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雰囲気がとにかく怖い。映画「サスペリア(1977)」

公  開:1977年
監  督: ダリオ・アルジェント
上映時間:99分
ジャンル:ホラー/サスペンス
見どころ:木箱の中のもの

窓の外は、だいたいヤバそうだメ~

「決して一人では見ないでください」

勿論、一人で見ても大丈夫ですが、イタリア映画におけるホラー映画の金字塔としても知られる「サスペリア」は、良くも悪くも、恐怖の演出とはどういうものか、ということを熟知しているように思います。

やたらに天気が悪く、建物には、あまり人がいない。

音楽は意味深であり、どこか病的な雰囲気。

グロテスクな描写もありますが、本作品における恐怖というのは、まったく別のところにあったりするから、見逃すことができなかったりします。

「サスペリア」は、常に何かが起きそうな気配に満たされています。

主人公は、だいたい画面の右側にむかって進んでいきますし、とある場面になると、ゆがんだ魚眼レンズみたいな画になっており、なんとなく居心地の悪い映像が流れます。

ゾンビ映画の音楽でよく知られるプログレッシブ・ロックバンドである「ゴブリン」の音楽もまた、映画の中で奇妙な雰囲気を形成するのに役立っています。

物語の内容そのものは大したことはありませんが、常に怖いことがおきそうな演出をこれでもかと入れているため、内容の割には、まったく飽きずに見ることができます。

「ファントム・オブ・パラダイス」で知られるジェシカ・ハーパーが演じる主人公は、バレエで有名なドイツの学校へと入学します。

初日の夜にすれ違った女生徒の言葉と、学校内での奇妙な出来事から、彼女は、学校の秘密に気づいていく、というのが、大まかな流れとなっています。

ついつい、アダムスファミリーのドラマ「ウェンズデー」のように、不思議な学校に入った主人公が、謎解きをしていく物語みたいな雰囲気になっていますが、「サスペリア」は、全然ミステリものではないので注意してください。

本作品は、とにかく、雰囲気を楽しむことが大事な作品となっています。

あと、思ったよりも気持ちの悪い映像がいくつかあったりしまして、恐怖というよりは、生理的に気持ちの悪いものを見ることになります。

また、色の使い方が見事であり、部屋の向こう側で何かが起きそうな雰囲気であったり、真っ赤な壁紙の部屋の装飾等、見るべきものは沢山あったりします。

関連作品

「サスペリア」は、2018年にリメイクもされていますが、個人的には、極彩色豊かなのも「サスペリア」の魅力となっているため、本作品を面白いと感じた方にお勧めしたいのが別にあります。

それは、エドガー・ライト監督「ラストナイト・イン・ソーホー」です。

「サスペリア」でも多様されている極彩色豊かな光の当て方をしており、影響を強く受けていることが想像できます。

また、内容的にも似通っているところがありまして、服飾学校に通うために大きな荷物をもって状況する主人公。

彼女もまた、タクシーに乗るのですが、その運転手が何か、怖いのです。

「ラストナイト・イン・ソーホー」では、トーマサイン・マッケンジー演じる主人公が無防備にも運転手に自分の個人的な情報をしゃべることや、運転手が性的な目で彼女を見ていることを匂わせたりすることで、男性や都会への恐怖心を植え付けるシーンとなっています。

「サスペリア」もまた、冒頭において、何を考えているかわからないタクシー運転手がでてきており、何か信用できない雰囲気は共通するものを感じます。

実際に、色々と事件が発生するのですが、音楽と演出、そして、思った以上にはグロテスクな表現も相まって、なんとなく背筋が寒い思いが、映画を見た後も続くかもしれません。

有名なバレエ学校の割には、生徒たちの身体つきが明らかにバレエに適していないものだったり、具合が悪いという設定ではあるものの、明らかに踊りが上手ではなかったりするのは目をつぶってもらいたいと思います。

ただ、画面の端々に映る悪いものの気配がいつまでもあり、それこそが画面を見るのをやめられない理由の一端にもなっていると思われます。

公開当初は、本当に映ってはいけないものが映っている、とまで言われていた本作品。

少なくとも、見終わらないと雰囲気の悪さがどのようになるのかが、気になって、画面を止めることはできないはずです。


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