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なぜデザイン思考がDX戦略に繋がるのか、リフレーミングがそれなのか

諸般の事情で10月のニュースネタを探していたところ、DX白書2021が面白そうだったので無理やりデザインネタにつなげた話です。

「DX白書2021」にみる新しい価値を提供の手法

10/11にIPAから「DX白書2021」刊行されました。主に日本とアメリカを比較調査して、DX戦略や人材・技術の取り組みや動向を調査した内容になっています。
一見デザインあまり関係ないのですが、デザイン思考の活用具合についての調査があったので、エグゼクティブサマリーと第4部だけ読んでみました。

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「DX戦略に関わる開発手法の活用状況」の調査によると、日本企業の71.8%がデザイン思考を「知らない」あるいは「活用していない」という数字になっています。事業開発やらで良く聞くので、その割には思ってたより低いな、という印象です。

またこの白書では、デザイン思考×アジャイル開発×DevOpsの3つをセットで活用することが、DX戦略において顧客に新しい価値提供をするために有効な手法だ、と言っています。

- 素早くニーズを具体化する手法としてデザイン思考
   - それを素早く開発するのがアジャイル開発
   - 素早くリリースするためのDevOps

アメリカのデータをみると、たしかに3つとも7〜8割の企業が活用しています。3つセット揃うと活用できる、といった読み取り方もできます。
逆に日本では3つとも同じくらいセットで低い活用度合いになっています。

有名なナゾナゾ「古いエレベーター問題」

DX戦略になぜデザイン思考が必要なのか。
クリティカルシンキングや心理学でも有名な「古いエレベーター問題」を材料にして紐解いて見たいと思います。

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「あなたは、とあるオフィスビルの所有者です。ビルのエレベーターは古くて遅く、待ち時間も長いので、テナントから苦情が沢山来ています。
この問題をどのように解決すれば良いでしょうか?」

素直に考えると、強力なモーターを取り付けて速度を上げる・エレベーターのアルゴリズムを改修して待ち時間を減らすなど、「エレベーターのスピードが遅い」ことを課題に設定するかと思いますが、このナゾナゾとしての答えは「エレベーターの横に鏡をとりつける」になります。

人間は思わず見入るものがあると時間を忘れがちになるので、鏡をとりつけることでそっちに意識を集中させて、待ち時間を短く感じさせよう、という解決策です。
実際このエピソードとしては、テナントからのクレームは減ったそうです。(ほんとかな。積ん読減ったら下記の本を読んで確かめます)

https://www.amazon.co.jp/dp/B07FT9Z2HZ

「枠組み」自体を問い直す考え方ーリフレーミング

前述のナゾナゾでは、待ち時間を短縮させようとすると「エレベーターのスピードが遅い」ことが課題になるところを、課題の持ち方を「待ち時間があると人はイライラすること」に当てはめ直すことで、新しい解を導き出しています。このように提供する価値や課題の持ち方をかえてみる考え方を、デザイン思考の中では「リフレーミング」と呼んでいます。そもそも解決すべきはにその問題なのか?という視点で「問題の枠組み・フレーミング」を問い直すことです。

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問題状況をある視点から観察し、その状況と結びついた動作原理を適用する結果として、ニーズのある価値を生み出すことができます。
「古いエレベーターで速度が遅い」視点なら「速度UPで待ち時間が短縮する」ことが価値で、「待つ人がイライラする」視点なら「待ち時間を短く感じさせる」ことが価値になります。

このように「なにを問題とするかで、なにを価値とする」かも変わってきますが、実際のビジネス開発の現場では問題状況も動作原理も価値もどれも、ぼんやり曖昧なことがほとんどだと思います。
そのため「この価値を得られる問題状況と動作原理の組み合わせはどんなものがあるか?」と沢山の組み合わせが発散によって生み出されます。沢山の組み合わせを素早く具体化するのがデザイン思考、それをまた素早くデリバリーするためにアジャイル開発とDevOpsが手法として最適であり、DX戦略において顧客に新しい価値提供をするために有効な手法だ、とさっきのDX白書2021の内容と繋がっていくわけです。