読書感想文 「手紙屋」

主人公は横浜の大学に通う大学三年生。
行きつけの書斎型喫茶店で目にした広告から、手紙屋の存在を知る。
手紙屋は、希望者と”手紙のやり取り”をすることをビジネスとしており、十通の手紙のやり取りを通して、希望者の人生の夢を実現するお手伝いをしている人物である。
主人公が手紙屋を知った時には、ちょうど手紙屋が始まってから十年が経っていた。
手紙屋との文通経験がある成功者には、誰もが知る俳優や有名起業家がいることを知り、少し胡散臭いと思いながらもとりあえず手紙を送ってみるところから物語が始まる。


手紙を送り始めた頃の主人公は就職活動をしており、特にやりたいことはないが、何となく安定してそうだからという理由で大手会社を志望していた。
就活を始めたタイミングで人生の目的と向き合い始め、もがき悩んでいる。そんな状況である。

そんな主人公は、たった十通の文通の中で、人生で成し遂げたい大きな目標、仕事の目的を見つけ出し、そして、手紙屋との文通から七年後にそれを達成してしまう。

自分の気持ちと本気で向き合うことは、時に迷宮入りしてしまい、悩み始めたことを無駄な時間だったと後悔して途中で投げ出しそうになるが、絶対に諦めるべきではない。
その経験は必ず自分の血となり肉となり、数年後、数十年後の成長を後押しすることになる。


以下、手紙屋が教えてくれた大切なことを三つに絞って共有したい。


まず一つ目。皆さんはほしいものがあった時にどうやって手に入れようとしますか?
お金?

結論から言うと、手紙屋が出した答えはお金ではない。
手紙屋がいうには、欲しいものを手に入れる方法は「物々交換である」だそうだ。

お金を払うという行為も、
「相手の持っているものの中で自分が欲しいものと、自分が持っているものの中で相手が欲しがる”お金”とを、お互いがちょうどいいと思う量で交換している」ということ。

“自分の持っている素晴らしいもの””相手が欲しがるもの”で代替可能ならば、お金である必要はない。

実際、手紙屋のビジネスのやり方が物々交換である。
手紙屋は手紙を提供し、相手の人生を変える言葉を送る。

一方で、その対価として要求するものはお金ではない。十通の手紙交換を終えて、人生の目標を達成できたタイミングで、手紙屋の手紙の価値に見合うものを送り返すという独特なビジネススタイルを採っている。
多くのお金を得ることも大事だが、それだけではない。お金と同等、あるいはそれ以上の価値がある自分の長所に気付き、それを自分が欲しいものと交換したっていい。

その観点で考えていくと、就職活動も物々交換の考え方に落とし込んで考えることが出来る。
会社は「安定した収入、社会的地位、業務」を与え、労働者は「時間、主体性」を対価として捧げる。

話が少しそれてしまうが、大切な事なので主体性を失うとはどういうことかを説明したい。

会社に入社するということはその会社の社員になることであり、社員である以上は100%の自由度を持って働くことはできない。
経営陣が決めた会社理念や事業内容に沿って働くことになる。
その点において、主体性をある程度は失うことになる。
ここで、主体性という言葉の定義を確認しておきたいが、主体性とは、枠組みがない中で創意工夫をすることである。主体性に似た言葉に自主性という言葉があるが、自主性とは、決められた枠組みの中で創意工夫することである。
つまり、会社員になるということは、役員でもない限り主体性の制限がかかる。しかし自主性は担保される場合が多い。
安定と引き換えに主体性を奪われる。収入を引き換えに時間を失う。
就職活動をしていて思ったことは、これらは二項対立の関係にあり、二つ同時に得ることは基本的に難しいのではないかということ。
主体性が欲しいなら自分で起業する。お金が欲しいなら誰よりも働く。
言葉にしたら簡単なことだが、意外と見落としがちなことだ。
残業が少なくて収入が高いホワイト会社に入りたい、かつ仕事のやりがいが欲しいと思って会社を探している、あるいは、探していた人が多いのではないだろうか。
気持ちはわかるが、会社もビジネスだからそれじゃ赤字だらけになるし、この案件を手にすることができるのは、短い時間で誰よりも成果をあげられるごくごく一部のほんの一握りのスーパーエリートだけだと思う。そしてそんな人たちは瞬く間に昇進して経営陣に加わると思うから、結局たくさん働くことになると思う。

少し長くなってしまったがここで伝えたい大事なことは、人生は物々交換だということ。

安定していて残業が少ない仕事に就くということは、主体性があまりなく、収入もそこまで高くないという点。

逆に主体性を持って収入を得たいというなら、その分だけ安定や時間を失うということ。それだけ責任が伴うということ。その最たる例が経営者。
経営者は安定と時間をほとんど全て失う。そして、役職の階級が下がっていくにつれて、グラデーションのように少しずつ安定と時間を得ていく。
自分がどのポジションにいたいか。どの役職を手にしたいか。そのために何を犠牲にすべきか。物々交換の考えに落とし込んで考えることが出来れば、必要なことが見えてくると思った。


そして、二つ目。法人である会社も人間と同じ性質を持つこと。
この国では法律上、会社には法人という一つの人格を与えられる。
そして、法人である会社も、人間と同じように、この世に生を受けた誕生日があるということは、いつかこの世を去る日が来るということ。これは人類だけではなく、すべての法人に共通することだ。
それでは、幸せに長生きできる会社はどのような会社か。
「多くの人から長期間にわたって必要とされ続けること」と「収入内の生活をすること」の二つを手紙屋はあげている。
最低限、これが出来なければ会社を長続きさせることが出来ない。
これは人間も同じだ。
多くの人は「生きていくのに必要なことは?」と聞かれ、「働いてお金を得ること」と答えがちだが、本当に必要なことは「多くの人に必要とされること」だ。
働くということはその手段に過ぎない。
仕事を通して、多くの人に必要とされる。その対価としてお金を貰う。
そもそも他の人に必要とされていなければ、お金を得ることもできない。
仕事を与えられることもない。

また、就職活動をして会社に入社するということは、その法人の一部になるということで、
その際に大切なのは、現時点でのその法人の規模ではない。現時点で大きい規模の法人の一部になることが幸せなことかどうかは誰にも分からない。
大切なことは、入社する会社が将来、長い期間にわたって多くの人に愛される法人を歩むことができるかどうか。
就職活動は好きになれる人探しであり、そこで一番大切なのは、財力でも知名度でもなく、法人の”性格”であること。人間の恋愛でも同じだ。



三つ目。夢や目標に埃が被らないように動き続けること。
成功者の体験談や素敵な本との出会いによって、一時的にやる気にはなったものの、数週間、数か月後には、そのやる気が嘘のように綺麗さっぱりなくなってしまった経験をしたことがある人は案外多いのではないだろうか。
そう遠くはない過去で、自分もその経験がある。
そこで大切なことは、その夢や目標に埃が被らないように、習慣的に本を読み続けること。誰かの考えが記されているものを読み、それに対して自分の意見をまとめること。
本は、素晴らしい考えを持った、輝かしい人生の成功を収めた人たちの考えに触れることが出来る。
自分を成長させる本を読み続けることで、一時的な効果を継続的に持続させることが出来る。そして、その後には自分の言葉でしっかりとまとめることを習慣化させること。
得たものを自分の言葉でまとめること。それが大事。(今の俺じゃん、と思ってちょっとだけガッツポーズした。でも自惚れるなよ。)


大きな目標を持つということはその大きさの分だけ乗り越えなければいけない壁も高いということ。

しかし、夢が実現した世界では、それによってたくさんの人々が救われ、幸せになり、多くの人から必要とされる人生が待っている。
逆に言えば、その壁を乗り越えることが出来なければ、その人たちを救うことはできない。
だから、その高い壁を目の当たりにして辛くなったら、成功した先に待っている何万人、何十万人、何億人もの自分の応援団がいると思って頑張るべきだ。
去年、自分はその意識が足りなくて途中で諦めてしまった。
だからこそ、次の挑戦こそは必ず、成功した先の未来で待っている自分の応援団の声を聞き逃さずに、絶対にその応援に応えたい。

そして、最後に。

あなたは何をして将来待っている多くの人たちを幸せにしますか?
あなたの活躍でどう世界を変えますか?

その答えがまだ分からない人は、本書を手に取り、自身の人生の目的と向き合ってみてほしい。本書は必ず、その答え探しのヒントになるはずだ。

簡単に答えが見つかる問題ではないからこそ、みんなで力を合わせてより良いものを考えていきたい。
みんなの考えている人生の目的、仕事の目的目標、どんな些細なことでも良いから教えてほしい。力を貸してほしい。
そして、最後まで読んでくれてありがとう。

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