あなたはコーラとペプシ、どちらが好き? ドキュメンタリー「COLAWARS /コカ・コーラVSペプシ」
めーめー。
皆さんは、コーラ派でしょうか。ペプシ派でしょうか。
正直、これだけ飲料品が増えてきてしまった世の中において、そもそも、コーラを飲まないという人もいれば、水で十分という人も多いでしょう。
そんな中にあって、2021年現在UーNEXTの独占配信で「COLAWARS /コカ・コーラVSペプシ」というドキュメンタリーをご存じでしょうか。
正直、コーラに思い入れのない人間からすれば、コーラだろうが、ペプシだろうがどうでもいいことかもしれません。
しかしながら、どちらを飲むかで国を二分しかけてしまった事実を知ってしまうと、たかが炭酸飲料と笑うこともできなくなってしまうところです。
そんな、ペプシとコーラの戦争を扱ったドキュメンタリー作品について、簡単に語ってみたいと思います。
コカ・コーラとは
コカ・コーラといえば、知らない人のいない超有名な炭酸飲料です。
南北戦争で無茶苦茶になったアトランタが復興し、その中で作られた有象無象の健康に良いとされるものがポコポコとできあがっては消えていった時代があります。
民間療法に毛が生えたようなものの中にあって、異彩をはなっていた飲み物こそ、コカ・コーラです。
当時は、本当にコカの葉が入っていて、飲むと元気いっぱいになったということについては、歴史に葬られた事実ではありますが、当時のアメリカの様々なお国柄というか、事情や状況が作り出した飲み物だといえるところです。
当時は、医薬品的な感じの扱いとなっており、我々が知っているような瓶に入っていたりする形式では無かったそうです。
コカ・コーラそのものの歴史はいいとして、様々なイメージ戦略を駆使して、圧倒的な炭酸飲料水のシェアを獲得したのが、コカ・コーラであります。
ペプシの戦い
三国志でも、ケータイ業界のシェア争いでもなんでも、ある業界において、一社が独占してその場を支配するというのは健全な状態とはいえません。
必ず反対勢力がでてきたり、第二の勢力がでてきたりするものですが、いわば、コカ・コーラにおける対抗馬として現れたのがペプシでした。
ちなみに、「COLAWARS コカ・コーラVSペプシ」の中では、当時の、炭酸飲料においてのシェアでいえば、ドクターペッパーが二位だった、というのは驚いてしまう点ではないでしょうか。
業界三位だったペプシが、「ペプシの挑戦」と称して、一般のお客さん相手に、ペプシとコーラどっちがおいしいかを飲み比べてください、とやるチャレンジは悪意があるとともに、劇中でも語られている通り、戦略としてはかなり正しいところだったりします。
有象無象のそろった炭酸飲料の業界の中において、コーラとペプシ、どちらが好きか、という時点で、他の炭酸飲料はほかに追いやられている、という点が面白いところです。
近年の出来事で言えば、トランプによる選挙戦なんかも、その効果をうまく使ったものだといえるでしょう。
かつて、泡沫候補でしかなかったトランプが、トランプかそれ以外か、という選択肢にもっていくことで、結果として、選挙戦を有利に進めてみたりしたのは記憶に残るところですし、選択肢を知らないうちに減らされてる、というのは、まさに戦略的に正しいやり方だといえるでしょう。
本来イエスかノーで選べない問題を、矮小化して選択させる。
ペプシという会社が、いかに戦略的にうまいことをやっていたかが、ドキュメンタリーないでもしっかりわかるところです。
見どころ
「COLAWARS コカ・コーラVSペプシ」の見どころとしては、その歴史をみることができるということもさることながら、最終的に、コカ・コーラとペプシの戦いがもたらした功罪を描いているところにあります。
業界で圧倒的なシェアを誇っていたコカ・コーラに、業界三番手だったペプシが戦いを挑む。
これが、映画であるとかドラマであればありそうですが、これが、現実の世界のアメリカで起こっていたというのですから、驚いてしまうところです。
挑戦者は、王を倒すことだけ考えていればいいですが、王は慢心してしまったり、守るためにあらゆる手を尽くさなければならなくなります。
劇中でも、それは、初めて宇宙で飲まれた炭酸飲料は、ということで、争ったりしていました。
しかし、ドキュメンタリー内でも、語られますが、結局、コカ・コーラとペプシの戦いによって、炭酸飲料業界は大きく成長した、という事実は皮肉といえるでしょう。
コカ・コーラはもともと、広告関係にお金をかけており、その過去のCMなどがCDやDVDで売り出されたりもしています。
また、時代性を表していたりして、CMだけでも面白いところです。
日本のCMなんかでも、加山雄三がやってきてみんなでコーラを飲んだりする姿が記憶に残っている人もいるのではないでしょうか。
ペプシもまた、コカ・コーラを追い落とすためにいろいろなCMを仕掛けていたことも面白いです。
秘伝のレシピ
ペプシの勢いによって、コカ・コーラは大失敗をしてしまいます。
それこそが、「ニュー・コーラ」です。
作中では何度も語られますが、コカ・コーラと比べると、ペプシのほうが甘味が強いと言われています(カロリーも高いです)。
誰でも、のどが渇いているときの一口目は、多少甘いほうがおいしく感じるものです。
ペプシはその効果を狙って、ペプシの挑戦として、飲み比べを仕掛けていっていたわけですが、このキャンペーンが結果として、コカ・コーラ首脳陣の判断を狂わせてしまい、結果、秘伝のレシピを変えて、「ニュー・コーラ」をつくってしまうという愚行に走らせることになるのです。
ちなみに、コカ・コーラによる秘伝のレシピは、金庫にしまわれており、3人しか教えられず、その3人は決して同じ飛行機に乗ることはない、と語られます。
アトランタでコカ・コーラのレシピを作った人物は、お金に困って色々な人にレシピを売ってしまったというエピソードがあったりものするのですが、当時のコカ・コーラが、レシピを秘伝とすることで神秘性を作り出して稀少性を高め、しかし、逆に、そのレシピの稀少性が、結果として、味を変えることができなくなる、というジレンマを生み出してしまったのは皮肉と言えるところです。
話はそれますが、コカ・コーラ以外にも、秘伝のレシピについて語られるものがあったりするのですが、みなさんはご存じでしょうか。
カーネルサンダースでお馴染みの、ケンタッキー・フライド・チキンなんかも、粉の配合は極秘とされており、秘密が複数の人物に分散されている、と聞いたことがあります。
オリジナルレシピ、というのは、どんな業界においても、魅力的な響きではあるのでしょう。
コカ・コーラは誰のもの?
さて、そんな秘伝のレシピとなったコカ・コーラ。
作中では、何度も、砂糖と、水と、炭酸を加えた飲料だと言っています。
事実その通りでしょうが、ここまで国民に広く長く親しまれてしまった飲み物は、もはや、単なる飲み物ではなくなっていた、というのは、ペプシによる功罪の一つでもあったでしょう。
ペプシの猛追によって焦って作った「ニュー・コーラ」は、アメリカ国民の反感を招きます。
また、ペプシが作った広告も実に皮肉でやりすぎです。
なぜ?
と問いかける女性が、コカ・コーラを飲むと、その理由を悟ります。
ペプシのほうがおいしいから、恐れをなして味を変えたのだ、ということです。
ペプシは、これをコカ・コーラによる敗北宣言ととらえ、どこまでもいじり倒していますが、結果として、味が変わってしまった「ニュー・コーラ」に対して、一番反感をもったのは、消費者そのものだったというところは面白い点です。
創作物でもなんでも、作り手からいったん離れてしまったら、それは、ファンのものとなってしまう、というのは、感覚としてわかるところではないでしょうか。
コカ・コーラは、ペプシとの戦いの中で、結局、コーラがアメリカ人にとっての国民的な飲み物であった、ということを気づかせてしまった、あるいは、そのようにしてしまったことがわかるのです。
途中、足の引っ張り合いみたいになってしまった時期もありながらも、結局、アメリカ国民は、アメリカ的なものを求めていた、ということがわかるところは面白い点です。
アメリカ的なもの
ハンバーガーであるマクドナルドの創始者について語った映画で「ファウンダー」というのがあります。
これもまた、有象無象のハンバーガーの中で、マクドナルドを作り出したマクドナルド兄弟から権利をもらい、アメリカでもっとも食べられるハンバーガーに成長させた男の物語が描かれています。
その中で主人公は、何が大事だったかを語ります。
「マクドナルド。名前がいい。実にアメリカ的だ」
当時のアメリカは、ホワイトキャッスルというハンバーガー店が主流であり、もともと、マクドナルドはそのアンチとして作られた存在でもありました。
しかし、「ファウンダー」の中で、主人公は、マクドナルド兄弟のハンバーガーの業態に目をつけ、その名前こそが重要だといったわけです。
ホワイトキャッスルではなく、やはり、マクドナルド。
アメリカといえば、マックと、コーラ。
この組み合わせがしっくりくるのは、建国神話の持たない人造国家であるアメリカにおいて、アメリカ的なものを欲してやまないアメリカ人の求めるところの一つに、コーラもあった、ということがわかります。
その後の飲料業界
「COLAWARS コカ・コーラVSペプシ」は、その後の飲料業界についても語ります。
皆さんもご存じのとおり、コカ・コーラは飲むかもしれませんが、ダイエットコーラをはじめとして、健康を気にしながら生きる時代です。
時には不健康なものを飲みたいときもあるでしょうが、毎日飲むわけにはなかなかいきません。
コカ・コーラとペプシは、炭酸飲料水だけではないところでも、戦い続けています。
ですが、かつて起こったような、国を二分するような大きな流れはもう起きないことも示唆してくれています。
音楽においてミリオンセラーが起きないのは、やはり、人々の趣味が多様化したためです。
飲料業界において巻き起こった、コーラVS ペプシのような、後から見ればどうでもよくても、当時の人たちからすれば、アイデンティティにも組み込まれている重要な関心事項なっていた炭酸飲料。
U-NEXTの独占配信になっていて見づらいところもあるかもしれませんが、物事がどのようにしてブームとなっていくのか、あるいは、チープ化してしまうのかというのも含めて、非常に示唆に富んだ面白いドキュメンタリーとなっていますので、気になった方はぜひご覧いただきたいと思います。
以上、あなたはコーラとペプシ、どちらが好き? ドキュメンタリー「COLAWARS/コカ・コーラVSペプシ」でした!
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