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演劇調異譚『xxxHOLiC』を観た人間のオリジン

 2021年9月22日13時の回を現地で、10月3日18時の回を配信で、観させていただきました。原作を読んだことがあったのですが、今回観劇して、私の好みを形成している原点のような作品だったんだと気が付きました(以下ネタバレを含みます)。
 私が小学生の頃の友人にCLAMP先生が好きな人がいまして、その友人にめちゃくちゃ漫画を借りて読んでいました。カードキャプターさくらも、ツバサも、こばとも、もろもろ読んでいました。もちろんxxxHOLiC(以下HOLIC)も読んでいましたが、ちょっと遠い記憶で、細かい内容までは覚えていませんでした。その状態で、今回観劇しまして、壱原侑子を全身で浴びてしまってもうダメでした。今回は、私のオリジンともいえる作品だと思い出せたことを忘れないために、書いておこうと思います。

公式サイト


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あらすじ

アナタの願い、叶えましょう──
“アヤカシ”を視たり、引き寄せたりする体質に悩む高校生・四月一日君尋。
“ミセ”と呼ばれる屋敷で来客者の願いを叶え続ける女主人、壱原侑子。
侑子は“アヤカシ”が視える体質をどうにかしたいと悩む
四月一日の願いを見抜く。
しかし、その願いを叶えるためには
それに見合った「対価」が必要だという。
「対価」を生むために半ば強引に“ミセ”でのアルバイト生活が始まる──
この世に偶然なんてない、あるのは……必然だけ。

公式サイトより引用。

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 先に舞台の内容について、書いておこうと思います。

 まず、舞台美術なのですが、めちゃくちゃ美しかったです…。こちらの記事から、舞台写真をみることができるので、みてください。やはり目を引くのは、赤、緑、紫、黄色のアーチです。障子と煙のようなデザインで、非常に繊細で美しいです。こちら、上手下手でわかれているので、障子のように動きます。舞台を区切るのにも有効ですし、センターに集めると正面から見たときにまるで目のように見えて、世界観~~~!!ってなって素敵です。
 また、舞台全体が階段ベースになっていて、こちらにも煙がデザインされています。天まで伸びるような階段が、あの世とこの世の狭間を象徴しているようで侑子さ~~~~ん!!ってなりました。
 煙、煙って言ってるのですが、それは原作HOLICの作中でよく煙が描かれるからです。侑子さんがキセルを嗜んでいらっしゃるので…。こちら、ぜひご覧ください。書いていて思いましたが、煙、あるいは髪の毛かも知れませんね。えっ、侑子さんの御髪がデザインされた美術って…妖艶すぎ…。
 あと、私、座席が割と前の方でして、それでよかったなと思ったことがありました。それは、百物語のシーン、ロウソクと線香の香りがしたことです。ガチ火を灯す侑子さんも美しく、4DXでした…。

 音楽も素敵でした。はっきりと心情を描いた歌詞というよりも、あぶくという言葉とメロディが、より一層刹那さ、泡沫感を引き出していたように思います。劇伴も、百目鬼が侑子さんに目の相談をするシーンで変化していくのが自然でかつ不穏で、え~~~んこれからどうするの~~ってなりました。

 オールメイル。これですよ。感想を書く上で避けては通れないですよ。いわゆる2.5次元ミュージカルに分類される作品は、キャラクターそのものが舞台上に現れることが大前提なので、その前提が揺るぐような、大変なチャレンジのように思えます。ですが、この作品は、そんな憶測もなにもかもを悠々と跨いで、さも当然のように、そうあることがまさに必然のように、HOLICの世界を立ち現しました。CLAMP先生の作品だからできることのようにも感じますが、これがきっかけに、性別という概念を超えた表現も認められるといいなと思いました。
 これは、性別の特徴を無くすとか均す、という意味ではなく、むしろその個性であり人となりとして、性別が扱われたらいいな、という思いです。太田基裕さん演じる壱原侑子さんは、もしかしたら女性が演じるよりも、エレガントで、妖艶で、生命力と儚さに満ち満ちていました。際立っていたのです。ひまわりちゃんも、かわいくて、でも素朴で健康的。そしていい具合に目にハイライトがない。座敷童は少女漫画のCLAMP先生作画で、雨童女はスカート捌きに隙がない。そして女郎蜘蛛はいわずもがなケバくて、そして強か。五人とも異なる、魅力的で素敵な女性が舞台上に立っていました。最高ですよ、本当にかっこよかったです。

 でも、私が一番惹かれたのは、衣裳です。素晴らしかった。ファッションショーでも観に来たのかと思いました。脚本の構成が短編集のようになっているのですが、侑子さんのお召し物は話の都度変わり、計6着(あっているか不安)ものお洋服を着ます。花魁のようなお着物も、ゴシックでドレープがゆったりと揺れる漆黒のドレスも、全部が全部上質な生地としっかりとした仕立てなのが客席からでもよくわかりました。私はお洋服や衣装に明るくはありませんが、それでもすごいことはわかったのです。
 なかでもやっぱり私が好きなのは、蜘蛛の話で着ていた深いグリーンとブラックのドレスです。男性が女性を演じる上で身体のラインを出さないというイメージがあったのですが、それを見事に覆し、見るものすべてに感嘆の息をつかせるようなマーメイドラインのスカート。ドレープの広がりは、分厚い布と相まってとても重厚な雰囲気を纏っていました。袖口の大きなフリルも、光沢感のある漆黒の生地も、首周りの詰まったレースのブラウスも、緑の上品な総柄も、大きな髪飾りも、何一つ壱原侑子の存在を邪魔せず、引き立てている。普通に欲しいですね、あのドレス…。おいくら万円でしょう…。

 ここで、私がオリジンにどうして気が付いたのかっていう話をします。
 私は、それなりにファッションが好きです。雑誌のFUDGEをよく読みます。赤い靴下は5足くらい持っているし、持っている靴の中で一番履いている日が多いのはローファーです。ブリティッシュなスタイルが好きですね。
 ですが、そういった好みとは別に和服が好きだったり、柄物のシャツや上着、靴下が好きだったりもします。こっちの好みはどこから来ているのか、その答えが、今回の舞台の、侑子さんの衣裳を観てわかりました。これだ、私のファッションセンスはHOLICに育てられたんだ…!と。ありがとう、及川千春さん及び衣裳のスタッフさん。ありがとう、CLAMP先生。ありがとう、小学生の頃漫画を貸してくれた友人。私は今日も元気に柄シャツに黒羽織です。

 あと、考え方もかなり影響されていると思います。漫画でも舞台でも、冒頭に登場する台詞。

世に不思議は多けれど
どれほど奇天烈 奇々怪々なデキゴトも
ヒトが居なければ ヒトが視なければ ヒトが関わらなければ
ただのゲンショウ ただ過ぎてゆくだけのコトガラ
人 ひと ヒト
ヒトこそこの世で最も摩訶不思議なイキモノ
「×××HOLIC」第一巻より

 ものすごく観念論ですね…。例えば、たった今、室内にいて月が見えていないとして、じゃあ今月は実在しているのか、していないかもしれないよね?って話です。ちょっと哲学を齧ってしまったので思うことですが、私がその哲学に惹かれるのも、もしかしたら演劇が好きなのも、ここから来ているのかも…。私は、今、私が、この目で見て、肌で感じているもの。それが全てであり、それを守るために生きていたいと思うのです。

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 なんとDVD・Blu-rayが来年の4月1日、四月一日に発売ということで…。『粋』すぎる…。

 あ~~、はやく壱原侑子になりてぇ~~。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

瀧口さくら

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