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しめ飾りを作った正月を振り返る

もう彼岸も過ぎたわけだが

タイトルの通り振り返ろうと思う。
今年の正月に飾ったしめ飾りは初めて自分で作ってみたものだった。と言うのも中川政七商店(奈良県で大変有名な雑貨屋さん)の通販サイトで売られているしめ飾りを師走にさらりと見かけ、それがとても気に入ったため買わずに自分で作ってみようと思ったからだった。同じものがなかったが以下のようなものだ。こちら


そこで私は100円ショップやスーパーで売っている様々なしめ飾りの中から全く装飾のついていないしめ飾り(捻っただけ)を2つ購入し自宅に持って帰ってきた。


幼い頃の運動会の記憶

しめ飾りを自分で作ろうと思って、そんなにすぐ出来るもん?と思われそうだが、自分に自信があったその理由として、私の頭の中では幼い頃の地域の運動会の様子が思い出されていた。

なわない競争ご存知だろうか
以下の動画をまず見てみて欲しい。



上記の動画は秋田県のものではないが田舎の方では地域の運動会等でなわない競争というものが行われる。「縄を編む」と言うことを多分方言で「縄をなう=なわない」と呼んでいると思われ(5段活用でいくとすると、「なう」「ない」「なえば」「なう時」「なえ」という具合だろうか)たのだが、「綯う(なう)」という漢字が存在した。びっくりだ。

綯う [動ワ五(ハ四)]糸やひもなどを1本により合わせる。あざなう。よる。「縄を―・う」
goo辞典より

そのなわない競争。運動会の場合なら、1人の持ち時間を例えば1分とするならば1分編んで次の人にバトンタッチするというリレー方式で、最終的に1番長く縄を綯うことができたチームが勝ちというゲームである。これがものすごく盛り上がる。米処の方々は秋に稲を刈った後、米を取り除いた部分(脱穀後)の干し草を牛に食べさせたり昔だったら草履を作ったりするために取っておいた。
それをなわない競争のときにはその干し草を使って手のひらでこよりを拠る。2本のこよりを同時に手のひらで作りながら、その2本を絡ませてロープ状にすると言うものなのだが、玄人の皆様方のスピードたるやものすごい速さで、ワラを継ぎ足しロープを作り上げていくのである
その映像が頭にこびりついているためもともと布などを”綯って”紐を作ったりしたことのある私はしめ飾りも作れるなと思って実践してみたのだった。

しめ飾りを作ってみた


普段締めかざりワークショップというものも存在するが、それは大抵既に輪っかの部分があり、それに対する飾り付け部門をいろんな好みのパーツをつけるものである。
それを例えばだが輪っかから作り始めるわけだ。なかなか不具合も発生する。編み始めは固定しなければいけなかったが、既に出来上がった買ってきたしめ飾りは跡がついていてそのまま拠るとパラパラとワラのクズが出てきてしまった。それでは形も崩れやすい上に散らかり放題でなんとも困ったものである。
以下は解した直後👇


そのためボールに水を張り用意し、癖のついた干し草を水に浸して湿らせて一旦「本来の藁感覚」を取り戻してもらう必要があった。
そうして加工しやすいようにし、その上で改めて綯ってみた。

ついぞ(少しだけ短めの継ぎ足した部分のワラがぴょんぴょん出るくらいで)ほぼ同型のしめ飾りを作ることも出来、以下を玄関に飾った。以下は完成品。縁起物の宝船も施し私的には御満悦てあった。

しめ飾りの本を見つける

正月飾りとしてそのしめ飾りを飾り、正月7日も過ぎた頃、近所の図書館に行った際にかっこいい本を発見した。

しめ飾り

作者の森須磨子さんは年末の28日から正月3が日ごろまで全国津々浦々、各家々の軒先に飾られたしめ飾りを写真を撮って回りそれを形や干し草の色や加工方法ごとに分類分けし全国的な分布の表を作成することに成功している。ものすごい資料である。ごめんなさい、分布図だけ載せます。


その本の中で森さんはしめ飾りとは

しめかざりには、多様性、風土性、社会性があります。ゆえに、全国の「人、土地、時間(歴史)」を楽しくつなげることのできる、ポテンシャルの高い文化です。今後、各地で「しめかざり」が再発見され、活用されることを祈っています。

と言っている。

なるほどガッテンガッテン。そもそも地域性により様々な形状がありどれも正解と言うものが存在しない。だからこそ余計店舗でおしゃれな形を売られていたらそれがまた新たな形だわ、と再発見し、またある土地のしめ飾りを見た人がかっこいいと思えばまたそれを真似したり変えてみたり、しめ飾りの形状がこれからも変容していくというわけだ。大変興味深い。
そもそも正月に近所以外のところを訪問した人がこのしめ飾りかっこいいなと思って真似をするところから始まっているのかもしれないなどと考えるとわくわくする。ロマンは尽きない。

そう考えると今後も自分で自分のためのしめ飾りを作ってみよう、いろんな形状に挑戦してみようと思えるのである。ワークショップは最近少しずつ開かれてはいるが、そのうち、青い藁だけ売る店が出てきてもいい。そんな店がふえたら興奮する。そんな時代になったらいいなと思う。
とは言え皆さん縄綯い競争ほんとにかっこいいので是非生で見ることをお勧めします。
田舎町を週末に車で走ることがあれば、春先に運動会をやっている可能性が高いです。

このような記事や、ものづくりをもっと充実させるために邁進してまいります。