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映画俳優「岸井ゆきの」

<フィルモグラフィー>
2009年にデビュー以来、舞台・映画・ドラマと幅広く活躍。
2017年11月に公開された、「おじいちゃん、死んじゃったって。」で映画初主演を果たす。
2022年12月に公開された「ケイコ 目を澄ませて」で
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得したことを皮切りに、高崎映画祭・毎日映画コンクール・キネマ旬報ベスト・テンで主演女優賞を次々と獲得。
ベルリン国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭で公開され、演技・作品ともに高い評価を得る。


ダメ男の沼にはまった女性を健気に演じる

・「愛がなんだ」

2019年4月19日公開/上映時間123分 
出演/岸井ゆきの・成田凌・深川麻衣・若葉竜也・江口のりこ
監督/今泉力哉 脚本/今泉力哉・澤井香織 原作/角田光代


<あらすじ>
友達の友達の結婚式二次会に参加した時、岸井ゆきの演じる「山田テルコ」は同じ境遇である成田凌演じる「田中マモル」に出会う。その時はそこまでハマっていなかったが、そのことをきっかけに会うようになり、みるみるマモちゃん沼にはまっていく。
恋人か恋人じゃないのか、微妙な空気のままストーリーが展開。
テルコを中心とした周りで起きる恋愛模様も少しいびつさをはらんでおり、葉子・中原・すみれさんと各キャラクター立ちの良さも見どころ。


個人としてもオールタイムベストに入るほど好きな映画で、とにかく岸井ゆきのさんのナレーションの声と感情の揺らぎ、持ち前の小動物的な顔からこぼれる喜怒哀楽の微細な表情は必見。
特筆すべき点は岸井ゆきのさんはじめ、全員が「こんな人世の中に絶対いる」という温度の低い演技とは思えない演技の巧みさ。
今泉監督の演出や脚本の妙による所もあるが、ここまで画面を通してリアルさが伝わってくる作品はなかなか無いように思う。
冒頭でこの子がどういう状況なのかが1発で分かるカメラワークは見事。
またアドリブ合戦もそこそこあるらしく、それを知った上で鑑賞すると、なおこの作品の面白さに気付ける。

左から、若葉竜也・成田凌・岸井ゆきの・深川麻衣・今泉力哉監督

今泉力哉監督とお話しする機会があった際、岸井ゆきのさんの頬にニキビがあり、それをそのまま消すことなく使用したいと提案したところ、本人も事務所も快諾してくれたのは嬉しかったと教えてくれたのを覚えている。

聴覚障害を持つボクサーを圧巻の演技で熱演

・「ケイコ 目を澄ませて」

2022年12月16日公開/上映時間99分
出演/岸井ゆきの・三浦友和・松浦慎一郎・佐藤緋美
監督/三宅唱 脚本/三宅唄・酒井雅秋 原案/小笠原恵子


<あらすじ>
生まれつき聴覚障害を持ち両耳が聞こえない岸井ゆきの演じる「ケイコ」。
プロボクサーとしてボクシングに打ち込む彼女だが、母親からの言葉をきっかけにボクシングを一度休みたいと会長宛に手紙を書く。
手紙を渡せずにいた折り、ボクシングジムの閉鎖を知り、ケイコの心がざわめきだす。


2022年~2023年にかけて日本の映画界を席巻した今作。
フィルムカメラで撮影された柔らかさと心地よい粗さが印象的で、音へのこだわりも全編を通して妥協が無い。
聴覚障害で手話と筆記をメインの言語としており、なおかつボクサー。さらには笑顔が苦手で、無愛想。二重三重の難しい役を岸井さんが見事に演じきっている。
今まで映像の中で見せてきた屈託のない笑顔もさることながら、微細な表情の揺れ動きや表現方法がこれでもかと詰め込まれているように見えた。そして新たなそこにアクションという分野が組み込まれて、あらたな岸井ゆきの像が出来上がっている。

左から、三宅唱監督・岸井ゆきの・三浦友和

さいごに

・2023年日本アカデミー賞主演女優賞受賞後のスピーチ

岸井ゆきのさんが日本アカデミー賞を受賞した際、
「劇場でやってるんです、まだ。ぜひ劇場で見ていただきたいなと思っています。」と言っていたことを覚えています。
この言葉でどれだけの映画館の方たちが勇気づけられたかわかりません。
少なくとも僕はその一人です。不覚にも泣いてしまいました。
今後もさらなる飛躍が期待される映画界の重要人物としてチェックしておいて間違いない、素敵な俳優さんだと思っています。

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