空想日記2/14

2人目の独白

初めて見たときは顔が見えない子だなって思った。前髪で隠れてとかそういうんじゃなくて、もっとこう、見えてるはずなのに見通せないっていうか。なんていうか、うん、そういう印象だった。

綺麗な子だったから男は寄ってきた。ただ無愛想だから、離れるお客さんも多かった。時々、異常なくらい執着する人もいたけど、そういう人ってたまにいるからね、気にする程じゃなかった。

でも、あの日を境にあの子は変わった。

あの、雨の日。

いつもは遅刻なんてしないあの子が連絡もなく遅れてきた。しかもびしょ濡れで。「どうしたの?」とか「大丈夫?」とか言葉をかけられながら、あの子はただ立っていた。そのとき初めてあの子の顔が見えた。ううん、違う、そのとき初めて、私あの子に見られた・・・・んだと思う。

なぜだか分からないけど吐き出しそうになった。私の内側にあるもの全部。怖くて、いてもたってもいられなかったけど、目が離せなかった。

それからだった、あの子が変わったのは。ううん、あの子っていうより周りが変わったのかも。あの子の周りの男の顔が見えなくなったの。ノイズが走ったみたいにボヤけるようになった。そうなった人は、もうあの子から離れない。店長は売上が伸びて喜んでたけど、私は正直怖かった。怖かった?分からない。でも、あの日の事だけはずっと覚えてた。

夜の街では、相も変わらずネオンが輝いていた。照らされた私は、ただ落ちた影を見つめていた。

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