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『犬部!』篠原哲雄監督が語る、映画完成への道のり(インタビュー)

7月22日から全国ロードショーの映画『犬部!』。
動物の命についてとても考えさせられ、1人でも多くの方々に、この夏ぜひ映画館へ観に行ってほしい作品です!特に、動物が好きな人、ペットを飼いたい人、飼っている人は必見です。

『犬部!』の監督を務めた篠原哲雄監督に、この映画の制作についての話や、監督自身の映画についての考えや思いなどをお伺いしました。(聞き手:映画チア部大阪支部 かんな・ちこ)

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●なぜこの映画を制作しようと思ったのですか。

この映画のプロデューサーである近藤あゆみさんとは以前『ばぁちゃんロード』という映画を一緒に作成しました。それが完成した後に、「私は次に『犬部!』という映画をやろうと思ってるんですけど、一緒にやってくれませんか?」という依頼がありました。
当初それを聞いて、「犬か…」という風に思ってしまったんですよね(笑)。やっぱり、犬の映画っていうのは感動するような映画が多いじゃないですか。
だから、犬の映画を撮ることによって、感動作を作ってるんじゃないかって思われるのが嫌だったので最初は乗り気じゃなかったんです。
でも、原案になる小説を読んで、これは動物たちが幸せに暮らせるために奮闘する人間のドラマだって捉えられることがだんだんとできてきて…
そういう風になって初めて監督としては「いける」と思うわけですよ。

コロナであろうとなかろうとこの映画はつくっていましたが、撮影は2020年の7月から8月にかけて行ったので、コロナの影響はかなり受けました。
愛護センターは特に撮影に関してシビアでした。
「本当に撮影ができるのか?」というところまで至ったのですが、最終的には最善のことを尽くして撮影に望むこととなりました。手洗い・消毒は勿論のこと、PCR検査を受けたりロケ弁を撮影場所から離れた広い場所で無言で食べたりしました。
普通、映画の現場では衛生班というものはありません。でも、衛生班スタッフというのが生まれたんですね。
そして、宴会がなくなりました!(笑)

ただ、俳優の方たちと食事の場で交わるということがなかったので、それは残念でした。食事の場は楽しいだけでなく、そこで生まれる会話からなにか別の要素が引き出されることってあるんです。だからもし食事の機会が設けられていたらなにかが変わっていたかもしれないと思うことはあります。
この映画においては俳優と犬たちが交わる時間が増えたので、それは大事な局面だと思います。例えば、劇中に出てくる人嫌いの犬「ニコ」と林さんは時間をかけて信頼した関係性を築いていました。

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●現在、たくさんの俳優さんがいらっしゃいますが、この映画のメイン2人を林さんと中川さんにしたきっかけや決め手となった理由があれば教えてください。

この映画の話だと、22歳ぐらいの大学生とその16年後の38歳の両方の役をできる俳優じゃないといけないんです。それで、日本の俳優だと誰ができるか考えますよね。名前を色々挙げていくと、絞られていくんです。そうしていくと、ちょうど林くんが30歳で真ん中なんでバランスがいいな、と。
それに役者としてどんどん新しい面が出てきて新鮮である。あと、彼がかつて犬を飼っていて犬好きということもあってね。オファーをしたら是非やりたいと。それで、林くんに決まったんです。

次の柴崎くん役の候補を挙げるとき、中川くんは22歳なので(撮影当時)、流石に38歳役はできないだろうって思ってた。だけど、見ていた朝ドラ「なつぞら」で年上も演じている。林くんと同じように新境地を常に見つけ続けている姿勢も好感が持てる。
ただ、彼は当初スケジュールが全然無さそうだった。林くんと中川くんは偶然同じ事務所で、林くんは中川くんとだったらぜひやりたいって言ってくれました。だったらスケジュール調整してくれって話になって…(笑)。
最終的に林くんがスケジュールを調整してくれたおかげで2人の日程が合いました。だから、半ば偶然のようだけど、運命的でもあるんじゃないかとも思いますね。

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●篠原監督が学生時代に観て影響を受けた映画、いまの学生に観てほしい映画はありますか?

僕が学生時代に影響を受けた映画は『タクシードライバー』です。そこから映画に惹かれたんですね。
アメリカン・ニューシネマから入って、その後ゴダール、トリュフォーといったヌーヴェルヴァーグ、さらに遡って小津安二郎、溝口健二、黒澤明といった巨匠たちの作品をみていました。色々とみていくうちにみる映画の幅が広がっていった気がします。
その後映画の仕事に就きたいと思い、日本映画をたくさんみるようになりました。自身の学生時代である1980年代の日本映画に憧れを持つようになり、森田芳光監督、相米慎二監督、長谷川和彦監督の映画をよくみていました。

80年代後半になってくると、日本でも北野武、阪本順治、周防正行、といった新しいことをやりだす人たちがでてきて日本映画面白いじゃないか!と。
海外でも独特なスタイルのレオス・カラックスや、チャン・イーモウ、チェン・カイコー、クエンティン・タランティーノがでてきて、さらにみる映画の幅は広がっていきました。


●映画情報
『犬部!』https://inubu-movie.jp/
出演:林 遣都 中川大志 大原櫻子 浅香航大 / 田辺桃子 安藤玉恵 しゅはまはるみ 坂東龍汰 田中麗奈/酒向 芳 螢 雪次朗 岩松 了
監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
主題歌:「ライフスコール」Novelbright(UNIVERSAL SIGMA / ZEST)
配給:KADOKAWA

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