![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88365348/rectangle_large_type_2_b5f5ba411831dd0041d60d0af4578823.png?width=800)
地元に残る? 出る? 転職する?映画「ベルファスト」
公 開:2021年
監 督: ケネス・ブラナー
上映時間:98分
ジャンル:ドラマ/コメディ
見どころ:男たちが座るソファの向き
![](https://assets.st-note.com/img/1664975665070-eqZ5Ovv4JV.png?width=800)
映画というのは、時に極端なモノサシがあったほうが面白く感じることができたりします。
遠くの国でおきている見知らぬ出来事だと思うと、感情移入も難しかったりしますが、自分にも起こりえることかもしれないと思えば、俄然興味がわいてくるはずです。
「ベルファスト」は、1969年に実際に起きていた小競り合いを、通りに住む少年の視点で描いた作品となっています。
カトリックもプロテスタントも仲良くしていた世界が、突然壊れる瞬間を目撃する少年。
人々はなぜわかりあえないのか。
宗教問題や、暴力を上塗りするための暴力の連鎖、人々の価値観の対立といった重いテーマを扱っている「ベルファスト」ですが、もっと単純な見方をしたほうが面白く見えることができたりします。
少年視点で語られる本作品ですが、本当に注目するべきは、少年の母親です。
旦那さんとも子供の時から一緒にベルファストで過ごし、町の人はみんな顔見知りで、仕事にしても何にしても、わかりあえる人たちと過ごしてきた人です。
しかし、旦那さんはベルファストの治安悪化や、転職の誘いが来ていることを理由に、地元から出ようと提案するというのが、大きなポイントとなっています。
当然、奥さんは嫌がります。
通りにバリケードが築かれても、銃撃戦がおきたり暴動が起きたりしても、ずっと生きてきた地元だからです。
さて、難しいことはさておいて、本作品は、今の職場から転職すべきかどうか、ということで悩んだりしている人たちの葛藤を描いた作品だと割り切ってみると、奥さんの気持ちも、周りの反応もよくわかるようになります。
義理の母親は、保守的な人ですが、決して頑固な人ではありません。
空飛ぶ車なんてないわ、と言いながら、映画館では観客と一緒になって楽しんでいます。
でも、その彼女が選ぶのは、ベルファストに残る、という決断でした。
少年のお母さんもまた、仲のいい友達や親せきもいるベルファストを離れたくないと思っていましたが、様々な事件を経て、自分の疲れ切った顔をガラス越しに見て気づくのです。
本作品をみている視聴者が、誰の気持ちに近いかはわかりませんが、決断した奥さんの潔さは、その一抹の不安の中にも、希望を見出す姿をみることができます。
今の職場がブラックであったり、新卒のときからいたり、なんだかんだ苦楽を共にした仲間もいるかもしれません。
そこに残る人もいれば、旅立つ人もいる。
遠くの国の、宗教対立の果てに葛藤する人々と思うとピンとこないかもしれませんが、今の職場転職するかどうするか、といった身近に起こりえるかもしれない出来事と結びつけることで、ベルファストの登場人物たちの気持ちに近づくことができると思います。
ちなみに、本作品が素晴らしいのは、ベルファストを離れることが正義と書かれているわけではなく、残る人も、出ていく人も、それぞれが自分の考えをもっている、ということを示しているところです。
そんなところで生まれる、小さな恋の物語も含めて、本作品は考えさせられる作品となっています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?