Review-#028-C 『ペルソナ5スクランブル ザ・ファントムストライカーズ』Part 3
『P5S』雑談レビューの続きといきましょう。このページでは戦闘パートについてご紹介。ペルソナテイストのアクションRPGとは一体なんぞや?
本作には体験版が存在するので、気になった方は試しに触ってみるのもいいかもしれません。…どれだけ参考になるかは分からないけど。
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目次
・Part 1 (作品情報, ストーリー)
・Part 2 (日常パートとか)
・Part 3 (戦闘パートとか) ← いまここ
・Part 4 (総括とあとがき)
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戦闘パート
アクション要素は『ペルソナ』シリーズの新機軸となり得るか
先に述べたように、『P5S』はコーエーテクモゲームスが開発協力している。メガテンワールドのアクションRPGは先に『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズが存在しているけれど、全くの別モノ。「ペルソナ無双」なんて言われていたように、群がるシャドウに怪盗団が一騎当千の戦いを繰り広げるのが本作の特徴だ。
では基本ザックザックと物理攻撃で草を刈ってるだけで、ペルソナの出番はあんまり無いのか…と訊かれたら、寧ろちゃんとペルソナを活躍させることで勝機が見えるバトルシステムになっている、と返しておこう。
プレイアブルキャラクターは多いわけではないが、その分しっかりとキャラ毎の性能の差別化は図られている。通常攻撃にしても押しまくってコンボを決めるものから、長押し攻撃と組み合わせてダメージを与えるものまで。
フィールド上で操作キャラの切り替えができるので、ジョーカー以外の怪盗団メンバーを自分の手で動かせるのが楽しい。敵を倒し続けていると「マスターアーツ」と呼ばれる固有アクションを習得し、幅がさらに広がっていく。
Rボタンを長押しすると、所持ペルソナを呼び出す。押したまま使用する魔法を選択すると、SPあるいはHPを消費して発動。一騎当千ということもあって攻撃範囲が決まっており、「マハ」系の魔法は通常のそれよりも範囲を広くすることで差別化されている。
通常攻撃では弱点を突けないので、ペルソナあるいは銃撃を積極的に活用することが攻略のカギ。ペルソナを呼び出している間は時間が止まるので、どこに何の魔法を当てるかじっくりと考えることができる。アクション慣れしていない人も安心。
あと、『ペルソナ5』だと使いどころが難しかった銃も戦闘後に全弾回復するようになった(ここは『P5R』の仕様に近い)ので、銃撃弱点の相手にバンバン撃ち込める。
物陰から奇襲を仕掛けて、有利な状態でバトルを始める「スニークアタック」や、バトル中にキャラを切り替えてショウタイムゲージ(後述)の伸びを上昇させる「バトンタッチ」、強敵のシールドを1枚破った隙に攻撃を仕掛けられる「1MORE」など、『ペルソナ5』にあった要素をアレンジしつつ積極的に取り入れている。
フィールド中に設置されているオブジェクトを利用してダメージを与える「ファントムムーヴ」をうまく決めて、敵がダウンすれば「総攻撃」のチャンス。周囲の敵を巻き込んでボコスカと一掃しよう。スニークアタックを成功させれば初手から総攻撃を仕掛けることができ、弱い相手ならば瞬殺も可能である。あ、瞬殺と言っても竜司のスキルじゃないからご安心を。
☝ ここだけ切り取るとキングダムハーツっぽさもあるよね。
☝ 中ボス以上の敵に総攻撃を仕掛けた時の〆の演出。欲を言うと止めを刺した時に操作キャラの1枚絵で締めくくってくれるとなお良かった。
そして本作の切り札「ショウタイム」。『P5R』にもあったが、あれとは別。ショウタイムゲージがMAXになると発動できるこの技は、ペルソナの属性が付いた広範囲への大ダメージを与えられる。特に強敵相手には貴重なダメージリソースになるので、道中でゲージを稼ぐなりアイテムを使用するなりして戦いに臨みたい。倒すのに苦労しないザコ戦で誤爆することも割とよくあるんだけど。
☝ 『ペルソナ5』では壺の素材とか
散々な言われようだったアルセーヌさんも大活躍。
特定のペルソナでショウタイムを決めると演出に変化が見られることも。
さて、『P5S』は『ペルソナ5』よりも簡単そうじゃん、とプレイ動画などを見て思った人もいるかもしれない。体験版を一通り触って「ファントムムーヴがあるし、戦闘中にダメージを喰らわなければ徐々にHPも回復するし、こりゃあ物理攻撃主体のスタイルでいけそうだな」と思ったかもしれない。
実際私もちょっと舐めてた。これならHARDでも意外と最後までいけそうだなと。それでもやっぱりゲームは上手いとは思っていないのでNORMALでスタートしたわけだが、最初のダンジョンの時点で思い知らされる。
「何、これ。体験版とプレイ感覚全然違うじゃん!」
そう。実は本作、油断しているとあっという間にゲームオーバーになるのである。何でか、というとそれは一騎当千だというところに一因がある。敵がワラワラと群がっているということは、そいつらから集中砲火を浴びる可能性も十分にあるということ。準備ができていないまま攻撃を喰らったが最期、そのまま戦闘不能なんてことも珍しくない。本作は画面の情報量が多く、慣れないうちは状況の確認もままならないから猶更。
本作は操作キャラの切り替えが可能なので『ペルソナ5』のようにジョーカーが死んだらゲームオーバー、とはならない。パーティーメンバーが全滅しないよう立ち回りを意識することになるが、それでもボス相手にイゴった方も少なくないのでは。『P5S』にイゴールさん、出て来ないんだけどね。ていうかストーリー冒頭であの子が出てくる時点で相当の『ペルソナ5』ネタバレだと思うんですけど…
話を元に戻そう。各地に鎮座する異世界の王、こいつらは非常に厄介な存在である。
まず、めっちゃ固いのだ。多重シールド持ちで、ちょっと弱点属性のスキルをぶつけただけではなかなか怯んでくれない。やっとこ全部割って総攻撃だー、うおー、となってもチョビっとしかHPゲージが減ってくれない。後でPart 1に貼ったプロモーション映像の1:57辺りを観れば分かると思うが、総攻撃を以てしても全体の数%ぐらいしか削れていないのだ。
☝ gdgdボス戦の例。
フィールド上のオブジェクトをうまく使えば有利に戦えるけれど、
固いことには変わりないのでそれなりの覚悟をもって挑もう。
で、その王の攻撃が非常に痛い。まともに喰らえば戦闘不能は必至、当たらないようにひたすら回避するか、攻撃の予兆が見えたら弱点攻撃でシールドを1枚分割って攻撃をキャンセルさせる必要がある。
これらを受けて必然的に取ることになる戦術は、なるほどペルソナらしいと言える。すなわち、補助魔法でステータス底上げ&弱体化からの弱点攻撃。しっかりレベルを上げつつ最適なパーティを編成すれば、王の攻略もそこまで難しくはないだろう。誰をパーティに入れればよいかは、ストーリーにヒントがある。各地の王との絡みが多いキャラがそれ。
そうなると、気掛かりなのがSP。弱点攻撃・補助魔法を多用すれば、すぐに底を尽きてしまう。武見先生はいないので、『ペルソナ5』のように気功パッチを貼って戦うこともできない。
できるだけSPを温存したいならば、攻撃のコンボを意識することが求められる。通常攻撃からの特殊攻撃で、SPを使用せずに所持ペルソナの魔法を発動することができるのだ。コンボによっては攻撃だけでなく、回復や補助魔法も使える。基本はコンボからの派生で弱点を突くなり回復するなりして、強力な攻撃が来そうならSPを消費して直接魔法をぶっぱなす、と使い分けると良いだろう。
でも派生魔法だとシールドを割るのに苦労するので、SP魔法をガンガン当てた方が確実だし手っ取り早いのも事実。そのため、本作でもSP回復アイテムは非常に重要。料理や通販を利用してSP回復系のアイテムを沢山用意しておくのはマストだと言えよう。
とまぁ、ペルソナらしいといえばらしいけれど、それがアクションとしての面白さに繋がっているのかと訊かれると微妙なところ。折角グルグルと動き回れるようになっているんだから、フィールドを活かしたアクションをもっと体験できれば良いのになと思った。
上に書いたこと以外で個人的に気になったのが、レベル上げの仕様。パーティにしか経験値が入らないから、適宜組み替えないとレベル差が付いちゃうんだよね。
あとはスニークアタックで、フィールド上の敵に対してどこからなら奇襲を仕掛けられるのかが分かりにくい。オブジェクトの上に乗り移ってそこから奇襲しようと思ったら、カメラが明後日の方向を向いて「あーっ、急いで敵を視界に入れないと」とスティックを倒している間に敵にバレて、不利な状況でバトルが始まっちゃうってこともザラにあったり。
☝ ここからアイスクリスタルの上に乗っかって
上から来るぞ! 気をつけろぉ! と普通はなるところがこの後、
カメラ調整に手間取った挙句、横から来られてDANGERになるのであった。
ただそうした不満を差し引いても『ペルソナ』シリーズでアクションバトルを繰り広げる、というのはとても新鮮。各キャラの特性を把握して戦えば、スタイリッシュに敵を撃破できる。うまーく繋がった時の気持ち良さは格別だ。
言いそびれていたけど、BGMも凄くカッコいい。本作は大明神こと目黒正司氏ではなく喜多條敦志氏が手掛けているが、ハイカラなサウンドがゲームにマッチしていて非常に盛り上がる。王城進撃時の『Daredevil』が特にお気に入り。ちなみにDLCがあると、通常戦闘時に過去作のBGMを流すことも可能。コンフィグで何を流すかを細かく指定できるので、その日の気分や雰囲気に合わせて楽しめる。
本作を受けて「これからはペルソナもアクションの時代だ!」となるかと言えばならないし、寧ろ『ペルソナ5』で高い完成度に仕上がったコマンドRPGをより突き詰めてほしいと思うのだが、外伝やスピンオフなどの形でアクションRPGを採用するというのであれば、それはそれで歓迎したい。
粗削りではあるけれど、良く言えば今後ブラッシュアップの余地があるということでもあるから。アクションと一口に言っても形は様々、どういったバトルシステムに落とし込むのがペルソナらしいか、という点はまだまだ探れるんじゃないかな。
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あと、ざっとではあるがベルベットルームでのペルソナ育成についても触れておく。本作はギロチンではなく鉄の処女(アイアンメイデン)。どっちにしても背筋がゾクッとなるわね…悪趣味さは大分減ったけど(そうか?)。
こちらも『ペルソナ5』に比べるとシンプルになったが、その分何をやればいいのかが分かりやすくなっているので人それぞれだろう。できることはペルソナの「合体」と「強化」と「閲覧」の3つである。
合体は仕様が変更されており、合体させるペルソナが一定のレベルに上がっていないと、その組み合わせでペルソナを生成することができなくなっている。そのためペルソナを強化していくことになるが、『P5S』ではフィールド上で時々現れる(既に所持している)ペルソナの仮面を入手したり、所持ペルソナを消滅することで獲得できる「ペルソナポイント(PP)」を使ってレベルアップさせる。
本作では強化の回数制限は存在せず、ちょくちょくベルベットルームに顔を出して強化を行っていけば大体のペルソナは全書に登録できる。ただ、リクエストを達成することで生成可能なものに関しては、順当にストーリーを進めているだけではなかなか合体までこぎつけないので、お金を使ってレベルの底上げをする必要が出てくるだろう。
そして、合体させたペルソナにはパラメータボーナスが付くことがある。合体回数が多ければ多いほどボーナスが発生しやすくなるため、これを利用して「力の蓄積」を行うと、低レベルで高ステータスのペルソナを作成することができる。多大なお金と時間が必要だが、一度作ってしまえばそのペルソナから全ステ99の強力なペルソナをお手軽に生成できるのだ。
☝ はじめに、合体ループを繰り返して
全ステータス99の低レベルペルソナを作る。
例として、ジャックランタン→バイコーン→シルキー→(サキュバス)→
カハク→ラミア→ジャックフロスト→ジャックランタン→…
という具合に生成し続けると、小一時間&100万足らずで出来上がり。
合体事故が起きても、元のループに戻るようにそのまま合体を繰り返そう。
☝ 力の蓄積を施したペルソナを元に高レベルのペルソナを生成すれば、
全ステ99のヨシツネも夢じゃない。これを登録しておけば後々役に立つ。
気になる点というと、収録されているペルソナが少なめなところか。いやまぁ、アクションRPGなのにギリメカラ(物理反射)とか出ても困るんだけどさ。というか、『P5S』はDLC展開が少ないね。これからプレイアブルキャラクターとかが増えていくのかな、と思いきや今のところ戦闘BGMのみで、しかもこれは初回生産限定版に同梱しているものと同じなので(私としては)実質無いのと一緒。
ちょっと意外。いやだって、アトラスとコーエーとのコラボ作品だよ?? この2社がタッグ組んでおきながらDLCを全く用意してないとか普通有り得(ry
一味違った怪盗団の夏休みは、皆さんにはどのように映ったでしょうか。Part 4にて総括に入ります。
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目次
・Part 1 (作品情報, ストーリー)
・Part 2 (日常パートとか)
・Part 3 (戦闘パートとか) ← いまここ
・Part 4 (総括とあとがき)
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