。


今シーズン(2020-21シーズン)のFS「天と地と」が発表された際、このプログラムを思い出したスケートファンも多いのではなかろうか。今シーズン、この年に、「天と地と」を選んだのには何か考えがあったのだろうか。あったんだろうな。

「天と地のレクイエム」は宮本賢二さんの振り付け。宮本先生の振り付けには必然性があるなあ、と思う。またいつかタッグを組んでほしいな。

全体から部分へと目を向けると、羽生選手はスピンがほんと~~~に上手いな~~~と改めて思う。スピンでこれだけのことを語れるなんて。


💫「Notte Stellata」

星降る夜。灯りを失った街。初めて知った空の輝き。一瞬の安息。光の海の中、しばし羽を休める白鳥。そんなイメージ。

「天と地のレクイエム」とは打って変わって人間味とおさらばしていらっしゃる。あまりに幻想的、これは夢か現実なのか。人間味を自由自在に操れるスケーター、それが羽生結弦。

このプログラムは技巧派というか、技術で表現するプログラムだと思う。試合ではなかなかじっくり見ることのできないスケーティングの美しさを味わうことができる。ビールマンスピン(足を後ろに高く持ち上げるスピン)まで入っているし。4回転ばんばん跳びまくるシニア男子がビールマンを回せるのは凄いことなんです。

この曲を歌唱しているIl Voroは昨年日本のアイスショーに出演する予定だったのに、中止になってしまった。なんとも残念……。


🌸「春よ、来い」

有名なあの曲です。

「天と地のレクイエム」から3年の時が経ち、同じテーマの再解釈にも思えるし、もっともっとパーソナルな人生を表している気もする。かと思えば、昨年のメダリストオンアイスでは2020年現在の世界に向けて滑っていらした。「春よ、来い」という主題の包容力よ。ユーミンは偉大である。

見所はハイドロブレーディング(身体を伏せて氷すれすれに滑るやつ)で氷にキッスするところです。この世界選手権のときは、このシーンに合わせて照明が一面の桜模様に変わっていた。映像に映っていないのが惜しい。ぶわっーと満開に咲いた桜、本当に美しかったんです。

以下は戯言。いやここまでも戯言だったけど。

羽生結弦にとって、"春"というのは「願っても願っても来ないもの」「どこまでも追いかけるもの」なのかな、と、当初は思っていた。でも、今見ると、「きっといつかやって来る」という祈りの滑りでもあるのかな、と思う。

やはり、言葉って難しい。もともと言語化できないものを表現しているのに、言葉にしてしまうのはナンセンスではないかと思ってしまう。試合の演技ならまだしも、エキシビションは尚更。

語りすぎてしまうよりも言葉足らずな方がいいとも思ってしまうな。これは何事においても。

でも、冒頭に載せた羽生選手のお言葉。あれを読んで、言葉の力を心の底から感じたから。

だから、何かしらいいことがあるんじゃないかと思って言葉にしてみました。

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