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文学サークル課題本リスト(2022)

文学サークル「コルク佐渡島の文学を語ろう」でこれまで取り上げてきた課題本の一覧です。
どれも「読み応えある」作品ばかり。
気になるものがあったらぜひ読んでみてください。そして作品についてだれかと語り合いたくなったら、文学サークルへ遊びに来てくださいね!

2020年~2021年

2020年2月に第1回を開催してから、毎月1冊、古今東西さまざまな本をピックアップしてきました。
いま改めて読み直したい本もたくさん。
私が一番印象に残っているのは『スローターハウス5』(カートボネガット)でした。

2022年

第23回(2022年1月)
『錦繍』(宮本輝)

「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」
という個人的にドラマチックすぎる書き出しではじまる純愛小説。
宮本輝の作品は大学生時代によく読んでいたので、そのころを思い出してちょっと胸が痛くなりました。
一方で、読み直しの楽しさは、昔読んだ時には気づかなかったことに気づけること。今回は、現在によって過去は変わるというメッセージに気づけたことが一番の収穫で、『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の影響が大きいです。

第24回(2022年2月)
『ガラスの街』(ポールオースター)

佐渡島さんが「作家の中で男性としてのかっこよさがピカ一」と言っていたポールオースター。さまざまなインタビュー動画を見て私もすっかりファンになりました!声、ふるまいすべてダンディ、、、
『ガラスの街』は、カートボネガットや村上春樹が書くファンタジーと現実のちょうど間みたいな感じで、読んでいる途中は「ここはどこだろう、、、」と少し不安になるのだけど、読了感はすごく静かな気持ちになりました。


第25回(2022年3月)
『ワーニャ伯父さん』(チェーホフ)

映画「ドライブマイカー」を絶賛した佐渡島さんが、映画で引用されいてるチェーホフ作品をみんなで読もう!と課題本に。
読書会では、映画のシーンと同じように「声に出して読み上げて味わってみる」もしたりして、いつもと違う読書体験ができてとても楽しかった。
シェイクスピア作品は読み上げたほうがセリフの美しさが際立つ、と聞いたことがありますが、たしかに黙読に比べて、朗読は一文をゆっくり読むことになり、一つ一つの言葉に対して意識がしっかり向くように感じます。
たまにはこんなじっくり読書もいいなぁと思いました。

第26&27回(2022年4月&5月)
『不滅』(ミランクンデラ)

ゴールデンウィークを挟む4-5月は、2カ月かけて長編小説に挑戦してみよう!とミランクンデラの『不滅』が課題本に。
個人的にはけっこうしんどかった。。。
時間軸が一方向でなかったり、現実と虚構の差があいまいだったり、世界観に入り込めずにちょっと辛かった笑。
また1年後くらいに読み直してみたい1冊になりました。

第28回(2022年6月)
『愛するということ』(エーリッヒフロム)

ミランクンデラの『不滅』が愛をテーマにしていたので、そのつながりでピックアップされたのがエーリッヒフロムの『愛するということ』でした。
私は以前にも読んだことがあり再読でしたが、初めて読むような新鮮な気持ちで楽しみました。以前はなんとも思わなかったフロムの提言に対して、疑問を感じることも何箇所かあり、自分の内面の変化に気づけたのが大きい。
特に、結婚や男女の役割分担のような考え方は、いまの時代にはあまりフィットしなそうで、参加メンバーからもコメントが多く出ていたのもおもしろかった。
「べき論」は時代によって変わるものだから、自分がいまとらえているべき論にもあまり振り回されないようにしたい。

第29回(2022年7月)
『母の遺産』(水村美苗)

妻と夫、娘と母親、の愛を描いた私小説のような作品。
家族って不思議な関係だなと思う。
特に、同性の親子関係は対立になりやすい気がするのはどうしてなんだろう。そして、「息子と父親」の関係に比べて、どうして「娘と母親」の関係はこんなに湿度が高いのか。。。
自分と母親との関係と同じではないものの、ところどころには共感する部分もあたし、読書会の女性メンバーからは自身と母親との関係に照らし合わせたコメントもたくさん聞けたのがとても楽しかった。

第30回(2022年8月)
『今夜、すべてのバーで』(中島らも)

またもや大学生時代に読んだ作品を再読する機会。
アル中になった主人公が自分のコンプレックスや知人の死、愛情の気づきを経て、中毒と戦う私小説。
依存症に悩まされる作家が多いのはなぜなんだろう、と思っていたところ、中島らも(小説家としてではないけれど)の孤独感や焦燥感を知って納得。
特に、薬物依存症に比べて、アルコール依存症は、その入手のしやすさから一度は治ったように見えてもすぐに元の依存状態に戻ってしまいやすい。主人公がせっかくよくなりかけたのに、病院の目の前にある居酒屋に入り、わずか数十分でもとの依存症状態に引き戻されるシーンは恐怖も感じた。

第31回(2022年9月)
『あちらにいる鬼』(井上荒野)

10月の映画公開を前に原作を読もう、ということで課題本に。
瀬戸内寂聴と井上光晴の不倫関係をもとに、井上の娘(井上荒野)が描くノンフィクションのようなフィクション。
井上光晴が妻にも不倫相手にもふわふわと調子のいい態度をとる様子にいらいらしていたけど、自分の文学教室の生徒にまで手を出して修羅場になる様子にはコントのようで笑ってしまった。
井上光晴のドキュメンタリー映画も見たのだが、それもかなり面白いのでぜひ一緒に見てほしい。

第32回(2022年10月)
『ある男』(平野啓一郎)

10月に映画公開するタイミングに合わせて読書会を開催。
『ある男』は平野啓一郎の作品のなかでももっとも好きな小説のひとつで、これをみんなと語り合えるのがとても楽しかった。
平野啓一郎さんのTEDトークで、「誰かを愛するとは、その人の一緒にいる自分が好きということで、愛する人を失った悲しみとは、二度とその分人の自分でいられないという悲しさでもある」というニュアンスのことをおっしゃっていて、「愛するとは」について考えていた私にとっては、暗闇を抜ける大きなヒントになった。

第33回(2022年11月)
『あすなろ坂』(里中満智子)

文学サークル初の漫画回。
里中満智子さんの作品は初めて読んだのだけど、時代描写が忠実で、その当時の男女の考え方や社会背景をすごく細かく描いているのに、それでいて非常に作品数が多く、取材力や物語の構成力に佐渡島さんが感心していた。
読書会には漫画家のこしのりょうさんも参加してくれて、同じ漫画家目線から漫画家の苦労や楽しさをシェアしながら、作品について語ることができてとても貴重な体験だった。

第34回(2022年12月)
『ティファニーで朝食を』(トルーマンカポーティ)

2022年を締めくくる1冊はトルーマンカポーティの名作『ティファニーで朝食を』。映画では「恋愛物語」として認識していたが、本作を読んだらそんな軽い(失礼)恋愛物語ではなく、貧しい幼少期を過ごした娼婦のポリーが男性をある種踏み台にして、自分の生き方を捜し求めていく物語だった。ラストシーンでもハッピーエンドかどうか分からない、でも彼女には幸せになっていてほしいと誰もが願う切ない物語。
カポーティの自伝的映画も併せてみたので、ポリーにカポーティを重ねてしまい、ますます切なくなった。


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