子供に怒っても不毛なこと
「パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学」
子育てをしていると、
「もう出かけるのになんで今遊び始めるのよ!」
「前にも同じ失敗したのに、またこぼした!」
なんて思うことって、山ほどあると思います。
今回は、そんな場面に関して、この本⬇︎
を読んで思ったことあるので、記録したいと思います。
この本は、脳科学者である池谷裕二さんが、お子さんが生まれてから4歳頃までの生活の中でお子様の様子を見ながら感じたこと綴った育児エッセイのような本です。
ただし、普通の育児エッセイではなく、子供の成長の様子を見ながら脳の発達や特性に絡めて観察、分析している内容になっていて、それが実に面白いです。
「未来を見据えて行動する」機能は後天的
この本に何度も出てくるのは、「未来を予測する」「未来を見据える」というような未来のことを考える行為は、脳としてはとても高度な技であるということ。
娘さんの様子を見て、
「お、先のことを見据えて物事を考えられるようになったんだな」
「ここで肯定できるってことは、この先に何が起こるのか予測できたんだな」
と言った感想とともに、それが脳科学的にどれくらいすごいことか丁寧に説明されています。
引用ではなく、読んだ後印象に残っている内容で正確ではないと思いますが、子供は幼いうちは、過去も未来もなく、一瞬一瞬で目の前のことだけで生きているのが、成長していくに連れて、過去から今を分析できたり、まだ起きていない未知のことを想定した動きができるようになるそうです。
つまり、「未来のことを考える」というのは最初からできることではないわけです。
子供は今一瞬の好奇心だけで行動している
逆にいうと、子供は、過去のことも未来のことを頭になく、今一瞬の世界だけで動いているんだと思います。
例えば、◯時に家を出るという未来のために今しなければいけないことを判断できず、今目の前の楽しいことしか頭にないが故に、家を出る前なのにお出かけの準備もせず遊び始めるんですね。
今コップを倒したらどうなるか、今ドロドロの水たまりでびしゃびしゃしたらどうなるか、下り坂道を走ったらどうなるか、その先のことがわからないから、今一瞬の感覚や好奇心だけで行動してしまう。
なるほどと思いませんか?
そう思ったら、我が子のイラっとする行動も、理解できる気がしました。
頭の中にある時間軸の幅が全然違う
大人は、無意識に、未来を予測し、未来を見据えて、行動しています。
当たり前のように自分が思っていた「今こうすべき」「これはしないべき」。
掘り下げて考えてみると、過去の教訓や、複雑な事情、そして未来を見据えた上での「べき」だったりします。
自分がそういうことを考えた上でなにかをしているというのは忘れてしまっているくらいです。
このように、大人と子供では、頭の中にある時間軸の幅が全然違うんですね。
子供は、過去・現在・未来の時間軸の中でも現在の1秒くらいだけの幅で生きている。
大人は、過去も現在も未来も含めて、もっと、何分、何時間、何日、何年分の幅を頭の中で考えながら行動している。
この違いはとても大きいと思います。
だから大人からしたら「わかってるはずなのになんで!」「何度も言っているのに!」と思っていても、子供としては「できなくて当然」だったりするのでしょう。
怒っても意味がないことで怒っている?
にも関わらず、子供に
「もう出かけるのになんで今遊び始めるのよ!」
「前にも同じ失敗したのに、またこぼした!」
と怒ってしまうのは、
例えば、鳥のように飛べる鳥人間(※架空の生き物です)に、「飛べばすぐに来れるのになんで何度読んでもすぐに来ないのよ!どんだけ時間かかるの!」なんて怒られるようなものかもしれません。
「いやそんなこと怒られても、そんな飛べないのよ・・」って思いますよね。
あるいは、馬並みの視野をもつ馬人間(※架空の生き物です)に「後ろからボールが飛んできてるんだから避けなよ!じゃないとぶつかるの当たり前じゃん!バカじゃないの!」と怒られたら?
「いや後ろは見えないよ・・」ですよね。
そりゃ見えてたら避けられるでしょうけど、見えないし・・っていう。
子供も、そうなのかもしれません。
未来のことを予測すること、未来を見据えて今の行動を決めることは、頭の中にある時間の量がもっと多くないとできないこと。
まだその機能が備わっていないことに対して怒っているだけ、だとしたら、なんと不毛なことだろうと思いませんか?
脳にまだ備わっていない高度な機能を知ったおかげで
子供は、「わかっているのにできない」のではなく、「今一瞬しか見えていないからできない」「未来を予測する機能がまだ脳に備わっていないからできない」ということがたくさんあると思います。
子供が、今の判断能力の中であれば当然そうしているだろうということや、今の判断能力の中であれば当然できないだろうということを怒ったりしても、子供に伝わらなくて当然です。
そして、そういうコミュニケーションばかりしていると、子供自身の自尊心も傷つくし、親子の信頼関係にヒビが入ることもあるだろうということも、(大人なので!)予測がつきます。
そう考えて以来、怒る機会が減ったように思います。
ママ友に「まりこさんはあまり子供に怒らないね」と言われることがあるのですが、それはこれを知っているおかげかなと。
目についた子供の言動にイラっとしても、ちょっと立ち止まって、「あれ?でも未来のことを考えられないとそうなるか?」と考えることができます。
そして、ここで怒るのはひょっとすると「空を飛んでくればすぐ来れるだろ」と思われることと同じかも?できなくて当然のことなのかも?と考えることができれば、子供の言動を受け入れやすくなります。
おしまい。
池谷祐二さんの本は、こちらも面白かった!