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男女を問わない愛、映画『TOVE/トーベ』で描かれる作者の恋愛模様とは?

公  開:2020年
監  督:ジョセフ・コシンスキー
上映時間:102分
ジャンル:ドラマ
見どころ:ムーミンのお芝居

ムーミンはカバではありませんメ~

「ねぇ、ムーミン、こっち向いて。恥ずかしがらずに」

日本において、ムーミンといえば、このアニメの歌で覚えている人も多いのではないでしょうか。

ムーミン・シリーズは、トーベ・ヤンソンの代表作であり、フィンランドにおける重要な作品ともなっています。

単に国民に愛されている作品というだけではなく、ムーミンを親善大使とするムーミン外交を行うなど、国を挙げて活用されています。

ムーミンの原作を読んだことがなくとも、ムーミングッズが家にある、という人も多いでしょうし、過去から現在に至るまで、様々な形で我々の目に触れてきた作品ともなっています。

どちらかというと子供向けのイメージのあるムーミンですが、映画「TOVE/トーベ」では、作者であるトーベ・ヤンソンの人生を描いた物語となっています。

その中でも、トーベ・ヤンソンの恋愛模様が強く描かれており、同性愛が発覚すれば罰せられるという時代にありながら、男女ともに愛する人として、また、芸術家としての苦悩が描かれます。

「TOVE/トーベ」に興味をもった人であれば、映画の中で、ムーミンがどのように関連してくるのかについて考えてしまうでしょう。

「ミムラ姉さんは、あなたね」

 トーベ・ヤンソンは、自分を含め様々な自分の人間模様からキャラクターを作り出していることが、作中で示されます。

冒頭ではいきなり、奥さんのいる男性と恋に落ち、さらに、

「部屋を見つけたの。古い家に」

と言って、ぼかしながら話を始めたと思ったら、突然、女性との肉体関係を告白したりします。

特に偏ったイメージをもっていない人であっても、ムーミンの作者が実は男女両方と交際できる人物であり、且つ、そんな恋の中で身を焦がす人物だとは思いもよらないことでしょう。

また、芸術家である父の元、自分もまた本業が芸術家としながらも、食べていくために挿絵をかいたり、もちろん、ご存じムーミンを作るというところも描かれます。

お金がなくて、家賃を自分の絵で渡すシーンがありますが、画家というのは、大なり小なりそのような手段を使わざるえないのかもしれません。

劇中ではさらっと流されますが、トーベ・ヤンソンは、「ガルム」という左翼系雑誌にもイラストを投稿しており、風刺画で有名な人もあったりします。

映画の中ではかなり特定の期間に絞って描かれていますが、彫刻家の父のもとヤンソン一家はかなり金銭面で苦労しており、時代的にも戦争によって町が廃墟のようになったりと、トーベ自身は大変な時代を生き抜いた作家でもあります。

「トーベ」は、そんな主人公であるトーベ・ヤンソンが、生涯を通して使うこととなったアトリエを買うあたりから描かれ、同性の恋人であるヴィヴィカとの出会いと別れが描かれます。

芸術家はこういうものなのかもしれない、と思ってしまうところですが、トーベ・ヤンソンという人物がいかに自由奔放な人物であり、且つ、エネルギッシュな人物かがわかります。

ムーミンそのものについても、さらっと描かれていたりしまして、ファンであれば、気づくところも多くあると思います。

物語の最後には、ムーミンにもでてくるキャラクターであり、トーベが後に一緒に暮らす人物がでてきたりして、しっかりとムーミンファンにもにやりとさせるイベントがあったりします。

ムーミン自体は、小説や漫画等で目にすることが多いとは思いますが、あまり内容が知られていないお芝居まで作中で描かれるというのは面白いところです。

ちなみに、「TOVE/トーベ」の解説が、ムーミンの公式ホームページに掲載されていますので、作品をみた方は、是非そちらも併せてみてもらいたいと思います。

何気なく我々の日常に溶け込んでいるムーミンですが、本作品を見ることで、ムーミントロールの物語をまた違った視点でみたくなる、そんな映画が「TOVE/トーベ」となっています。


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