【上級編】ポケモン×BUMP OF CHICKEN Special Music Video 「GOTCHA!」 徹底解説
ポケモンとBUMP OF CHICKENのコラボミュージックビデオ「GOTCHA!」解説最終回。今回は細かすぎるこだわりも出来る限り全て解説する。
それでは早速。
1. ピカチュウとイーブイ、少年と少女
【中級編】では、ポケモンにはリメイクとマイナーチェンジが存在すると説明したが、『Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ』は何にあたるのだろうか。
答えは『ピカチュウ』版のリメイク。
つまり初代『赤・緑』のマイナーチェンジのリメイクという特殊な立ち位置のゲームとなる。
要するに、初代『赤・緑』と『Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ』で20年の差があるが、ストーリーは同じということ。この新旧の対比がこのMVでは非常に重要。
MVを見てみよう。
少年は成長の過程でピカチュウと出会う。生まれた時にピカチュウはいない。少年はポケモンが定着する前の時代に生まれた世代と考えられる。(もしかしたらいるのかもしれないが、少女の写真と対比するといないと考えた方が自然。)
中学入学の頃にはもうピカチュウの存在を意識しなくなっているように見える。成長してポケモンから離れたことが推測される。
一方、少女は生まれた時からイーブイが近くにいる。
少女は既にポケモンが定着した時代に生まれた世代であると考えられる。
何が言いたいかというと、このMVでパートナーとしてピカチュウとイーブイが選ばれたのは、単純に『Let's Go! ピカチュウ』『Let's Go! イーブイ』のパッケージを飾っているからではなく、このMVが、1998年発売の『ピカチュウ』版世代の少年(昔からのプレイヤー)と2018年発売の『Let's Go! イーブイ』世代の少女(比較的新規のプレイヤー)を描いているのからではないかということだ。
さらに付け加えると、少年は「昔ポケモンをやっていたが、いつの日かやめてしまったプレイヤー」、少女は「比較的最近ポケモンを始めたが、生まれる前の世代を知らないプレイヤー」を表しているのではないか。
もちろんそうだとすると2人の年齢が合わなくなるが、あくまで象徴と捉えてほしい。
ちなみに、公式イラストのレッドは左手でボールを持っていることから、左ききではないかと思われる。(コミックス『ポケットモンスターSPECIAL』に登場するレッドは左ききと明言されている。)
意図的かは分からないが、少年も同じく左きき。
2. ピカチュウとイーブイの顔
このMVで強烈なインパクトを残したイーブイの顔。
女の子が描くイラストのような顔と動きをしている。
もちろんゲームに出てくるイーブイとは顔が違う。
ここでゲームのイーブイが出てきてしまうと、現実とゲームの世界がゴチャゴチャになってしまう。あくまでこの少女がいる世界は現実の世界で、少女のパートナーの象徴であることを示すために、イーブイをイラストに描いたような姿で登場させているのではないか。
ピカチュウもまた同じ。
3. ジムリーダーとタイプ相性
ジムリーダーゾーンには【中級編】で紹介した通り、様々なタイプを専門とするジムリーダーや四天王が登場するが、タイプを登場順に並べると以下の通り。
水→電気→地面→氷→炎→岩→草→毒→エスパー→ゴースト→悪→虫→フェアリー→ドラゴン→鋼→ノーマル→格闘→飛行
実はフェアリー→ドラゴン→鋼の流れを除いて、ほぼ全て「不利タイプ」から「有利タイプ」の順に並んでいる。(水は電気に弱く、電気は地面に弱い)
・水←電気←地面←氷←炎←岩←草←毒←エスパー←ゴースト←悪←虫
・ノーマル←格闘←飛行
4. リメイクとマイナーチェンジの世界線
また、このMVは全体を通して、「リメイクとマイナーチェンジの世界線も詰め込みたい!」という、作り手側のこだわりが伝わってくる。
カスミやナツメが分かりやすいが、カントー、ジョウト、ホウエンのジムリーダーは全員リメイク後の姿で登場しているのでよく見てみてほしい。
カミツレは『ブラック2・ホワイト2』時の髪型、服装で登場。
キクノは『プラチナ』だけで使用するドサイドンを連れている。
ハヤトがピジョットを使用するのも『ハートゴールド・ソウルシルバー』のみ。
5. 伝説のポケモンと幻のポケモン
ここからはどの伝説のポケモン、幻のポケモンがどこにいるかを解説する。
関連性の深いポケモンはだいたい同じ位置に登場する。
全て公式イラストのシルエットなので、比較したいときは以下を参照。
右にボルケニオン。下にトルネロス(化身)上にフィオネ。左にカプ・コケコ。
中央にカプ・テテフ。下にトルネロス(霊獣)。
左上にマナフィ。下にボルトロス(化身)。
上にシェイミ(ランド)。中央にカプ・ブルル。右にキュレム。下にボルトロス(霊獣)。
中央にカプ・レヒレ。上にシェイミ(スカイ)。下にランドロス(化身)。
下にランドロス(霊獣)。
右にフーパ(解放)。
右にフーパ(戒め)。右下にウツロイド。左にスイクン。上にレックウザ。
右にディアンシーとメガディアンシー。中央にライコウ。右下にマッシブーン。
右下にフェローチェ。左下にデンジュモク。
右上にメロエッタ(ボイス)とメロエッタ(ステップ)。中央にエンテイ。右下にテッカグヤ。左下にカミツルギ。
右にケルディオ。上にゼラオラ。下にアクジキング。
下にズガドーン。
ここから影が重なってさらに分かりづらくなる。各ビルに着目してほしい。
中央にソルガレオ。左ビルにギラティナ(アナザー)。
奥ビルにファイヤー。
左端ビルにパルキア。左から2番目のビルにアグノム。
奥ビルにフリーザー。左にデオキシス(ノーマル)。下にデオキシス(スピード)。
下にジラーチ。左下にデオキシス(ディフェンス)。
左端ビルにディアルガ。左から2番目のビルにエムリット。右から2番目のビルにギラティナ(オリジン)。右端のビルにルナアーラ。下にデオキシス(アタック)。
奥ビルにサンダー。左端ビルにアルセウス。右から2番目のビルにダークライ。下にレジロック。
中央ビルにユクシー。右端のビルにネクロズマ。奥ビルにセレビィ。下中央にレジアイス。左下にレジギガス。
左下にレジスチル。
中央にツンデツンデ。
中央にビクティニ。上にゼルネアス。右にラティアス。下にジガルデ(50%)。右端はコバルオンではないかと思われる。
左の円にルギア。中央にゲノセクト。
左にマギアナ。中央にクレセリア。右上にイベルタル。右にラティオス。左下にジガルデ(10%)。右下にジガルデ(パーフェクト)。
中央にヒードラン。
左の円にホウオウ。左端にマーシャドー(闘志)。
以上、ここまで6秒で78体。詰め込みすぎ。
ここに登場しなかったミュウツー、ミュウ、カイオーガ、グラードン、ゼクロム、レシラムはそれぞれ後の場面で出番がある。(ビリジオン、テラキオンはおそらく画面外。シルヴァディとアーゴヨンは残念ながら…。)
6. 入れ替わり
少年がイーブイと出会うシーン。
直接描かれてはいないが、少年と少女が重なるシーンと、この後のシーンで少女がピカチュウを連れていることから、少女も同時にピカチュウと出会っていることが分かる。
少年は「昔ポケモンをやっていたが、いつの日かやめてしまったプレイヤー」の象徴だったが、その少年が『Let's Go! イーブイ』の主役であるイーブイと出会う。
これは「昔ポケモンをやっていたが、いつの日かやめてしまったプレイヤーが、新しくなったポケモンに触れる」ことを表していると解釈できる。
後ろで歴代の主人公がシルエットで駆け抜けるのも、その空白期間を表しているのではないか。
一方、少女は『ピカチュウ』版の主役であるピカチュウと出会う。
これは「比較的最近ポケモンを始めたが、生まれる前の世代を知らないプレイヤーが、生まれる前の世代のポケモンに触れる」ことを表しているのではないかと解釈できる。
7. 目が合ったら
ポケモンの世界では「目が合ったらポケモンバトル」が鉄則。
カルムと目が合い画面が白黒に点滅するこのシーンは、サビ前のギターも相まって、ポケモンバトルの始まりを彷彿とさせる。
8. 1番道路
チェレン、トウコ、ベルの3人の並びは、『ブラック・ホワイト』の1番道路で、冒険の最初の一歩を踏み出すシーンの再現。
9. 我ハココニ在リ
『ポケットモンスター ミュウツー!我ハココニ在リ MEWTWO SAGA』という長編アニメーションでは、「自分が何者なのか、自分の存在意義は何なのか」と自問し続けたミュウツーが、ついに答えを見つける。
主人公とライバルが続々と登場する中、突然ミュウツーが登場するのは、歌詞の「魂がここだよって叫ぶ」に合わせたかったのだろう。
10. シルバーの微笑み
このシーンではよく見るとシルバーが一瞬微笑んでいる。
物語の冒頭で研究所からポケモンを盗み出したシルバーは「世界一強いトレーナーになること」だけを目標にしており、ポケモンへの優しさや信頼は「生ぬるい」と嫌悪感を示していた。
そんなシルバーの心境も、ポケモンとの冒険を続けるうちに変化し、物語の終盤では自分のポケモンに愛情を持って接するようになる。
『ハートゴールド・ソウルシルバー』のエンディング後には盗んだポケモンを研究所に返しにくるが、盗んだポケモンがとても懐いていたのを見て、博士は「そのポケモンは君と一緒にいるべきだ」とシルバーにポケモンを譲る。
その時に博士の助手はシルバーの横顔がとても幸せそうだったのを目撃する。この一瞬の微笑みはそういう微笑み。
黒いエフェクトはおそらくホウオウの尾。
11. ミツルと彼岸花
成長したミツルがチャンピオンロード出口で主人公ユウキに勝負を挑むシーン。実はこのシーンは『ルビー・サファイア』のみ。
マイナーチェンジの『エメラルド』ではチャンピオンロードの中盤でミツルが勝負を仕掛けてくる。
そしてリメイクの『オメガルビー・アルファサファイア』では彼岸花の咲くチャンピオンロードの出口で、ミツルが主人公を待っている。
この彼岸花は『オメガルビー・アルファサファイア』における、主人公とミツルのラストバトルを表しているのだ。
『ルビー・サファイア』のシーンに『エメラルド』の服装の主人公、そして『オメガルビー・アルファサファイア』の彼岸花。
冒頭でも述べた「リメイクとマイナーチェンジも包括したい!」という、作り手側のこだわりがここでも伝わってくる。
余談だが、『オメガルビー・アルファサファイア』にはヒガナという名前の少女が登場するが、残念ながらこのMVには登場しない。ヒガナファンの皆さんにはこの彼岸花がヒガナの代わりだと思ってほしい。
12. グリーンとレッドの手持ち
グリーンの手持ちの中にフシギバナがいるが、これは主人公レッドが最初の1匹にゼニガメを選んだ時のもの。この時点でレッドの手持ちには最終進化のカメックスがいることが想定される。
グリーンの目に映るのはレッドがモンスターボールからポケモンを出した時の光。出したのはおそらくカメックス。
そしてしっかりと次のシーンのレッドとカメックスに繋がる。このレッドはグリーンとのラストバトルで勝利した、真の初代チャンピオンという事になる。
ちなみに【中級編】でこのシーンを「『金・銀』におけるシロガネ山最深部でのバトルシーン」と紹介したが、レッドの手持ちにラプラスがいるのは『ハートゴールド・ソウルシルバー』のみなので、正確には『金・銀』ではなく『ハートゴールド・ソウルシルバー』でのバトルシーン。
13. ヒビキのバトル
ヒビキがここで岩タイプのバンギラスを引っ込めるのは、水タイプのカメックスに相性が悪いと判断したから。
ヒビキのデンリュウがヒールボールに入っているという考察も見かけたが、実はモンスターボール。ボールがピンク色に見えるのは回転しているから。
それでもこのデンリュウは序盤で捕まえたメリープが進化した姿、長い時間を共にしてきた相棒と考えるのが自然だろう。何のボールだっていい。
弱点の電気技を目の前にしてカメックスが焦っている描写も細かい。(下顎は塗りミスかと思われる)
そして初代チャンピオン、レッドの敗北。
レッドの手持ちのカメックス、ラプラス、リザードンは全員電気に弱いので仕方ない。
14. 雨と晴れと
伝説集合シーンで出てこなかったカイオーガ、グラードンのシルエットはここで登場。ビルや照明も伝説集合シーンと同じ。
雨雲と日照りをかき消す強い光。
グラードンとカイオーガの争いを収めたという伝説が残っているレックウザの特性は「エアロック」。あらゆる天気の影響をかき消すことができる。
はっきりとは分からないが、雲が一瞬レックウザのような形になる。
15. ガラル地方へ
このシーンに映っているのはガラル地方のワイルドエリア。
中央にナックルシティ、周りの赤い柱はポケモンの巣穴から出るダイマックスエネルギー。
少女がこのステンドグラスの向こう側へ行き、次のシーンのガラル地方
『ソード・シールド』の登場人物ラッシュシーンに繋がるのだ。
16. ダンデの手持ち
『ソード・シールド』プレイヤーの中には「あれ?ダンデの手持ちにバリコオルなんていたっけ?」と思った方もいるかもしれない。
ダンデがバリコオルを使用するのは、主人公が最初の3匹からヒバニーを選んだ場合のみ。その場合、ダンデが使用する御三家はインテレオンになる。
この後のシーンで主人公がヒバニーの最終進化、エースバーンを使用しているので、それに合わせてダンデの手持ちが変化していることが分かる。ちなみにホップもちゃんとゴリランダーを連れている。
17. 背番号227
ガラル地方のトーナメントではジムリーダーやチャレンジャーが背番号のついたユニフォームを着る。それぞれの背番号には意味がある。
例えば、ジムリーダーのサイトウの背番号は193だが、これは格闘タイプのジムリーダーということで戦(いくさ)に由来している。
主人公の背番号はプレイヤーが自由に決められるのだが、ここでマサルが着ているユニフォームの背番号は「227」。
この数字が何なのかというと、2月27日(初代ポケットモンスター『赤・緑』の発売日)を表している。
ちなみに2月27日は「Pokémon Day」として、日本記念日協会に正式に認定されている。
18. チャンピオン タイム イズ オーバー
ダンデの帽子が宙を舞うシーン。
これは『ソード・シールド』で無敗の王者ダンデが主人公に敗れた後、帽子を投げ上げ、「チャンピオン タイム イズ オーバー!最高の試合にありがとうだ!」というシーンから来ている。
帽子が宙を舞うシーンが他にもあったことを思い出してほしい。
「帽子が宙を舞う」という演出で、初代チャンピオンレッドの敗北と最新世代のチャンピオンダンデの敗北を重ねているのだ。
19. 少年と少女と帽子
「新しくなったポケモンに触れた」少年の元には最新世代チャンピオンのダンデの帽子が、「生まれる前の世代のポケモンに触れた」少女の元には初代チャンピオンのレッドの帽子が。
それぞれがポケモンに触れる中でダンデとレッドに勝利したとすると、少年が触れたのは『ソード・シールド』及びそれ以前の作品、少女が触れたのは『赤・緑』『金・銀』及びそれ以降の作品であると推測できる。
途中に登場するトレーナーやバトルシーンも少年と少女が出会ってきた、見てきたシーンなのだろう。
そしてレッドの帽子は少年の元へ、ダンデの帽子は少女の元へ。
それぞれの世代へ帰っていく。
20. 『鎧の孤島』と『冠の雪原』
いたるところにビラが貼られているが、これも無意味なものではない。
ビラは6パターンあり、それぞれ『ソード・シールド』の追加コンテンツ、『鎧の孤島』と『冠の雪原』に登場する場所が描かれている。
スクリーンの下にあるビラの左から、悪の塔、マスター道場、水の塔。
『冠の雪原』の場所についてはまだ名称が明らかになっていない。
(2020.11.21追記:左からダイ木の丘、雪中渓谷、カンムリ神殿)
よく見ると、英語で "THE ISLE OF ARMER"(鎧の孤島)と "THE CROWN TUNDRA"(冠の雪原)と書いてあることが分かる。
21. まどろみの森
紹介し忘れていたが、このシーンでスクリーンに映るのは『ソード・シールド』に登場する伝説のポケモン、ザシアンとザマゼンタ。
場所は『まどろみの森』。ということで2匹とも眠っている。
22. ノボリの微笑み
シルバーの微笑みと違って大きな意味はないが、白い服の方、ノボリの口角が一瞬上がる。本来ノボリの口角は上を向いているのでこちらが正しい。
ちなみにノボリとクダリとのバトルに勝利すると「ですが人生はまだまだ終わりません! そこに向かって全力でひた走ってくださいまし!」というセリフを聞くことができる。
これは「そんな意味も込められていたらいいな」という希望。
23. 151
【入門編】で初代『赤・緑』のポケモンがミュウを含め151匹だと説明したが、この動画の「GOTCHA!」のコールまではちょうど2分31秒(151秒)となっている。
最後の最後までこだわり抜かれた作品に脱帽。
おわりに
いかがだっただろうか。新しい発見はあっただろうか。
もしかしたらまだまだ隠されているこだわりがあるかもしれないので、MVを何度も何度も見返してほしい。
本当に素晴らしい映像を生み出してくれた松本監督をはじめとしたクリエイターの方々、そして素晴らしい音楽を生み出してくれたBUMP OF CHICKENの皆さんに最大限の感謝を込めて、この解説記事を締めさせていただく。
それでは。
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