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『スミコ22』しどろもどリさん インタビュー🍰

こんにちは!はじめまして。
映画チア部大阪支部の(まる)です ○

映画『スミコ22』が、9/28(土)と29(日)に大阪・十三のシアターセブンさんで再上映されます!
京都では9/27(金)〜出町座さんにて、神戸では9/28(土)〜元町映画館さんにて上映です🎞️

今回は、本作の企画・制作をされた映像制作ユニット「しどろもどリ」の福岡佐和子さん(脚本・監督)と、はまださつきさん(はな役・助監督)に、オンラインインタビューをさせていただきました🎤

スミコに会いたくなって、何度も映画館へ観に行ってしまうくらい、とってもすきな作品です🍤

はじめてのインタビューで緊張のあまり、しどろもどろになってしまいましたが、おふたりがやさしくあたたかく答えてくださいました。
福岡さん、はまださん、ありがとうございました。

たくさんお伺いして、盛りだくさんの内容となっております🙏🏻
目次をご活用のうえ、ぜひ最後までご覧ください!!


(聞き手:まる、なつめ)

⚪︎ しどろもどリさんのプロフィール ⚪︎

うしろ:福岡佐和子さん、まえ:はまださつきさん

日本大学芸術学部 演劇学科卒のはまださつきと 映画学科卒の福岡佐和子のふたりがつくった創作ユニット。
2018年12月13日木曜日にろう下にて結成。
素敵だと思うことを素敵だと言いたい!愛しい瞬間を捕まえたい!と、
なんでも創作せんとする 日常系しりめつれつな2人組です。


「しどろもどリ」について

チア部:まず、しどろもどリさんの結成の経緯についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

福岡佐和子さん(以下、福岡さん):はい。わたしたちは珈琲研究会っていう、コーヒーを飲んで音楽を聴きながらおしゃべりする、みたいな大学のサークルで出会いました。同級生で同じタイミングで入って、そこからおしゃべりをよくするようになって。なんか、わたしたちの会話って、良くない?っていう話になって、それをラジオで録って誰かに聴いてほしいなっていうところで、初めて「しどろもどリ」っていう名前をつけて活動し始めた、っていう感じですね。だから、ラジオがいちばん最初だったんですけど…。

はまださつきさん(以下、はまださん):そうね。ツイッターアカウントをつくるときに、名前をつけたって感じです。

福岡さん:そうだね。

チア部:「しどろもどリ」という名前の由来はなんだったのですか。

福岡さん:ユニット名が全然思いつかなくて、ツイッターアカウントつくるために一旦ユーザー名になんか入れよっか、ってなって。

はまださん:うん。

福岡さん:「しどろもどろ」とか、いいかもなって。

はまださん:ね。いい言葉だね、ってね。

福岡さん:ね。それで入力したんですけど、もう使われていて…。あっじゃあ「shidoromodor“i”」ならいけるからそれにしよっか、って。アカウントできて、その後ユニット名なににしよっか~と考えていたときに、……「しどろもどり」でいいんじゃないか~?となって、決まりました。

全員:(笑)

はまださん:まさにその通り。

チア部:なるほど。“り”は、カタカナの“リ”ですよね。

しどろもどリさん:そうですね。

はまださん:あれはちょっとしたいたずら心というか…。ひらがなの“り”と、カタカナの“リ”って似すぎてるから、気づかれなくていいんじゃないかなって思って、表記だけカタカナにしましたね。だから、たまに…っていうかけっこう間違われるんですけど、毎回にやにやしてます。

全員:(笑)

福岡さん:一発でカタカナにしてもらえると、めっちゃテンション上がります。

はまださん:ね!うれしい。

福岡さん:ね!うれしい。


『スミコ22』製作の経緯

チア部:『スミコ22』の製作経緯もお聞きしたいです。

福岡さん:はい。わたしたちは映画を2020年から撮り始めて、これが3つ目の映画になるんですけど、大学を卒業して、映画を撮ることもやめないって思いつつ、私は就職をして。でも、就職先を4か月で辞めてしまって。辞めたときに、自分が何を考えてるかよくわかんないなって思うことがけっこうあって。自分の「好き」の感覚が、すごい広くなってることが怖かったんです。
でも、そんなときに観た、「あぁこの映画はこのひとが、本当に思ってることなんだろうな」っていう映画が、飛び抜けて好きだ!と感じて。そこから、誰かが本当に思ってることをベースにした映画をつくりたいな、と思いました。そのときに、自分自身が自分にとっていちばん近い人間だったから、自分の考えてることをベースに脚本を書いてみようとしたことが、きっかけです。

左から、スミコ(演:堀春菜さん)、はな(演:はまださつきさん)

福岡さん:でもその脚本をかいてること自体が、自分への気づきだったというか。自分の回復にすごく繋がった感じがありました。だからそれで満足して、これは映画に撮るっていうよりも、脚本をかいたこと自体が良かったな、みたいな感じがありました。でもそのときにまた別の「このひとが本当に考えてることなんだな」って思える映画を観て、なんか…やっぱ、すごい良いよなと、内容がどれだけ個人的であっても、むしろ個人的であるからこそ、本当の感情であるということはとても強さのあることだなと思って。
それから、さつきちゃんが「一緒にやろうよ!」って言ってくれたのもあったり。でもお金がなくて。その脚本を、今回プロデューサーをしてくださった髭野(純)さん(本作配給の合同会社イハフィルムズ代表)にお送りしたら、一緒にやろうと言っていただけたっていうのもあって、映画として撮っていくことになったという感じですね。

はまださん:『スミコ22』の中で、はな(演:はまださん)とスミコ(演:堀春菜さん)が一緒に住んでるんですけど、同じように私もさわこちゃんと一緒に住んでいる時期に、さわこちゃんの、就職して辞めて…みたいな流れを見ていました。
なので、すごい実感のこもった脚本だなと思ったし、絶対に映画化しなきゃ!みたいな熱い想いがあったわけじゃなかったですけど、次撮るならこの作品がいいんじゃないかなという気持ちはあったと思います、私も。

チア部:ありがとうございます。ちなみにその「本当に考えてることなんだな」と思われた2つの映画の作品名をお伺いしても大丈夫ですか?

福岡さん:はい。1つ目が『Episodic memory』(2022/鈴木理利子監督)です。東京学生映画祭で、偶然観た映画で。もう1つが、安楽涼さんの『夢半ば』(2022/安楽涼監督※)ですね。(※安楽涼さんは本作で、やま役を演じられています。)

チア部:ありがとうございます。観てみます!

福岡さん:おすすめです!


街で見かけた登場人物

チア部:『スミコ22』は「監督自身の日記をもとに綴られる、等身大の物語」ということですが、劇中に登場する個性豊かな街のひとたちは、実際に出会った方なのですか?

福岡さん:実際に見かけたことあるひとを想像でふくらませた、というような感じです。
「白スキニーさん(演:安川まりさん)」は駅のホームで白スキニーを履いた方が靴紐結んでいるときに、パンツが透けていて、声をかけるかすごい迷ったという出来事からきています。スミコみたいにそのあと何回も会った、とかではないんですけど…(笑)。
「リコーダー男(演:原恭士郎さん)」は、実際はトロンボーンだったんですけど、駅の地下道で夜中に楽器を練習しているひとがいました。そのひとに話しかけたいなあと思って、でも実際は話しかけてないんです。

チア部:トロンボーンだとけっこう響きそうですね。

福岡さん:でも意外と、街のほうまでは響かないんですよね。地下だけで止まってる感じがしました。

チア部:へぇ~!

福岡さん:なんでなんだろう。あと「自販機のふたり」(豊→演:遠藤雄斗さん、香苗→演:瀬戸璃子さん)は、街で見かけたことはないんですけど…。いたらいいなあっていうひとたちです。

はまださん:「自販機のふたり」はけっこう昔のメモにも書いてたんじゃなかった?

福岡さん:昔のメモからありました。昔に、いたらいいなあって思ったひとを、こう、掘り起こして。

左から、やま(演:安楽涼さん)、スミコ(演:堀春菜さん)、ミオ(演:梶川七海さん)、雪乃(演:イトウハルヒさん)

チア部:はまださんも「トロンボーンのひと」や「白スキニーさん」を実際に見たことはあるのですか?

はまださん:いやぁ~私は全然見てないです。こういうひとがいるよって話もとくに聞いてなかった気が…。あっ、トロンボーンは聞いてたかな?
でもなんか昔からさわこちゃんはけっこう、街ですれ違った良かったひとを教えてくれるとこあって。
今ぱって思い浮かぶのは、あれですね…。ひとじゃないんですけど、「自転車のかごに乗ってる大根」っ最高だったよって教えてくれることとか、ありました。

チア部:いいですね、「自転車のかごに大根」。見たい!

福岡さん:横断歩道、渡ってました。

チア部:へぇ~!

福岡さん:さつきちゃんもよく教えてくれます。

はまださん:私もよく、いろんなひとに会って、さわこちゃんに話したりすることも多いですね。
あとふたりで歩いてるときにすれ違ったひとを見て、「今のひと良かったよね!!」みたいな話を話題にすることとか、けっこう多いと思います。


現場での役割

本作でのチア部:しどろもどリさんは今回の『スミコ22』では、それぞれどのような役割を担当されたのですか?

はまださん:なんかけっこう作品ごとに毎回決めて変えてる感じがあって、前の作品の『まだ君を知らない』(2023)とか、前の前の作品の『トエユモイ』(2021)のときは、映画をつくった経験がまだそんなに多くなかったので、ふたりで監督してたんですけど、
今回はとくにお話の性質上、さわこちゃんひとりが監督したほうがいいねって話は最初のほうからしていました。
…っていう感じかな?さわこちゃん。

福岡さん:そうだね。『スミコ22』においてだけの話をすると、さつきちゃんは、すごい相談に乗ってくれて、内側のたくさんの仕事をしてくれた感じです。

はまださん:そうですね。いや、なんかその、助監督がなんなのかよくわかっていなくてですね…(笑)。いちおう助監督っていう名前にしてはあるんですけど。
そうですね、さわこちゃんが『スミコ22』を撮るときに、煩わしいことを全部取っ払う役、みたいな感じで。
いちばんやってた仕事は、ごはんを作ることだった気がしますね。

チア部:劇中のごはんもはまださんが?

はまださん:ピザとかは実際の店舗のやつとか使わせてもらったりで、ものによるんですけど、おうちのシーンのごはんは作りました。エビフライ揚げました!

チア部:エビフライ、すっごくおいしそうでした!

はまださん:やったー!ありがとうございます!

チア部:お好み焼きは?

はまださん:お好み焼きは元ネタと同じ、市販の冷凍食品です。あれおいしいよね、なんか、妙に。

福岡さん:なんか冷凍のソースって、すっごいネコ描きやすいんですよね。

はまださん:だよね。

福岡さん:描くつもりなくても、一回ソースを出すと、絶対まるく出るんです。その上にマヨネーズ出すと、絶対それもちっちゃい丸で出るんですよ。だから、描かざるを得なくなる、っていう。

全員:(笑)

チア部:「リコーダー男」役の原恭士郎さんは制作としても携わっているようですが、今回どのような形で制作側としてお仕事をされていたのですか。

福岡さん:もともと、わたしたちがふたりでやっている感覚が強くて。こっちの意識の問題だったんだと思うんですけど、わたしたちふたりと、お願いして参加してくださっている人、みたいな感覚があったんです。
だから恭士郎さんには、お願いしてるっていうよりも、もっと内側のひととしていてほしいみたいな気持ちがあって。なんか、仲間になってほしい、みたいなお願いの仕方で、入っていただきました。
なので主に、めちゃくちゃ相談に乗ってもらったり、やれるよ!って言ってもらったり。
あとは、ほんと細かいことなんですけど、ちょっと物持ってきてもらうとか、ちょっとひと迎えに行ってもらうとか、そういうちょっとしたこととかをたくさんやっていただいたり。

はまださん:そうだね。

福岡さん:顔合わせのときとかにもいっしょに来てくれて、現場を和ませてくれた感じですね。

はまださん:そうですね。わたしたちがけっこう、ひとに対して緊張感が高くて、すごい恐縮しちゃうんです。だから雑用とかをひとに頼みづらいみたいな精神がけっこうずっとあって。
恭士郎さんに現場でやってもらったことは、けっこう雑用って感じだったんですけど、非常に精神的に支えてもらってたという感じですね。
それに、「リコーダー男」の役も良いし、似合ってるし、という感じです!


声と音楽

チア部:この作品は工藤祐次郎さんのナレーションでお話が進んでいくと思うのですが、そういう形にしたのはどうしてだったのですか。

福岡さん:もともとのベースが日記なので、スミコがどう思ってるか、実際に口には出さない部分も聞ける映画にしたいなみたいな気持ちがあったんです。
スミコが本当はこころの中で思ってることを、日記に書くようなことをやりたいなって気持ちで。
最初に思ってたよりもナレーションは入らなかったんですけど。

チア部:そのナレーションに工藤祐次郎さんをオファーされた理由をお聞きしてもいいですか。

福岡さん:スミコの声ではないなって思っていたんです。なんですかね、本当になりすぎちゃうというか…、ちょっとじめっとする感じがして。全然別の、天の声みたいな声でいてもらえたらなぁ~って思ってて。
でも声って難しくて、いちばん最後まで見つからなかったんです。
でもそのときに、工藤さんがよくしゃべる曲を聴いて、この声だよな!ってなって。そこからオファーしました。

チア部(まる):ありがとうございます。工藤さんの声がこの映画にすごく合ってるなあ、と思って観てました。

福岡さん:よかった、うれしい。

チア部(まる):私はこの作品を知ったきっかけが工藤さんだったんです。

はまださん:そうなんですね!「羊羹のブルース」、聴いたことありますか?

チア部(まる):あります!

はまださん:それです!

左から、スミコ(演:堀春菜さん)、真野(演:東宮綾音さん)、長谷川(演:黒住尚生さん)

チア部:主題歌と音楽にゴリラ祭―ズさんをオファーされたのは、どんな理由だったのですか?

福岡さん:ちょうどその日記を書いてた22~23歳くらいのときに、すごくよく聴いてたのがゴリラ祭―ズさんで。
もともとは歌詞がある曲ばかり聴きがちだったんです。いろんな気持ちがあるときに、歌詞のない曲は自分の気持ちを操らないでいてくれるっていうか、でも引っ張ってもくれる、というか。
なんか、その感じがすごく心地よくて、よく聴いていました。

はまださん:そう、ゴリラ祭―ズさんは、最近は歌う曲も多いんですけど、もともとインストバンドなんですよね。

福岡さん:それで、『スミコ22』の音楽はだれにお願いしたいかなぁ、って考えたときに、ゴリラ祭―ズさん、お願いできないかな…、って思って。
面識はなかったんですけど、メールを送ったら、いいですよって言ってくださって。めちゃくちゃぴったりだったなって思ってます。

はまださん:ね、いいよね。

福岡さん:あとは、ゴリラ祭ーズさんはリコーダーが入ってるっていうのも大きかったですね。

チア部:「リコーダー男」のキャラクターは、ゴリラ祭―ズさんのリコーダーから来たのですか?

福岡さん:「リコーダー男」のほうが先です!

チア部:トロンボーンをリコーダーに変更されたのはどうしてだったのですか?

福岡さん:なんか、トロンボーンのひとが深夜にいたのもおもしろかったんですけど、でも、ちょっと納得できるというか…。トロンボーンは練習するよなぁって感じがするけど、リコーダーはさらにおもろいような気がして。

はまださん:あと撮影のしやすさもあるよね。

福岡さん:それはある。

はまださん:リコーダーのほうが手に入りやすいとかね。

福岡さん:吹きやすいし。でもリコーダー練習してる人いたら、もっと話しかけたい!

チア部:たしかに、いたら声かけたくなっちゃいますね!リコーダーなら、なんだか懐かしさも感じます。

福岡さん:なんなら教えられるかもしれない。

全員:(笑)


(まる)の好きな『スミコ22』のあれこれ

チア部(まる):私がすごく印象に残っているシーンがあって、それについてもお聞きしたいです。
まずタイトルが出るまでの流れが、私はすごい好きなんです。そこでもう一気に惹かれて、タイトル出た時点で、あぁもう私この映画絶対好きだ!って思いました。

福岡さん:うれしいです!あれは、最初は入ってなかったんです。けっこう最終的に入れたような感じで、いろんな理由はあったんですけど…。
私の映画の原体験が、『アメリ』(2001/ジャン=ピエール・ジュネ監督)っていう映画で。『アメリ』のオープニングみたいなことをやってみたいなっていうのがずっとありましたね。
もともとの入っていない稿を読んでもらったときに、この男の声は一体誰なんだ?みたいなことを言われることがあって…。
それをきっかけに加えてみたのですが、でも他のひとが考えてることが最初に見えると楽しいよなぁという感じで残っていきました。

はまださん:でも、けっこう本を重ねる度に入れたり無くしたりしてたような印象があります。
それこそあのシーンは、ナレーションがスミコじゃなくて工藤祐次郎さんっていうのと同じで、スミコだけにこもりすぎないようにするって感じです。
あんまりまとまってなく、広がる感じがあっていいなぁって私は思ってます。とても、好きです。

チア部(まる):私もとても好きです!そのタイトルが出るところもすごく好きです。

はまださん:最初脚本で読んだとき想像したのと全然違って、かっこよかった。

福岡さん:ね。ゴダールの『はなればなれに』(1964/ジャン=リュック・ゴダール監督)のタイトルバックが好きで、意識していました。

はまださん:思ったよりたくさん変わる~って思って。すごい、いい!

チア部(まる):あと、ベランダでの会話も大好きです。

左:スミコ(演:堀春菜さん)、右:はな(演:はまださつきさん)

福岡さん:あのシーンはもともと、はな(演:はまださん)が踊る予定だったんです。
でも撮影始まってから、ちょっとそこの非現実性が、作品において飛び出すぎちゃうかもなと思って変えました。

はまださん:そのシーンだけ、はなの衣装がめっちゃ変わるんですよね。

福岡さん:それはちょっと変えようって直前に変えました。
もともと会話は「好きなものってなに?」だったんですけど、少し内容量を増やしました。
ゆで卵はもともと出す予定があったので、さつきちゃんに「ゆで卵についてなんか思ってることある?」って聞いたりして。

はまださん:急に「ゆで卵のこと褒めて」って振られて…。
「たくさん割れるから良い」っていうのは私の意見です!

チア部(まる):たしかに割り続けられるっていいですね。

はまださん:咄嗟に考えたにしては、私も気に入ってます!

チア部(まる):あと、タイ人の名前の話も好きです。

福岡さん:あれはさつきちゃんが好きで。

はまださん:私が普段から言ってることで、“スパパンピンヨー”。…“スパパンピンヨー”!?って思って。めっちゃ好きなんです。

チア部(まる):あとは、いろんなスミコの表情を知れるところが好きです。顔洗うシーンは、すごい愛しいなぁ、と思って観ていました。

福岡さん:いい表情ですよね~!

はまださん:わかる~!

はまださん:スミコのそういう、ころころ変わるところが、私はけっこう好きです。なんか、そうだよなぁって思います。

チア部(まる):あと私は、衣装もすごい好きです。スミコの衣装がとくに印象的でした。着まわしているところがいいなと思いました。

福岡さん:いつもは衣装を自分たちでやってたんですけど、今回はじめて衣装さん(スタイリストの大場千夏さん)が入ってくださって。
スミコの服は、もともと私が持ってるものを使っていることが多いです。
はなも、もともとさつきちゃんが持ってる服を活かして使っていました。
その日にこの服、この日はあの日の下を、みたいな生活感のあるバリエーションを作ってくれるのが、すごい勉強になりました。

はまださん:すごく頼もしかった。
あと、スミコの衣装にキリンの服あったじゃないですか。あれ、その衣装さんが持ってきてくれたものなんですけど、実はさわこちゃんがすごいキリン大好きなんです。
でも衣装さんはそんなこと全然知らなかったみたいで、なのにキリン持ってきてて、うわぁ!これがプロか!!って。

福岡さん:本当に!

はまださん:すごいよね。

福岡さん:終わったあと、そのキリンの服を買い取りました!

チア部:部屋の中にもキリンのぬいぐるみが出てきますよね。

福岡さん:そうですね。もともと私が持っていたもので、キリンはなるべく置こうと。

チア部:あと、おにぎりのがま口の…。

福岡さん:可愛いですよね。あれ、中にシャケのストラップみたいなのが入ってるんですよ。

チア部(まる):そういう部屋にある一つひとつからも、服装からも、スミコが、割と近くのどこかで住んでいるんじゃないかなぁと思うくらいに、本当にそこに生活している感じがしました。

福岡さん:スミコのことがよくわかるからこそ、そういう生活の細かいことは考えるとかでもなくできていたような気がします。

はまださん:美術はかなり楽でした。モデルの場所で撮れたことも多かったし。あまり迷いなく美術も衣装も進められましたね。

チア部(まる):おこげのシーンも好きです。おこげは実際に福岡さんのご実家のネコさんですか?

福岡さん:そうです、実家のネコなんです。
私もこの映画を客観的に…全然客観的ではないと思うんですけど…観ると、やっぱりおこげのシーンに心を持っていかれるというか。おこげが好きだからだと思うんですけど(笑)。
おこげはけっこう気高いネコで、知らない人に攻撃的なので、あのシーンだけは私が撮影しました。
撮影の元彦さん(中村元彦さん)とさつきちゃんが実家まで来てくれたんですけど、2人を暑い車の中で1時間半くらい待たせてしまいながら撮りました(笑)。

はまださん:1時間半くらい待った!(笑)。
カメラのセットだけ元彦さんにしてもらって、カメラをさわこちゃんに預けて。
でも本当に、愛が伝わる映像ですよね。いいショットばかりだと思ってます。ネコ飼ってる人の目線って感じがします。実感がこもっているというか。

福岡さん:おこげを撮るの楽しかったです。全然ずっと撮ってられる。

チア部(まる):私も実家でネコを飼っているので、おこげのシーンを観ていて会いたくなりました。

はまださん:噂によると、『スミコ22』でのネコの出し方は、本当にネコを飼っている人にしかわからないネコの必要さが切実に現れているらしいですよ。
私はネコを飼ってないので共感してしまったら失礼だなと思って共感はしてないんですけど。ネコって、すごいらしいですね。


タイトルについて

チア部:タイトルはどうして『スミコ22』にしたのでしょうか?

福岡さん:22でも広いのかもしれないけど…劇中で23歳にもなるし。『スミコ』ってするには、スミコはこれからも変わるし、それまでとは違うし。
このときのスミコの映画だから、『スミコ22』にしました。

チア部:「スミコ」がカタカナなのもいいですよね。

はまださん:そういえばその理由聞いたことないかも。

福岡さん:1回もひらがなにしてないんですよね。なんて名前にしよう~ってノートに落書きしてたときからカタカナで。
すごい考えてたわけではないんですけど、自分との距離をとりたかったのかもしれないですね。
私「佐和子」っていうんですけど、ひらがなで「すみこ」だとちょっと近い気がして、カタカナで「スミコ」のほうが若干距離がとれるような気がしたような。

はまださん:なんかちょっとラジオネーム感あっていいよね。ラジオネームとか匿名感。本名じゃない感じがするかも。

スミコ(演:堀春菜さん)

チア部:『スミコ22』のロゴは、しどろもどリさんが書かれたんですか?

福岡さん:さつきちゃんが書きました。

はまださん:私がさわこちゃんの指示に従いながら書きました。可愛いですよね!どんな指示を受けたんだっけ?

福岡さん:けっこうやりとりをした気がするよね。

はまださん:明朝とかより、ゴシック。

福岡さん:太めのゴシックが良い、4:3のスタンダードサイズにぴったりくるのが良くて。「もうちょい横長」、「もうちょいでかい」みたいに細かい指示をしました。

はまださん:ほぼさわこちゃんが書いたと言っても過言ではない…(笑)。

福岡さん:いやいや、そんなことないです!

はまださん:チラシでは縦長になってるんですけど、本編のは正方形を意識して作った気がしますね。「2」は難しかったですけど。文字が1個ずつ独立する感じで書いたような記憶があるようなないような。


23歳の誕生日

チア部:『スミコ22』は映画の中で、スミコが22歳から23歳になる誕生日のあたりの期間が描かれていると思いますが、誕生日で終わらせるのではなく、誕生日のあとの2日まで描かれていますよね。それはどうしてその期間を描かれたのですか。

福岡さん:う~ん…すごく理由があったわけじゃないんですけど、私も最初誕生日で終わらせようと思っててかいてたら、…いや誕生日の次の日までだよなぁ、…いや次の次の日までだな、ってなっていったという感じで。
たぶん、かこうと思えばいつまででもかけちゃう映画だと思うんですけど…。
けっこう誕生日っていうのが、ひとつの起こった出来事とか、気持ちの面でポイントだったから…。ポイントで終わるよりは日常で終わりたいなって気持ちがあったので、次の次の日になったのかなぁと思います。

チア部:なるほど、ありがとうございます。
おふたりが22歳から23歳になる誕生日当日はどんな1日でしたか?何のケーキを食べた、とか、覚えていらっしゃいましたら教えていただきたいです。

福岡さん:なんか(日記に)書いてあるんですけど、具体的じゃない…。書いてあることだけ読むと、
「ちょっとぼんやり。去年までとは決定的に何かが違う気がする。スコーン。アイス。梅ジャム。暑いと心配。どうしてかちっとも眠れない。わさびの味の違い。映画を観たい。料理YouTubeを始めてみるスミコ。昔のした悪いこと、家族に言えないことについて考えてしまう」。
何したかはわかんない。

はまださん:でもところどころスミコの片鱗を感じた。

福岡さん:このときにはスミコのことを考えてました。その前の日は、メイクを落とさずに寝ちゃってますね。

スミコ(演:堀春菜さん)

はまださん:私は、全然思い出せない…。でも多分さわこちゃんと一緒にいた。

福岡さん:私が仕事してて、仕事帰りにピザを買って帰って…。

はまださん:あー!その時はさわこちゃんと住み始めてすぐぐらいで、私の誕生日を口実に人に集まってもらうみたいな思惑がけっこうあって…。
まだ引っ越したてで机とかなくて地べたにみんな座ってました。
私の部屋とさわこちゃんの部屋が扉で仕切られてて、わーって開けたらそれぞれ8畳くらいずつの部屋が16畳くらいになって。その境目くらいのところでみんなで円になっていろいろと、みたいな。

福岡さん:リンゴのケーキだった!リンゴのシュブースト。

はまださん:シュブーストってなに?

福岡さん:わかんない。でもあの日みんな泊まってくれなかったよね。

はまださん:そうだよね。
私の部屋は学生時代からけっこうたまり場になることが多かったんですけど。みんな深夜くらいに来てそのまま泊まって、次の日朝ご飯食べて帰るみたいな感じだったのが、ちょっとずつ就職とか卒業とか就活で、ちょっとした変化みたいなのは感じてたかなぁ。

福岡さん:ちょっと寂しかった気がする。


学生時代に影響を受けた作品とおすすめの作品

チア部:ここからは、おふたりご自身のことについてうかがいます。
おふたりが学生時代に観て影響を受けた作品や、今の学生に観てほしい作品はありますか?

福岡さん:難しい~~。

チア部:もしくは、この『スミコ22』がスミコが22歳から23歳の誕生日を迎える頃の物語ということで、おふたりが22~23歳の頃に観ていた作品を、もしも覚えていらっしゃったらうかがいたいです。

福岡さん:思いついた?さつきちゃん。

はまださん:思いついた?さわこちゃん。
じゃあ私からお話しします。私はもともと演劇をやっていて、演劇学科で演出の勉強をしていて、映画はさわこちゃんと出会ってから撮り始めたので、もともと全然映画は観なくて。撮り始めてから観始めたって感じでした。
それこそ22歳の頃、今泉力哉監督の『街の上で』(2020/今泉力哉監督)を観に行ったのは大きかったと思います。学校の授業が休講になって、暇になったな~と思ってぶらぶらしていたときに、そういえば『街の上で』がいいってさわこちゃんが言ってた気がする、と思い出して、当日に決めてふらっと行ったその時のミニシアター体験がけっこう良くて。
映画も面白いし劇場もいいし、ほう!ってなった頃からだんだん映画のことを好きになって、その後『ドライブ・マイ・カー』(2021/濱口竜介監督)とかを観て。
それまで、好きな映画はたくさんあるけど、映画よりは演劇のほうが好きだったんですけど、「映画」っていう媒体そのものがかっこいいものなのかもしれないという思いが加速して、今は演劇と同じくらい映画好きだなぁと思っています。
だからその22歳の頃がけっこう転換期だったかもしれないです。
おすすめって難しいですよね。『ロッキー・ホラー・ショー』(1975/ジム・シャーマン監督)が最近知った中では一番好きです。観てる間もどんどん意味わかんなくなるし、観終わっても意味わかんないなぁって思うんですけど、この人たち突き進んで作ってる!って感じがする映画です。

福岡さん:私はもともとは映画を観ることよりも書くこととか作ることのほうが好きで、映画大好き!って感じで大学入ったわけではなくて。大学では映画のシナリオ専攻で、ストーリーを中心に映像をイメージすることの方が多く。
でもコロナになって、映画を観る時間がたくさんあって、映画を観てたら、どんどん映画めっちゃいいなぁってなっていきました。
映画好きだなぁってなった大きな一つが、ゴダールの『女は女である』(1961/ジャン=リュック・ゴダール監督)。全然全部を理解してないと思うんですけど、ときめきだけがダイレクトに伝わってきて、画だけ観ててずっと楽しいみたいな。いいなぁ映画って!っていう印象を受けたのがその映画でしたね。
もう一つ、それもコロナの頃に観て、こういうことがやりたいんだよなぁって思ったのが、『東京上空いらっしゃいませ』(1990/相米慎二監督)。映画の行く末にすっごい納得しちゃうんですけど、頭で考えると納得できないんですよ。でも映画を観てるとものすごい納得しちゃう。それがすごいいいなぁと思って。その感覚をもらえるのがすごい嬉しい。1個1個の要素もシーンもすごい好きで、美術も可愛いし。なんか思い出すだけですごく嬉しい気持ちになる映画だなと思います。おすすめです。

チア部:ありがとうございます!


関西のお客さんへメッセージ

チア部:それでは最後に、関西の劇場で『スミコ22』をご覧になるお客さんにメッセージをお願いします!

福岡さん:私は関西にそこまで縁のある人生を送ってこなかったんですけど、こうして関西で映画を観ていただけること、とても嬉しいです。『スミコ22』は大阪アジアン映画祭が最初のお披露目の場で、そのときにすごい関西の方が笑いながら観てくださって、そのときの気持ちの嬉しさがずっと残っていて。8月にもシアターセブンで1週間限定上映してもらえてるんですけど、また大阪に戻ってこれてとても嬉しいので、ぜひ観に来てくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!

はまださん:私はいちおう生まれが大阪の高槻なんですけど、と言っても5歳くらいで引っ越して思い入れがめっちゃあるわけではないんですけど。この間大阪アジアン映画祭とかシアターセブンで上映してもらったときに行って、すっごい、大阪好きだっていう確信がありまして。人を受け入れる力がすごいなぁと思ってます。
『スミコ22』は共感してもいいししなくてもいい映画です。この映画を観て、嬉しいときは嬉しいと思ってほしいし、笑えるところでは笑ってほしいと思いつつ、観てくださる方の自分を崩さずに観ていただけたら嬉しいなと思います。
しどろもどリでコントとか撮っているときもそうなんですけど、基本的に画面の中にはツッコミ役がいないんです、ツッコみたい人は、なんでやねんと心の中でツッコんでほしいです。ぜひ観に来てください。よろしくお願いします!

オンラインインタビューの様子。
上段の左から、映画チア部大阪支部のまる、なつめ、
下段の左から、しどろもどリの福岡さん、はまださん。


⚪︎ 作品情報 ⚪︎

福岡佐和子とはまださつきによる映像制作ユニット「しどろもどリ」による新作劇映画『スミコ22(すみこにじゅうに)』。
主人公・静岡スミコ役に『ガンバレとかうるせぇ』『空(から)の味』『浜辺のゲーム』などの堀春菜を迎え、22歳の日常や葛藤をユーモラスに描いていく。
ささやかな日々の中に紛れ込んでいる”とびきり”を大事にした作品。

・あらすじ
友人とエビフライパーティーをしている静岡スミコはふと思う。自分の感覚がいつの間にかひどく曖昧なものになっている。何が猛烈に好きで何が耐え難く嫌いか、何を面白く思っていて何を喋りたいのか、そのどれをもちっとも感じられないまま人生を過ごしてしまっていると。
それからのスミコは自分と会話しながら日々を過ごす。

『スミコ22』(スタンダード/ステレオ/65分)
《キャスト》
堀春菜 はまださつき 松尾渉平 樹 安楽涼 梶川七海 イトウハルヒ 川本三吉 遠藤雄斗 瀬戸璃子 中川友香 安川まり 原恭士郎 黒住尚生 東宮綾音 木村知貴
工藤祐次郎
《スタッフ》
監督・脚本・編集:福岡佐和子 助監督:はまださつき 制作:原恭士郎 プロデューサー:髭野純 撮影・グレーディング:中村元彦 録音・整音:堀内萌絵子 録音助手:稲生遼 制作応援:藤咲千明 スタイリスト:大場千夏 スチール:新藤早代 宣伝デザイン:東かほり 音楽:ゴリラ祭ーズ 製作・配給:イハフィルムズ 企画・制作:しどろもどリ
(c)スミコ22


⚪︎ 今後の上映予定 ⚪︎

京都・出町座
 9/27(金) 17:00~
 9/28(土)〜10/3(木) 11:50~
 10/4(金)〜10/10(木) 17:55~
大阪・シアターセブン ※2日間限定アンコール上映!
 9/28(土)・9/29(日) 15:45~
神戸・元町映画館
 9/28(土)〜10/4(金) 19:20~
東京・CINEMA Chupki TABATA 10/1(火)〜

\京阪神上映後イベント情報!/
★9/27(金) 京都・出町座(17:00~の回)にて
ゴリラ祭ーズ 古賀礼人さんによるミニライブ+しどろもどリさん舞台挨拶
★9/28(土)・29(日) 京阪神舞台挨拶
出町座(11:50~の回)、シアターセブン(15:45~の回)、元町映画館(19:20~の回)にて
登壇者:堀春菜さん(主演)、松尾渉平さん(出演)、はまださつきさん(出演)、福岡佐和子さん(監督)
※詳細は、各劇場公式HP・SNSにて。

⬆️2024/09/22時点の情報です。


⚪︎ 編集後記(まる)

最後までお読みいただいたあなた、ありがとうございます。

—自分の感覚がいつの間にかひどく曖昧なものになっている。何が猛烈に好きで何が耐え難く嫌いか、何を面白く思っていて何を喋りたいのか、そのどれをもちっとも感じられないまま人生を過ごしてしまっていると。

この作品のあらすじの、この部分が、この作品を観る決め手でした。

自分の「好き」に自信が持てない、感情が薄くなってきている、興味だけが浅く広がっている気がする…。そんなときに、スミコに出会えて、スミコの日々を覗き見て、「私はたしかに、この映画が好きだ!!」と思えました。

上映後、席を立つとき、あぁ私いま、こころの底からたのしいんだな、と。口角が自然と上がっていることに気が付きました。

映画を観ることに少しハードルを感じるときでも、65分と観やすい長なのもポイントです✌🏻

また関西でも『スミコ22』が観られること、ほんとうにうれしいです。

時間の関係上、今回この記事で触れることのできなかったたくさんのシーン、そのすべてがとってもすてきなんです。それを創り上げてくださった、出演者さんやスタッフさん、ありがとうございます👏🏻(みなさんをご紹介できずすみません。)

ぜひ、劇場でご覧ください🦒

それではまた👋🏻

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