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細石刃 micro blade


定義

「石刃」とは"長さが幅の2倍以上の剥片"をいう。このうち、"幅1センチメートル以内の極小の石刃"を「細石刃」という(図1)。細石刃の製作に用いられる素材を「細石刃石核(マイクロ・ブレード・コア)」という(図2)。
※なお、研究者によって若干定義は異なる。

細石刃
図1  北海道置戸町 置戸安住遺跡出土
細石刃石核
図2 世田谷区 堂ヶ谷戸遺跡出土

製作技術

 細石刃を除く狭義の石刃は、石核への直接打撃や間接打撃によって作出されるのに対して、細石刃は「押圧剥離(プレッシャーフレーキング)」によって製作される特徴がある。
 押圧剥離は細石刃を用いる集団に特有の技術であるため、分類上、定量的な分類よりも技術的な分類が優先される。
 押圧剥離によって剥がれた面(腹面)には、剥離開始部分に膨らみを持ち、剥離具との設置面が小さいことから打点が明確であるという特徴をもつ(図3)。このことから押圧剥離による石刃かどうかは容易に見分けることができる。

細石刃の腹面
図3 北海道置戸町 置戸安住遺跡出土

機能性

 鋭い縁辺は対象物への貫入力を高める効果が期待できる。また、細石刃の作出は、小さく、両サイドが平行する規格性の高い剥片を量産することに特化している。柄に装着し、刃こぼれした場合に反転したり、取り替えたりする替え刃としての機能性が高い。実際に、細石刃の縁辺に沿った線状のキズ痕が顕微鏡によって観察された事例が報告されている。

使用方法

 ユーラシアなどでは、細石刃が木や骨の柄(シャフト)に装着された植刃器が発見されている。国内の博物館では、植刃器として槍状の柄に細石刃を装着するような想定図や復元展示が多くなされている(図4)。出土遺物には狩猟用と考えられる槍以外にも、小刀のような柄の短いものや、鎌のように湾曲した柄に細石刃が装着された植刃器も発見されているため(図5)、実際にはさまざまな使用法があったと考えられる。

図4 東京都埋蔵文化財センター展示室
着柄された細石刃と骨製の柄
図5 ザーヴィ・チェミ・シャニダール
遺跡


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