走馬灯を読む
粗く、ざらついた、心臓が動くたびに、吐血するのである。
「うん、言いたいことはわかったよ」
そんな一言と共に絶望を味わう。
だってさ、だって、私たちきっと同じようにこの世界を読んでいると思っていたよ。同じように読んでいるからこそ、同じような走馬灯すら目にするのだろうと思っていたんだ。
“わかってもらえなかったこと”というのが、私の人生にはあまりにも多くて、"わからせなきゃ"という汚い感情が自分を支配し始める。
綺麗な思い出だけを選んで、編集して、そして保存先を、走馬灯にして。
そして、一度、眼の奥で見たら全てを忘れられたらいいのに。
同じ走馬灯を見せたい人を呼んで、その人にも綺麗な最後の思い出を鑑賞させてあげることができたらいいのに。
君も、そこの君も、そこから見ている君も、私のことをよく、わかっているふりをしていたよね。本当はそこから、歪んでいたのに、最後には、"わからない"ことに顔を顰めながら、私の所為である理由を一つずつ丁寧に並べるんだ。
最初から、わかりあえなかったんだねと誰も口にする勇気がないままに、私だけが死人のように冷たくなっていく。
恋愛にはセックスが付きもののように、私には"わかってもらう"ことが常に課題だったのだろう。そして、擬似理解を経て自分の心に快楽を流し込んでいたのだろう。
だから、わかってもらう為には、文字を読める人が必要で、話を聞ける人が必要で、そして、ちゃんとわかっているかどうかを問うために、質問に答えられる人が必要だった。
あゝほら、また誰かの声が届いて、
「つらかったね」
そう言って、わかったふりをしながら私の肩を抱くんだ。私は重たい頭を正面に戻しながら、果てしない水平線について考え始める。
「なんでさ、あの時、教えてくれたの?」
私の頭の中の水平線から真っ赤な夕日が顔を出す。10秒も経たないうちに、燃え散った赤色が、ポツポツと私の皮膚を焦がす。
そんなことも"わからない"君が憎くて堪らないんだ、どうしよう。そう言って肩を揺さぶったら次に出てくる言葉はきっと、
「…わかった」
その一言なんだ。
文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.