理論考古学
ここでは、安斎正人2004『理論考古学入門』柏書房の概要を取り上げる。
理論考古学とは
安斎正人氏は「理論考古学とは、これまでの思考の枠組みに縛られない、まったく"新しい考古学"創造の可能性を探るための、考古学における〈理論と実践の関係〉についての理論的考察である"。」という。
理論考古学の歩み
理論考古学の画期となったのは、1960〜70年代のアメリカ考古学の生態学的方法をとるルイス・ビンフォードとその一党と、イギリス考古学の情報論的方法をとるデイヴィッド・クラークと若手研究者による「ニューアーケオロジー」運動とその後のプロセス考古学の隆盛にあった。1980年代のイギリス考古学者ホダー の批判ー文化なきプロセス、個人なき社会システム、歴史なき適応変化、主体なき科学に対する批判ーであるポストプロセス考古学の台頭は、西洋社会における危機感の増大を反映していた〈ポストモダン〉運動を背景としていた。
安斎正人氏の展望
安斎はこのような2者の台頭を考古学におけるモノのからコトへの転換期と捉え、このような時代の流れの中で、未来の考古学研究の理論のあり方を思考する理論考古学は、主要な研究分野として確立されるべきであるという展望を抱いている。
以下、理論考古学を学史的な観点を細かく理解するための文献として本書で紹介しているものをリストアップした。
理論考古学関連書籍
・『理論考古学の実践』安斎正人 同成社
・『理論考古学ーモノからコトへー』安斎正人 柏書房
・『考古学的思考の歴史』ブルース G・トリッガー 同成社
・『アメリカ考古学史』ウィリー.サブロフ 学生社
・『科学的説明の諸問題』カール・ヘンペル 岩波書店
・『自然科学の哲学』カール・ヘンペル
・『Working at Archaeology』
LewisR.Binford
・『Debating Archaeology』Lewis R.Binford
・『科学的思考の考古学』金森 修
・『考古学の変革者ーゴードン・チャイルドの生涯ー』サリーグリーン 岩波書店
・マシュー・ジョンソン 2017『入門 考古学の理論』
・『ゴードン・チャイルドー考古学における革命ー』ブルース・トリガー
・『認知考古学の理論と実践的研究 : 九州における縄文から弥生への社会・文化変化のプロセス』松本直子
・『理論にみる現代考古学』(Ⅳ章「対話」) ホダー.プルーセル
・『先史考古学論集』第九集
・『物質文化を読み取る』クリストファー・ティリー(先鋭なポストプロセス考古学者の論文例)
ポストプロセス考古学の思想を学ぶための文献
・内田樹『寝ながら学べる構造主義』
・フェルデナン・ド・ソシュール『一般言語学講義』
・高橋昌一郎『科学哲学のすすめ』
・勅使河原『日本考古学の歩み』
(「伝統的マルクス主義者」の視点からみた「正しい認識を持った人たちおよびその成果」を顕彰した学史)
・イアン・ホダー著
『ヨーロッパにおける考古学理論ー最近の三〇年ー』1991
『考古学における理論と実践』1992
『理論にみる現代考古学』1996
『考古学の進行過程』1999
『今日の考古理論』2001
引用文献(大学院生は見ておきたい考古学理論)
・ジョンソン 1999
・アッコウ 1995
・ホダー 1991
・シャンクスとティリー 1987
・シファー 1995
・スキボとフォーカーとニールセン 1995
・ティリー1994
・トーマス 1996
プロセス考古学の論文例
・マイケル・シファー『行動考古学』『考古記録の形成過程』
ポスト・プロセス考古学の論文例
・スティーヴン・マイズン『心の先史時代』
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