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「反差別ダイベストメント運動から学ぶ」②広告引き剥がし運動とダイベストメント

 8月21日開催のオンラインイベント「反差別ダイベストメント運動から学ぶ」の報告の後半です。ここでは英・米での広告引き剥がしの動きを紹介し、日本では何ができるかについて考えます。

③Sleeping Giants 広告引き剥がし

 昨今、極右メディアに掲載されている広告を引き剥がしたり、プラットフォームから差別したものを引き下ろすためのネット上の活動が活発化している。今回は二つの事例を紹介していく。

 まずは、アメリカで始まったオンラインキャンペーン:「スリーピング・ジャイアンツ」だ。2016年、トランプ当選後、極右メディアBreitbart Newsの代表、Steve Bannon氏がトランプ政権の要職に就くという発表に危機感を感じ、ネットに詳しい数人が始めたものだ。その主な狙いとしては、オンライン上でBreitbart Newsから広告を引き剥がし、その収入源を失わせることで差別煽動をできない様にすることだった。

どのようにやるのか?

 スリーピング・ジャイアンツの特徴は多くのネットユーザーを巻き込むきキャンペーンであるという点だ。スリーピングジャイアンツの戦略はシンプルだった。それはざっといって、以下の手順をTwitterユーザーに踏んでもらい、twitterユーザー自身に問題化してもらうことだった。

手順:
1. Breitbart Newsのサイトに行き、掲載されている広告のスクショをとる。2. スクショをその広告を掲載してる企業に@ツイートし、問題化。
3. Sleeping Giants が経過を追えるように Sleeping Giantsの公式アカにも@ツイートする。

 具体的な例としては、以下がある。(↓Breitbart に広告が掲載されていたスウェーデンの企業に対して働きかけるツイートの例)

 それに対して、企業は「フィードバックありがとうございます。すぐこのサイトを広告掲載先からブラックリスト化します」と答えた。

 ここで、では、なぜそもそもこのような企業が自社の広告をBreitbart Newsに掲載するのか、と疑問に思う方もいるかもしれない。それは、そもそも企業が自社の広告がBreitbart Newsに掲載されていることを知らないためだ。

 ネット上の広告掲載については、企業がそれぞれどこに広告を掲載するかを決めているのではなく、AmazonやGoogleがその仲介役となり、さまざまなサイトに企業の代わりに広告を掲載している。(これはProgrammatic advertisingと呼ばれる。)

 とはいえ、Googleなどの仲介役は顧客(広告掲載したい企業)の要望を受け、特定のサイト等をブラックリスト化するできる。それゆえ、各企業や個人は仲介役に申し立てることで、特定のサイトをブラックリストに追加し、自身の広告がそこに掲載されないようにすることができるのだ。

 オンライン広告のこのような特性を活かして、Sleeping Giantsは多くのユーザーにBreitbart Newsに広告が掲載されている企業に働きかけるように促した。このような簡単かつ効果的な反差別アクションの結果、Breitbart Newsがターゲットされてから一年半、Sleeping giantsの活動によって4000社以上がBreitbartを自社の広告掲載ブラックリストに追加した。

 それにより、Breitbart社の収入は90%減り、経営を広告モデルから一部サブスクリプションモデルに転換しなければならないことで読者が大幅に減った。その結果、Breibart Newsの影響力は大きく低下し、運動側が差別してビジネスを運営するというモデルに大きな打撃を与えたと言える。

④イギリスの#Stopfundinghateキャンペーン

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 今度はネット上の働きかけだけではなかなかびくともしない大手新聞社へ広告を掲載する企業に対するイギリスのキャンペーン、#Stopfundinghateを紹介する。

 このキャンペーンはイギリスEU離脱キャンペーン時におけるメディアの差別煽動に危機感を感じて、2016年8月に始まった。The Sun, Daily Mail やDaily Expressなど、普段から移民の排除やイスラムフォビアを煽っている新聞への広告掲載拒否、引き剥がしを求めるキャンペーンだ。(例えば、大手新聞Daily Mail は移住者 を”Illegal Swarm”と呼んだり、頻繁にイスラムフォビアを煽動したりしてきた。)

 まず、Sleeping giantsと同じく、#Stopfundinghateはヘイト新聞に広告を記載している企業に対して、SNS上でプレッシャーをかけるように呼びかけたりしている。例えば、LEGO社はDaily Mail紙と提携し、かつてはDaily Mail紙を買うとレゴのサンプルがもらえることもあったのだが、Daily Mail紙への広告掲載拒否を求めるStopfundinghateの運動に応じて、LEGO社は結果的にDaily Mail紙との提携を解消することになった。

 しかも、#StopfundinghateはSNSユーザーによる働きかけにとどまらず、労働組合と連携したり、株主総会にも働きかけたりしている。例えば、Stopfundinghateは2016年のCo-op社の年次株主総会に”Ethical Advertising”を採用すべきだという発議を出し、総会では株主の96%がこの発議に賛同した。Co-op社はこの決議採択の結果、今後は上記の新聞をはじめとした差別を煽るメディアには広告を掲載しないことを決めた。


日本ではどうすればいいか?

 では、日本ではどうだろうか?DHCやアパホテル、ヘイト本産業など、差別し金儲けするビジネスモデルが日本では「ヘイト産業」として定着している。海外と比べても日本でヘイトビジネスをやめさせることは難しいようにも見える。例えば、昨年、DHCの会長がネット上で深刻な差別発言を行い、批判されながらもそれを擁護したのにもかかわらず、DHCと関係を解消する日本企業はほとんどなかった。

 だが、つい先日、DHCとムーミンのコラボ計画が中止になったことが発表された。ここでは日本の代理店は適切な対応を取らなかったものの、フィンランドの本社に働きかけることで、本社の方から中止の判断が下された。

 今回のムーミンとDHCのコラボ中止の例のように、差別している企業やメディアに関しては、差別に対して敏感な海外の企業に働きかけることが重要だ。海外の企業の多くでは、例え表面上であれ、「反差別」の姿勢を取らなければビジネスを継続することができないからだ。

 代表が以下のツイートで書いているように、差別に敏感でDHCの商品を扱っている海外の小売店などにネット上働きかけるだけでも大きな効果がある。英語圏でDHCの差別を問題化し、それでさらにDHCと提携している海外の企業が提携関係を解消させることを期待できるからだ。


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 以上、2回に渡ってさまざまな反差別ダイベストメント・ボイコットの事例を見てきました。Moving Beyond Hateでは今回のようなイベントの他にも普段から学習会・勉強会や反差別キャンペーンなどを頻繁に行なっています。活動に興味を持ってくださった方はぜひご連絡ください。

fin.

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