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ママはファイター

映画「Bruised 打ちのめされても」

ちょっぴり憧れている大人の女性にハル・ベリーがいます。わたしの中では「チョコレート」「ソードフィッシュ」の頃の印象が濃いですが、ハルが監督デビューを果たしたのが2021年製作の本作です。
監督と同時にハルが主役の格闘家ジャッキー・ジャスティスを演じていて、冒頭のたるんだ体から、鍛えたプロの格闘家然とかわっていくストイックな姿がみられます(比べるのもなんですが、わたしはもはや腕立て伏せ1往復もできません)。

Bruisedのとおり、傷やアザだらけの体

内容は、シングルマザーの子育て、家庭内暴力、パニック障害、LGBTQと、ジャッキー一人にてんこ盛りすぎではありますが、脚本の流れ自体は極めて基本に忠実につくられていたので、少し分析してみました。

1:ジャッキーの日常
ジャッキーはお金持ちの家を清掃する仕事をしている。
オーナーの子どもに裸の写真を撮られ、カッとなってスマホを壊してしまい、仕事をやめる。(⇒ジャッキーはカッとなりやすい性格)
家では男が待っている。彼は格闘技のマネージャー兼恋人で、数年前に試合から逃げ出して引退したジャッキーに復帰してほしいとせがんでいる。
復帰したくないジャッキーは隠れて酒を飲み、アル中ぎみ。

2:転換点
マネージャーが「見るだけ」とジャッキーを地下格闘技に連れていく。
ここでも、カッとなったジャッキーは、選手を殴り倒してしまう。
それを見ていた有名スカウトから、自分のジムで再起するよう誘われる。マネージャーから断りを入れる。
家に帰ると、ジャッキーの母親が男の子マニーを連れて、待っていた。
この子はジャッキーが産んだ子で、離婚後育てていた元夫が死んだため、ジャッキーが引き取ることになる。マニーは父親が殺された現場を見たショックで失語症に陥っている。
(☆まずマニーがやってきて、そのあと地下格闘技に行く流れのほうがよかった気もします。また、マニーと父親についてはその後全く触れられないままなので疑問が残ります)

3:転換点のあとのジャッキーの変化(上昇)
子育てのため、お金が必要になったジャッキーは、スカウトに応じることにする。⇒動機の決定(子どもを育てること)
ジャッキーを他のジムに取られたマネージャーは気に入らず不満。
ジムには、禅に精通した女性トレーナー、ブッダカンがいて、ジャッキーはブッダカンと組んでトレイニングすることに。ジャッキーは厳しいトレイニングに奮闘する。マニーの好きな楽器を買い与えたり、学校の送り迎えをしたり、一緒に映画を見たり、ジャッキーは母親としてもがんばる。
最初は距離のあったブッダカンとも、お互いの事情がわかってからは、ブッダカンがマニーの面倒をみてくれたりする。
試合が決まる。⇒目的の決定(試合に勝つこと)

4:転換点のあとのジャッキーの変化(下降)
いろいろ気に入らないマネージャーから暴力をふるわれ、ジャッキーはマニーを守るため、家を出る。
母親の家に居候するが、かつてのトラウマ(子ども頃、母親の恋人などから暴力を受けていた)から母親とケンカになり、ブッダカンの家に居候する。
トレイニングが停滞して体が仕上がらないジャッキーはスカウトから最後通告を告げられる。
ジャッキーはプレッシャーからパニック障害をおこしてマニーを見失う。発見されたマニーは母親が引き取ることになり、ジャッキーはひとりぼっちになる。
ジャッキーはブッダカンに慰められるうちに関係を持ち、平常心を取り戻していく。
(☆トラウマがあるのに母親の元に身を寄せるのに違和感がありますが、ジャッキーが暴力をふるわれていたことを告白するために必要だった?)
⇒試合と、孤独との戦いをジャックはどのように乗り越えるか?

5:クライマックスの前の高まり(下降からの上昇)
ジャッキーはひたすらトレイニング。
体をしぼしこんで、減量をクリア。
ブッタカンには関係を続けられない意思を告白。ブッタカンは姿を消してしまう。
いよいよ試合当日。チャンピオン相手に奮闘するジャッキーは最終ラウンドまで持ち込む。
マニーはテレビで試合を見たがるが、見せてもらえず、母親だけが見る。
(☆マニーはテレビで試合を見て、ブッタカンはプロのトレーナーなわけだから、遠くからでも試合に付き添ったほうがよかったのではと思います)

6:クライマックス
最終ラウンド、倒れても起き上がり、打たれても打ち返し、奮闘するジャッキー。試合は互角。
ジャッキーは判定負けするものの、会場からはジャッキーの復帰を祝するジャッキーコールが起こる。

7:しめくくり、これからの日常
ジャッキーは戻ってきたブッタカンと和解する。
マニーは初めて、言葉を発する。
ジャッキーは負けたけれど、今後もファイターとして活躍していく。

以上、長くなってしまいましたが、映画はだいたい7つか8つのシークエンスに分けられ、分解するのも楽しいです……。なお、どうも企画当初は違う監督で、ブレイク・ライブリー主演で検討されていたようです。お蔵入りになるのをハルが引き取ったのでしょうか。脚本はミシェル・ローゼンファーブという女性ライターが執筆しています。

ハル・ベリーはほかにも、SF映画「ムーンフォール」がAmazon primeで現在配信中です。