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金色の雨

月のない夜に空から青いかいじゅうがやってきてわたしくしたちに金色の雨をふらす。金色の雨は地面に落ちるとすぐに赤い鯉になり湖に続く川へと泳ぎだす。わたくしたちは、着ていた服を脱ぎだす。服が金色になりすぎてもう着ていられないから。わたくしたちはとうとう帽子も脱いでしまって、残りは左手の手袋だけになってしまった。わたくしたちは顔を見合わす。わたくしたちがこの手袋を脱いでしまったら、わたくしたちではなくなってしまうのではないかという不安がわたくしたちの頭をよぎったからだ。わたくしたちは迷い、結論を出せずにいる。わたくしたちは顔を下に向けしばらくの間、鯉の行方に思いをそらしてみる。鯉はあるものは左へゆらゆらと、あるものは右へのろのろと、あるものは前方へいそいそと泳いで行く。目的はいったい何処にあるのだろうか。鯉の行くのはどこなのか。思い思いの方向へ泳いで行っているようで、最終的には鯉はみな一つの場所にたどり着くのか。わたくしたちは手袋をはめた左手のことを忘れて、裸のまま考えている。

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