母親のこと

お母さんのことが最近好きになってきた話


自分に告白してきた9人の人間のうち、6人が片親家庭だった。そのうち3人が父子家庭、3人が母子家庭。
婚姻していた相手も父子家庭で、母親は脳血管疾患による重度の障害があるため施設入所していた。

デートでは皆口を揃えて言うのだった。「お母さんをあまりよく知らない」
そうか。ごめん、わたしも自分の母さんをよく知らんわ。てかあなたたち絶対わたしに母親の役割求めてくるんだろーな。30歳にもなってお母さんとか言うな!早くどこかの女と子供作って奥さんをお母さんに仕立てあげろ!

お母さんってそんなにいいものですか。


自分の母はとてもメンタルの弱い人だった。浮気三昧の果てに首を吊った叔父のことを全く覚えていないと言った。見ているはずなのに忘れた。両親共にギャンブル依存症でネグレクト気味、祖父は魚釣りに行くと言って女の家に入り浸りだったので、傷心の祖母に寄り添って暮らしていたという。このことは大人になってから父が私に教えてくれた。

人間に忘却と、それに伴う過去の美化がなかったら、とても生に耐えることができない。

母は所謂「奇人変人」の部類に入れてもおかしくない変わり者なのに、なぜだか顔が抜群に綺麗だった。幅広の二重に天然の長いまつ毛、小さい顎、きれいに切り揃えられた黒髪。すこし陰のある、アンニュイな顔だった。お父さんと結婚する前に何人か男の人と交際したがしっくりこなくて、しだいに美醜というものが男性の態度を左右すると気づいた母。
日焼け止めを塗らずに屋外でこんがり日焼けしたり、サングラスをかけたり変装したり、DQNなファッションをしたり、自分らしさを全部消したらしい(ほんとに頭おかしい。母親ゆずりでわたしも頭おかしい)


自分が中学生のときには既に母はれっきとした精神障害者になっていた。
悪いことをするとヒス起こして娘を殴ることもあったし、そうかと思えば自閉的になったり感情鈍麻になってひとこともしゃべらない日もある。思考にまとまりがなく日常生活における簡単な判断もできない。
あれ、これってもしかして?

父と一緒に映画を観ていたときに、わたしは「お母さんは病気だよね。トウシツ?っていうの、2ちゃんねるみてたらそう思った」
父親は少しうなづいて、お母さんは2年前からメンクリで薬を調節してもらっている、と教えてくれた。母は自分でもいまいち病識をもてず、どうにもできない「認知のゆがみ」と闘っていたらしい。母に見えている世界と現実世界はどうも違うみたいで、いちいち否定しちゃいけないということと、娘には悟られたくないという母の意向を汲んで知らないふりをしてくれと言われた。


とても面白いんだけど、お母さんには超能力があった(?)。


・高校の時に授業をサボってマックに行っていたときに「いま本当に学校にいますか?」とメールが来たことがあった

・飛行機に乗る前に航空券を失くしてパニクっていたら「いやな予感がしたんだけど、アンタ大丈夫?」と電話が来た

・札幌市S区にある友達のアパートを見て、気味が悪いと母が口走った。半年後、友達の隣人女性が山中から遺体で見つかった


これ本当にほんとなんです!
こんな母が怖くて、ずっとずっと避けてましたすいません。

大人になってから初めて友人に自分の家族のことを告白したら 最高だねって言ってくれた。最高だよ。今はそう思ってる。
病気になっても娘のためを思ってくれて何不自由なく育ててくれた親、まじで強いです。


治る病気ではないんだけど、今ではすっかり寛解してフツーに暮らしてます
母の超能力というか、猜疑心のようなものも無くなってしまって。ある意味つまらないです。病気してた時マジで天然メンタリストすぎた。

妹もわたしも若干メンタルが脆くて、現在妹のほうは鬱病で休職中だし、わたしも色々バランスを崩しすぎて一時期不眠症になってしまった。お風呂すら入れなくて、友達や元旦那さんが交代で服を着たまま湯船に沈めて髪を乾かしたり爪を切ったりしてくれた。この世の地獄すぎた。この弱さをかかえて子どもを産むのが怖い。お母さんになんてなれっこない。世の中のお母さん半端ないわ


紅葉をお母さんと見た

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