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ループで描く強い主張「隔たる世界の二人」

公  開:2020年
監  督: トレイヴォン・フリー
上映時間:29分
ジャンル:ループ/暴力

ループものの作品で、有名なものはいくつかあります。

同じ場面を繰り返し、何度も失敗を繰り返していくことで少しずつ主人公が前に進んでいく、という形であれば、トム・クルーズ主演「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、鉄板の面白さとなっていますし、ループとは異なりますが、「バタフライエフェクト」のように、人生の節目に立ち返って、誰かを救おうとするたびに結果が悪くなるような作品もあったりします。

また、アニメでいえば、「Re:ゼロから始める異世界生活」なんかは、死に戻りという主人公の能力により、何度も何度も死を繰り返して物語を進めていく形式は、ある種の定番といえるところでしょう。

特に、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」に至っては、ゲーム的な感覚で作られた作品となっておりまして、プレイヤー自身が何度も同じ場面を覚えていくことによって、ゲームそのものがうまくなり、結果として、主人公の肉体そのものは変わらないのに、ループの中で培った経験や知識で乗り越えていく、というのを楽しむのもポイントだったりしますね。

死にゲーというジャンルでお馴染みの「フロムソフト」作品もありますし、物語がループすることと、ゲーム的に物事を重ねていくというのは、非常に親和性が高いモチーフといえるところです。

さて、そんな良作のループもの作品が数多くある中で、一風変わったアプローチで、ループものをつかっている作品があったので、紹介してみたいと思います。

それは、わずか29分間の短編作品でありながら、ループものの面白さと、今までのループものではない経過と結論にいく面白い作品となっています。

本作品は、アカデミー賞短編映画賞も受賞した作品となっており、クオリティの高い作品となっています。

何度も白人警官に殺される。

本作品の凄まじいのは、ループ脱出の目的が異なる点です。

本来であれば、ループそのものから脱出することこそが目的です。

勿論、本作品も、ループを抜け出すことが目的であることには違いないのですが、少しずつ気づいてくるのです。

絶対にこのループからは逃れられない
けれど、ループに屈してはいけない。

一体どういうことなのか、という点については、是非映画をご覧いただきたいと思います。

「恋はデジャ・ヴ」のように、性格の悪い男が、ループを繰り返す中で、一夜限りのつもりだった娘に本気になっていったり、自分を殺す白人警官のことを知って仲良くなっていったりと、ループものでありがちなものもきちんとこなしています。

「恋はデジャヴ」にしても、「8ミニッツ」にしても、ループするからには理由があって、その理由させ突き止めていけばループは終わる、はず。

「隔たる世界の二人」は、そんな甘いループではないことも含めて、非常にテーマ性が強く、そのテーマとループものという設定が見事に合致した作品となっています。

こんな絶望感を味わうループは、そうありません。


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