見出し画像

旅する紀行作家

「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの世界」

「Nomad」という言葉は映画「ノマドランド」以降、日常会話に定着したように思います。ブルース・チャトウィンは、ノマディズムを貫いた20世紀の紀行作家で、非常に名声高い方だと、この映画をきっかけに知りました。
彼の人生を少しばかり繙くと、

Charles Bruce Chatwin
1940年 英国サウス・ヨークシャー州シェフィールド生まれ
マールバラ・カレッジ卒業
サザビーズに美術鑑定士として約8年勤務
エジンバラ大学で考古学を専攻
1972年 サンデー・タイムズ紙の特派員に
「6カ月、パタゴニアに行ってきます」と電報を残して、旅立つ
1978年 『In Patagonia』刊行。ホーソーンデン賞、EMフォースター賞受賞
1980年 『The Viceroy of Ouidah 』刊行
1982年 『On The Black Hill』刊行
1987年 『 The Songlines 』刊行
1988年 『Utz』刊行
1989年 旅の途中、死去(享年48歳)

美術ディレクター、ジャーナリストとして活躍したあと、本当にしたかったこと、旅をしながら執筆する奔放な人生を選択したことがわかります。
この映画は、そんなチャトウィンの旅の足跡を、親交のあった映画監督ヴェルナー・ヘルツォークが辿るドキュメンタリー。チャトウィン本人の朗読音声、ゆかりのある人々による追想をはさみながら、チャトウィンが旅先で目にした光景が紡がれていきます。
それは、旅をしなければ辿り着かなかった「見慣れない光景」。
南米の洞窟に残される約1万年前の人間の手形もそうですが、非定住民族やペインティング民族の画像が現存することに、わたしはびっくりしました。そして、ホモサピエンスとして地球に誕生した頃から、人は歩いて旅をしていたということにも。

劇中でも触れますが、かなりのハンサムだったよう

チャトウィンは、おばあさんが所有していたブロントサウルスの皮を見て育ち、幼い頃から先史時代に関心を抱いて、神秘に憧れ、神秘的な地に自転車で赴いては、ひたすら神秘を感じて過ごしていたそうです。
比べるのもなんですが、おこずかいをもらったら、自転車で近所のファンシーショップに行くのが楽しみだったわたしなんぞとはわけがちがう。
そんなわたしにもわかったことは、人間の根底には「旅」という概念があるということ。
パタゴニアに行ってみたくなりました。

東京では岩波ホールにて7月29日まで上映。
チャトウィンについて、さらにくわしく知るには、ニコラス・シェイクスピア による伝記『ブルース・チャトウィン』がKADOKAWAから出ています。