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「赤い疑惑」とピエール・カルダン【#3_宇津井健】2020年03月

コロナの最初の年2020年、緊急事態宣言下。

暇つぶしに見た昭和ドラマ「赤い疑惑」の衣装提供が世界的に有名なフランスのピエール・カルダンだったことに興味をそそられ綴ったテキトーな鑑賞日記。

3回目の今日は、ヒロインの父親・大島茂役の宇津井健について。

大学医学部助教授という役柄もあって、大体いつも、紺色のスーツに白いワイシャツにストライプのネクタイというコーディネート。
襟大きめ、ネクタイ幅広というのが、ザ・70年代って感じだ。

この当時は赤い公衆電話だった


仕事中はドクターコート(白衣)を羽織っているのだが(さすがにこれはカルダン謹製ではないだろう)、そのデザインが「え?戦前か?」ってくらいにめっちゃ昔っぽくて驚く。もちろん今どきの薄手なストレッチ素材とは真逆の、ゴツゴツと硬そうな厚手の綿素材。そんなにゆったりもしていない。見るからに動きにくそうだ。袖口がゴムで絞ってあるのが、割烹着みたいでちょっと笑ってしまった。

袖口の絞ってある部分が見えず残念...


まぁ考えてみたら50年も前のことだからなぁ。でも改めて自分がこんな時代から生きてるのかと、ドラマの本筋とまったく関係ないことに驚愕してしまった(汗)。

紺のスーツ&白衣などの他に、シーンによっては「あーなんかパリジャン♡」って感じのレザーのコートやツイードのブルゾンなども着ていた。が、これが恐ろしく着こなせてないことにまた驚く。

この時代の俳優がトレンチを着ると、だいたい刑事役に見える


これは宇津井健に限らずだが、今どきのモデル出身の俳優と違い、この頃の日本俳優は頭大きめ・肩幅狭め。身長だって高くない。時代劇などの和装だとこの体型は生きるのだが、洋服はかなり限界がある。そもそも当時の日本男性の中には「男がファッションなんて恥ずかしい」という感覚があり、お洒落のポテンシャルを上げようなどという発想はおそらく皆無だっただろうし。
ロングのレザーコートなど坂口健太郎あたりがさらりと羽織ると格好いいんだろうな、ツイードのブルゾンとか菅田将暉なんか面白く着こなしそうだな、とか想像を巡らすのもある意味楽しかったりするが。

実はファッションよりも興味深かったのは、昭和あるあるエピソードのひとつ、「個人情報の取り扱い」のラフさ加減だ。

例えば、空港での1シーン。パリから実の妹(岸惠子)が一時帰国するというのでお出迎え。今か今かと妹の到着を待っていると、そこへ全館アナウンス、「東都大学の大島様、東都大学の大島様、大学の方へお電話をお願いいたします」。
大学で緊急事態が起こったけれど、スマホはおろかポケベルもない時代だから、大学職員が空港に電話をして「到着ロビーにいる東都大学の大島あてにアナウンスしてください」と要請したのだろう。

職場も名前も晒されまくり。
このシーンだけではなく、似たようなシーンは他にもあった。
そう、今では考えられないことだが、これ、当時はべつに普通のことだったのだ。

思い起こせば私が社会人になった昭和末期頃だって、例えば仕事相手との待ち合わせに大幅に遅れそうな時など、直接の連絡手段がなかったから、待ち合わせ場所に「そちらのエントランスで○○社のXXさんという方と待ち合わせをしているのですが……」って電話してたよ、そういえば。
相手に電話口まで来てもらうこともあったり、伝言をしてもらったり、館内アナウンスをしてもらったりと、対応もさまざまだったな。
そうそう、JRの駅に電話したこともあったっけ。でもちゃんと駅員さんが伝言を伝えてくれたりしてたから、すごいよね。
実におおらかな、いい時代だった。
今と違って、どこも人手は潤沢だったからね。

もうひとつ思い出したけど、待ち合わせのビルや駅の電話番号が分からないときは、NTTの104番で電話番号を訊いてたなぁ。
いや~、よくそんな、まどろっこしいことしてたな。でも懐かしいな。

物心ついた時から(あるいは生まれる前から)携帯電話があったような、若い世代の方がこういう光景を見るとどう感じるのか、訊いてみたい。

次は母親役の八千草薫と渡辺美佐子(なぜか母親役2人)について語る。
ではまた〜。

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