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いい奴は、危ない。マフィア映画「グットフェローズ」

公  開:1990年
監  督:マーティン・スコセッシ
上映時間:145分
ジャンル:マフィア/ドラマ

マリナーラソースの美味さは、イタリア人の誇りメ~

マフィア映画で有名な作品と言えば、やはり「ゴットファーザー」でしょうか。

より古い作品でいえば「暗黒街の顔役」もはずせないところでしょう。

いずれにしても、知られざるマフィアの存在を葛藤や美徳を含めて描いた作品となっていますが、マフィア映画を作っている監督として外せない人物がいます。

それこそが、「タクシードライバー」でお馴染みのマーティン・スコセッシ監督です。

生まれ育った環境もあり、ギャング映画の生々しさにかけては、やはり右に出るものはいない監督でもあります。

さて、そんなマーティン・スコセッシ監督による、やや長めの作品ながら、テンポの良さとキャラクターの面白さによって、あっという間に見ることができてしまう作品「グットフェローズ」の見どころについて語ってみたいと思います。

これが実話をベースにした作品であり、物語の主人公もまた、公開当時まだ存命だったことを考えると、様々な意味で、鑑賞後も興味深い作品となっています。

格好良くないマフィア

マフィア映画といえば、激しい銃撃戦や、策謀渦巻く世界の中、ギャングの格好良さが描かれることが多いです。

しかしながら、マーティン・スコセッシの描く「グットフェローズ」は格好いい世界ではありますが、カッコイイだけではない。マフィアのちょっと違う姿をみることができる点も魅力の作品となっています。

物語の冒頭では、死んだと思っていた人間が、輸送中に生きていることに気づきます。そして、包丁で刺すは、銃で撃ちまくるわ、で、北野武映画を彷彿とさせる、殺すことに躊躇のない感じがたまりません。

しかし、そんなイタリアンマフィアにも、頭の上がらない存在がいます。

少しでも早く遺体を埋めにいきたいのに、母親に「ごはんを食べていきなさい」と言われて、結局ご飯を食べたりしますし、小さいころの話をされたりしながら、何とも居心地の悪い姿が描かれたりします。

いい奴らだけど、怖い。

「グットフェローズ」の中でも、屈指の名シーンがあります。

それは、ジョー・ペシ演じるトミーが、酒場で警察官とのやり取りについてみんなに話をする場面です。

みんなで楽しく笑いながら話をしているところで、主人公のヘンリーが、何気なく「お前は面白い奴だな」と言います。

本当に何気ない一言ですが、ジョー・ペシ演じるトミーは、突然表情を一変させます。

「俺のどこが、面白いっていうんだ(How am I funny?)」

トミーは作中でも、すぐ切れる人物です。

冗談半分で店員の足元に銃を撃ちますし、ちょっとからかわれただけで、本気で怒り狂います。

怒らせると手が付けられない人物なだけに、なぜ機嫌を損ねたのかわからないと、恐怖以外の何物でもありません。

できれば、何もしらない状態でこの場面をみて欲しいところですが、気まぐれに人を殺してしまう人たちと付き合うというのは、どういうことかがわかる場面にもなっています。

奥さんからみたマフィア

突然ですが、宇宙飛行士たちを描く作品で「ライトスタッフ」という映画があります。

「ライトスタッフ」は、宇宙飛行士という存在がどういうものであるかを教えてくれる作品であり、宇宙関係が好きな人であれば、一度は見たことのある作品でしょう。

「ライトスタッフ」という作品の見どころの一つに、宇宙飛行士たちの努力や活躍の影で苦労する、奥さんの悲劇も描かれます。

いつ死ぬかもわからない中で愛する夫を待つ恐怖

そんなご婦人サイドから描かれている点も注目の作品です。

「グットフェローズ」もまた、マフィアの奥さんの一側面が描かれていまして、主人公であるヘンリーと結婚することになったカレンは、華やかで変わった世界に引き込まれると同時に、マフィアという特殊な世界で生きることになります。

一瞬で殺す/殺される関係になるとはいえ、イタリアのマフィアはなんといっても家族想いです。

仲間同士では、家族ぐるみの付き合いをして、良くも悪くも窮屈な人間関係

外で愛人をつくったり、時には何週間も帰ってこない旦那に対して、怒りまくったりと、精神がおかしくなっていく様も見ものです。

愛憎が凄すぎて、寝ている旦那を殺そうとしたりと、めちゃくちゃになっていくところも凄い点です。

映像の面白さ

裏社会を生きるマフィアの特別性もよくわかり、かつ、演出的にも面白い場面があります。

舞台を見に行く際に、長蛇の列をさっとかわして、食堂を抜けながら、席に着くまでをワンカットで見せる演出は、見事です。

「グットフェローズ」は、場面の見せ方も含めて、非常に高度な作品となっていまして、古びれることがないのもまた魅力となっています。

マフィアの末路

さて、マフィア映画というのは、華々しく散ることが多いように思いますし、時には、切ないラストになることもあります。

「グットフェローズ」は、野球選手に憧れるかのように、ギャングになることを夢見た少年が、活躍し、立ち行かなくなっていく姿を描いた作品になっています。

余談ですが、ギャングスターになる、という夢を描いた漫画といえば、「ジョジョの奇妙な冒険 5部 黄金の風」を思い出すところです。

実話ベースの作品とはいえ、ルフトハンザ航空現金強奪事件という巨大な犯罪を成功させてみせたりしていますし、仲間内が幹部になりそうだったりと、盛り上がりはあります。

実在の人物の話であり、その時にも存命の人物でしたから、作品の盛り上がりをどこにもってくるかも難しいところですが、没落したあとも描いているところが秀逸です。

そんな繁栄と没落を描いた作品としては、同じくマーティン・スコセッシの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は面白いところですし、そのまま、マフィア的な人たちの活躍を見たい場合は、「カジノ」を見ても楽しいところです。

個人的には、思いっきり悪い顔のジャック・ニコルソンと、若き日のマッド・デイモンやディカプリオが活躍するギャング映画「ディパーテッド」を、その流れで見てもらいたいところだったりします。


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