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memento mori

 ぼくが割と今までコンスタントに聴き続けているバンドに「BUCK-TICK」がある。1987年デビューだから、今年で37年。調べたらドラクエ2やFF1と同い年だった。

 初めての出会いは1997年ごろ。名前は知っていたけど曲は聞いたことがなく、周囲にもCDを持っている人がいなかった。とにかくいろんなバンドの曲を片っ端から聞いてみていた頃で、初めて聴いたのはたぶん「殺シノ調ベ This is NOT Greatest Hits」という再録ベスト盤(再録なんだけどこれを聴いた時点で原曲を知らないから、のちに原曲を聴いて違いにびっくりした)
 その後「darker than darkness -style93-」というアルバムを買ったと思う。初っ端から歪んだ音の暗い曲、ジャケットからして黒い。詞もドロドロしている。なんだこれ...というのが第一印象。

 他のアルバムはどんな感じなんだろうと思い「TABOO」「Six/Nine」「COSMOS」など旧譜を次々と入手、聴いてみるとそれぞれ毛色が違う。同じバンドって感じがしない。そのくらい音作りというかアルバムごとの世界観やら雰囲気がそれぞれで確立している。
 特に「殺シノ調ベ」に収録されてた曲の変化(聴いた順番が逆なので正確には元ネタ)に驚いた。

 ちょうどその頃「ヒロイン」というシングルが発売、当時流行っていたドラムンベースが取り入れられた、それまでとは違った感じの曲で「え、ドラムが打ち込みだとドラムの人の立場は...!」と気になった。
 歌詞の方も曲名の「ヒロイン」に対して「何処までも飛べる」「純白のヒロイン」といった、まるで「◯ロイン」を想起させるような過激な歌詞。続くアルバム「Sexy Stream Liner」も音の無機質な感じと歌詞のある種グロいくらいの有機的な感じが不思議な面白いものだった。

 その後全国ツアーが始まるということで早速チケットを買いライブを見に行った。それがたぶん人生で2回目のライブ体験(最初は黒夢だった。ちなみに3回目は確かガーゴイル。)

 黒夢のライブは当時パンク路線に進んでいたこともあり、勢い!勢い!って感じだったけど(それはそれで楽しかった)、BUCK-TICKのライブは余裕があるというか「魅せる」って感じでまた違った印象を受けた。なんといってもボーカルの櫻井敦司がかっこいい(うちの母親はジョニー・デップに似てると言ってたが、確かに似てる)。

 バンドやライブで再現できるような曲を作る、っていうとこにそこまで拘ってなさそうな曲の作りなんかも面白いと思った。もちろん考えてはいるんだろうけど、むしろ「曲が求めるその曲らしさ」を優先して作ってる感じがする。曲が求める形を自由に突き詰めているからこそ、曲のバラエティーがすごいし何十年もアイディアは尽きずに未だ活動し続けているんだろうと思う。メインコンポーザー今井寿の脳内はどうなっているのか。

 詞に関しては、内面をさらけ出すような櫻井敦司の詞がすごくしっくりきた。悩みや葛藤、苦しみなどがそのまま描かれている感じがした。それが思春期真っ只中の田舎の坊主少年にはとても響いた。いや、当時は長髪だったな。わかりやすい応援ソングはほぼないんだけど、詞の世界をなぞっているとなんか元気が出たり。
 初期の歌詞は割とキラキラしたラブソングっぽいものが多いものの、それでもどこか退廃的であったり過剰に煌びやかだったり。そんな、自分の世界と地続きなようでどこか夢物語のような雰囲気に、田んぼに囲まれた田舎の学校でのんびり暮らしていた坊主の少年はあこがれていたんだろうと思う。

 その後も現在までコンスタントにシングル、アルバムは聴いていて、あまり好みでない時期もあったりはしたものの、現在まで聴き続けてきた。

 昨年末、櫻井敦司が亡くなったとの報道がありその日は仕事もあまり手につかなかった。最新アルバムはまだ聴いていなかったが評判は聞いていて気になっており、またいずれライブへも行きたいなとちょっと思っていた矢先だった。
 当然いずれ起こりうることではある、というのはわかっているはずなんだけれど、なぜかその可能性というのを普段は考えない。永遠に存在するものはない、というのはわかっているはずなんだけれど、日々の生活の中ですぐに忘れてしまって、こういうことがあるとそのことを突然思い出させられる。

 今井寿によると、今後も最後の一人になるまでBUCK-TICKの活動は続けるしアルバムも発表するという。どういった形になるのか、どういう曲たちが生まれてくるのか。今までも変化をし続けてきたBUCK-TICKのことだし、きっと素敵な作品をこれからも生み出してくれるんだと思う。でもそれも永遠じゃない。
 音楽に限らず今自分が触れているさまざまな人、モノ、機会、あらゆることに対し、一つ一つ、大切に、真剣に向き合っていきたい。

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