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映画『エル プラネタ』をみんなで観よう!感想まとめ

この記事は2022/03/04 21:00-22:00にミヤラジ(FM77.3)放送されたWe are Movie Lovers.の内容について書かれたものです。

この日の放送では、ヒカリ座で公開中の映画『エル プラネタ』の感想をみんなで集めてワイワイしよう、ということになり、番組リスナーの方やこれまでのゲストの方からコメントを集めました。

この記事では皆様からお寄せいただいたコメントをまとめています。

うさぎや株式会社 DELIGHT 産形一輝さん

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お洒落純度100%映画。全編モノクロ、劇中のファッション、場面切り替えのエフェクト、字幕のフォントや色。徹底して"お洒落"を貫いている。その一方で内容は社会派。ミレニアル世代期待の新人監督に相応しい映画だと感じた。SNSに主軸を置いた親子の物語。実社会では借金まみれで家賃が払えず、家から強制退去間近。しかし、外出する際にはハイブランドや毛皮のコートで完全武装して街へ繰り出し、充実した生活を装う2人。なんとも滑稽ではあるが実際に現代ならそういう人もいるのかもしれない。SNSが発展したからこその"今"を風刺している。終わり方も皮肉なのか、それともあれが正解なのか、観る人によって受け取り方が異なるラストも良かった。

弁護士 山口早紀さん

この映画で表現されていたように生活に困窮している者の世界は、救いがなくモノクロで色を失っているのかもしれない。
人は、生活に困窮すると、通常であれば行わないであろう犯罪に手を出してしまうことがある。窃盗、詐欺、強盗などが典型である。
生活困窮を理由とする犯罪を行ってしまった者の弁護をすることがあるが、果たしてそれらの者を罰すればそれで済むのか、社会福祉を拡充しなければならないのではないかと常々感じていることを改めて感じさせる映画であった。生活困窮から犯罪に手を出してしまうということは、今仕事があったとしてもひとたび働けなくなれば誰にでも起こり得ることである。
罰すれば済むと感じている節のある裁判官や検察官にぜひ観ていただきたい。

建築家 ジャズプレイヤー 武井貴志さん

お洒落な風景と日常的な貧困。街の中に隣接する、富裕と貧困。
携帯あり毛皮のコートありクッキーありレストランでの食事あり、でも、暖房なしwifi無し食べ物無し、ついには住まい無し。
淡々と日々を映しているけど、日常の隣にある貧困の現実に気づいた時に、突然この現実が違って見えてしまう衝撃的な映画。

写真家 野々村麻帆さん

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若き監督の精一杯さが映画にも溢れ出ていました。気づけばSNSを開き人の良い人生を目にすることが増え、自己肯定感が低くなる一方で相手には無理をしてでも飾ったいい自分だけを知られていたい。こうやってSNS上はきらびやかなもので成り立っているんだなというのが伝わってくる映画でした。まるで着飾っている自分を見ているみたいで恥ずかしかったです。

カマクリ 岩田真菜さん

今年初めて観た映画でした。全編モノクロで、主人公レオのファッションから使用されているフォントまでお洒落であふれていて、世界観にどっぷり浸かりながら楽しめました!主人公とその母親は食事がお菓子だけになったり、電気が止められたりするほどにお金がないのに全然必死さがなくて、観ているこちらが不安になりましたが、母娘ともにお洒落という自分の大事なものは絶対に手放さないという意思を感じて、ある意味真っ直ぐだなと思いました。まあ犯罪はダメですけどね笑 
また、時折映る街の荒れた様子や年寄りばかりの様子が少し不気味で印象的でした。

法哲学者 吉良貴之さん

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・始まり、白黒画面にふっと黄色の文字が浮かび上がって、なんかいいなと思った。
・妙に凝った構図とか、変な会話とか、よくわからないジャンプカットとか、ヌーヴェルヴァーグから入ってユスターシュやカラックスにやられたんですねーぐらいに思った。いまどきこの映像はちょっときついな、と思うけど、ヒロインの魅力、特に眼力で持たせた感じ。物憂げな表情がとてもいい。部屋着なのに背中の空いたドレス?とかも変でいい。
・出てくる男がみんなクズい。ちょっといい関係になりかけた相手も、そんなかっこいいかね?と思う。ああいうのに惹かれるぐらいに自暴自棄になってるということか。
・恋愛っぽいことでスカッとさせるのは意識的に避けてるというか。『ポンヌフの恋人』と同じ音楽を使ったり、橋のところ?で一緒にタバコ吸ったりでそれっぽい流れを作っておきながら、あれ?と肩透かしする感じ。
・性愛とはまた別のところの連帯映画というか。メインになるのはダメな母娘関係だけど、画面のいろんなところに、若い異性愛カップルとは異なる関係の人たちが出てきますね。手つないでゆっくり歩いてる老夫婦とか、自転車のような変な乳母車を押しているお父さんとか。そういうところへの眼差しがすてき。
・背景にある貧困とか、SNS時代の見栄とか、そのへんの社会派っぽい要素もあるけど、まあそういうのはいいんじゃないか。

元番組ナビゲータ なまいとしあきさん

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 公開当時のスペインの若年失業率は実に40%。本当の希望なんて残っていない世界で「貧しくないフリ」をし続ける娘と母の奮闘劇。スペイン北部の海街をジャームッシュ・ライクに切り取った映像が小気味よく、監督・主演のアマリア・ウルマンのチャーミングさも相まって、とても心地よく鑑賞できる。
 一方で、妙にソワソワしてしまうのは、親子に降り掛かる災厄が決して他人事ではなく「明日は我が身」と思えてしまうからか。笑えるような、全然笑えないような、長編映画デビュー作にしてこの絶妙な匙加減。ウルマン監督の次回作に期待せずにはいられない。
 また、作中に描かれる「親子だから仕方ない」という感情を演じる2人が、実の親子である点に驚く。実際には存在しないであろう親子の関係性を見事に演じ切ったお母さんアレ・ウルマンさんに最優秀助演女優賞を差し上げたい。
 2022年もまだ2ヶ月が過ぎたばかりですが、今年の「母と娘で観るべき映画」ベストは「エルプラネタ」で間違いなしです。

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