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#9 福祉園で職場体験した時の話。

興味のない分野に放り込まれて、むしろ得をした気分になったことがあるだろうか?

世の中、思い通りにいかないことが多いけれど、それが決して悪い結果なのかというと別の話だと思う。

僕の、中学校の職業体験が、そうだった。


好んで行ったわけではなかった。本当はスポーツ専門店とか、そういう「カッコいい」職場にしたかった。けれども、先生にその旨を伝えた結果、なぜか福祉園になってしまったのだ。しかも僕だけ。

福祉園はどういうところか、さえ知らなかった。地元にあったのにも関わらず、初めて行った時、「こんな場所に、こんな施設があったのか…」という印象だった。


福祉園は正直に言って、恐怖を感じた。

僕は配属になったクラスでは、いろんな人がいた。落ち着いた性格で、ずっと椅子に座っておしゃべりだのする人も、いれば、大柄で筋肉質の運動好きな人もいた。

そのクラスで一人、とても怖かった人がいた。

30歳くらいの人で、とても大きい。筋肉質で、力加減を知らないので、ちょっとした動作にものすごく力を入れる。僕も吹っ飛ばされそうになった。

さらに、自分の頭を殴る癖があるようだった。なぜかわからないが、何かを吠えて、そしてグーの手で思い切り自分の頭を殴る。鈍い音が響いた。

その他の人との会話も、当たり前だが、噛み合うはずもなく、感情がついていかない会話が続いて、頻繁に勘違いが発生した。


「怖い」という感情を持ったことは否定しないが、僕はその職場体験でいろんな気づきと疑問を持った。

「なぜ彼らはこんなところに隔離されているのか」

僕にとっては、彼らは「隔離されている」ように見えた。集団生活を学ぶことや様々な理由で、一つの施設に集められているのであろうが、僕は地元民なのに彼らを知らなかった。おそらく、知らなかったからこそ、「怖い」という感情が生まれたのだろうと思う。

また、「彼らを理解することは不可能じゃない」という希望も持てた。

僕と表現や感じ方が違うだけで、それぞれ気持ちを行動や表情に表してくれるし、あの頭を思い切り殴ってた人も、何かしらの表現をしていたのかも、と今では思う。

それこそ、職場体験のような短期だったらわからないことも、そこにいる職員の人は扱いに慣れていて、彼らの性格もよく知っているようだった。


僕は、福祉園の職場体験を通して、彼らは「社会から除外されてしまった人々」と中学生なりに、その雰囲気を感じた。きっと普通にスポーツ用品店などに行っていれば、彼らのような存在を知ることはなかったし、「福祉園」のイメージも曖昧なものだっただろう。

今住んでいる家の近くにも、福祉園がある。時々、散歩しているのを見かけるが、とても朗らかな気持ちになると同時にやる気が出てくる。


「あなたたちがみんな、のびのびと生きられて、地元の人たちに積極的に受け入れられて守られる、そんな社会を目指していくから。」

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