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5. 不妊治療と現実逃避

不妊治療ができない、子供を持てない、生きていても意味がない、と思いつめた結果、私は現実逃避に突き進みました。

※引き続きとてもネガティブな内容ですのでご注意ください。

現実はなかなか逃してくれない

日中仕事をしている間だけは、不妊治療のことを忘れることができた。しかし、それ以外の全ての時間を、不妊に思い悩むこと、幸せな人を羨むことに費やした。

このままでは本当に心の病気になると恐れ、できるだけ他のことを考えようとした。

おいしいものを食べに行った。何を食べても味がしない。

いつも通りジムで汗を流し続けた。全くスッキリしない。

好きな本を読み、映画を見た。週末の弾丸旅行にも行った。すべての時間に不妊治療に関する現実がまとわりつき、常に脳裏にチラつく。

それまで魅力的で色鮮やかに見えていたものが、廃れたモノクロームの世界に変わっていた。

ただ一つ、同僚とお酒を飲んでいる時だけは、不妊治療のことを忘れられた。不妊治療とは全く関係のないくだらない話や、そんなに興味もない社内のゴシップで盛り上がった。もともとお酒が好きな私は、あらゆる飲み会に参加し、どんどんのめりこんでいった。

お酒に溺れる方がまし

夜遅くまで、時には朝まで飲むことが増えた。現実逃避にお酒に走っていった。誘われればすべてOKし、自分からも頻繁に飲み会を設定した。

既に夫が寝ている時間に帰宅し、静かにベッドに入るか、気づくと明け方ソファで目覚めるような毎日だった。当然記憶をなくすことも少なくなかった。朝は夫が仕事に出て行ってから目覚めた。お酒が残っているのを感じながら出社した。

どんどんどんどん堕ちていった。

もう何もかもがどうでもよかった。

この歳で記憶を無くすほど飲むという行為は、本当に恥ずかしいことでその頃のことを思い出すだけでも嫌な気分になる。しかし、人の幸せを羨んで過ごす自分よりもお酒に溺れる自分の方が遥かにましだと思っていた。お酒に溺れる自分はどうしようもなくダメな人間だが、生きている価値くらいはある。他人の幸福を喜べず、それどころか妬み羨む自分は、生きている価値もない。そう感じていた。

ついに一線を越える

ある日ついに二日酔いで会社を休んでしまった。飲んでいた時の記憶もないし、どうやって帰ってきたのかもわからない。ベッドの中から上司に電話した。

とにかく頭が痛い、気持ち悪い。そして、感じたことのない自己嫌悪。罪悪感。絶望感。

それでも飲み続けた。やめられなかった。もしかしたら、いやおそらくアルコール依存症だったと思う。

また別の日には、酔った帰り道、近所のガードレールに座ったまま寝てしまい、見知らぬ人に起こされた。

危ないですよ、風邪ひきますよ。家、近くですか?帰れますか?

しばらく自分の置かれた状況が理解できなかったが、飲んだ後なんとかタクシーに乗った断片的な記憶が戻ってきた。恥ずかしさと自己嫌悪で消えてしまいたくなった。

いよいよ本当に生きる価値がない人間になったなと改めて思った。

続く

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