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映画『声もなく』レビュー

(文:P子)
1月22日公開の「声もなく」を観てきました。
余韻が1週間経っても消えない!

スクリーンショット 2022-02-17 10.56.19


▼予告


▼あらすじ
貧しさゆえ、犯罪組織からの下請け仕事である死体処理で生計を立てる口のきけない青年テインと片足を引きずる相棒のチャンボクは、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを、1日だけ預かることになる。トラブルが重なり、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まるが、チョヒの親から身代金が支払われる気配はなく…出会うはずのなかった者たちの巡り合わせが、韓国社会で生きる声なき人間たちの孤独を浮き彫りにする。
(公式 https://koemonaku.com/より)


テインは貧しくて教育もろくに受けられず、卵売りと死体処理の仕事で生計を立てています。口も聞けず、表情も暗いので、雇い主に反感を買うこともあるんですが、育ててくれた相棒のチャンボクが彼をフォローしています。
(チャンボクは憎めない人柄といい、コミカルなシーンが多いです。)
雇い主から預かった子供が、身代金目的で誘拐された少女チョヒ。
テインの家で1日だけ預かるはずだったのに次々と起こるトラブルで長期化していきます。
このチョヒはいいところの娘という感じですごく賢いんです。
テインにはムンジュという幼い妹がいるんですが、チョヒが荒れていた家の中の片付け方やマナーを教えたりして、ムンジュが懐くようになり、徐々に孤独だったテインも心を開いていき、家族のような生活を始めます。この奇妙な、でも穏やかな生活シーンから一転、後半はハラハラ感と胸が締め付けられる切なさとあって、本当に見事な展開です。

テインを演じるのはユ・アイン。
セリフがないのに心情の機微を感じ存在感ある演技で素晴らしかったです。チョヒ役のムン・スンアは。演技とは思えないくらい、セリフのない複雑な感情を表情で体現していて、その能力が恐ろしいほどでした。
ラストシーンの彼女の行動にはすごく考えさせられるものがあります。

監督・脚本はホン・ウィジョン。本作でアジア・フィルム・アワードで新人監督賞に輝いたそうです。テーマ性、キャラクター描写といい、今後の作品も注目していきたいなと感じました。
あと、この映画は撮影も素晴らしくて。
キービジュアルに使われている夕景をはじめ、美しい空が印象的。
アジア圏ならではのロケーションの色合いと空や緑のコントラストが素敵だし、あとオープニングのだんだんズームバックしていって青年とチャンボクが着替えてるシーンなど、カメラワークがよかったです。
そして、テインが憧れを抱くスーツ、ラジカセ、ポラ、壁の文字、さりげない小物もきちんと演出されシーンに効いていました。

終始物悲しさがただようのだけど
サスペンス感もあり、コミカルな要素もあり、100分もない長さの中に、
絶妙なバランスでギュッと詰め込まれた良作です。
できれば是非劇場で!


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