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phaさんの『パーティが終わって、中年が始まる』を読んだ。いい。

pha(ファ)さんの新著『パーティが終わって、中年が始まる』を読んだ。

おもしろかった〜〜。めっちゃ読ませる文章で、昨夜から一気読みしてしまった。

作家であり元・「日本一有名なニート」であるphaさんの、いわゆる中年クライシスについて書いた本。

phaさんのことはいつどこで知ったか忘れたけど、2010年(14年前!)にちきりんさんと対談をしていたのは見た記憶がある。

そこからもっと知ったのは、伊藤洋志さんとの『フルサトをつくる 帰れば食うに困らない場所をつくる』という共著で、これは今でもうちの本棚にある。

移住を考えはじめたころに読み、当時ぼんやり感じていたことが言語化されていて、けっこう影響を受けた。

さらにそのあと『ひきこもらない』もkindleで買って読んだ。

あとはXをフォローしているだけなので、この約10年間、うすーーく情報が入ってくる、40代半ばの同世代の男性だった。

『パーティが終わって〜』の中年クライシス本は、voicyで晴さんが話していたのをきっかけに電子書籍を買ってみた。

まず新刊を読むよりさきに、家の本棚から約10年前に書かれた『フルサトをつくる』をひさしぶりに手にとってみる。

新刊は、自分の老いとかなり向き合って書かれているらしいので、昔のphaさんとの温度感の違いなんかも比べてみたいと思った。

こういう比較ができるのも、同世代の人をゆるく長く追いながら自分も同じだけ歳を重ねてきたからこそか。

『フルサトをつくる』は、ざっくりいうと多拠点居住についての考察&実践本。

「都会か田舎かという二者択一を超える住まい方を考えたい」という伊藤さんの動機に、phaさんが乗っかった形で、和歌山県の熊野古道で「田舎でシェアハウスを作る」を実践した記録が書かれている。

(これを初めて読んだとき、多拠点居住にかなりワクワクした。けど実際は子どもがいたのであちこち移動は現実的ではなく、移住という選択になった)

今、本全体を見渡してみると、これは「暮らし」じゃなくて「娯楽」に近かったんだなと思う。

それがいいとか悪いではなく、田舎暮らしを刺激として消化するか、生活にシフトしていくか。

古民家を直したり、仲間とカフェやシェアハウスを作ったりするのは、自分のなかにあるDIY精神が満たされて、かなり楽しい。

頭と身体と、すこしのお金を使ったエンターテインメント。それはワクワクするはずだ。

当時36才のphaさんも、田舎での経験をポジティブに消化しているように見て取れた。

で、新刊を読んでみる。

「自分はひとりでも寂しくない」とか「何にもこだわりや執着がない」とか「インターネットでゆるいつながりがあれば生きていける」などと、無敵を気取って言っていた昔の自分が恥ずかしい。本当は全然そんなことなくて、環境と運に恵まれていただけだったのに。

「パーティが終わって、中年が始まる』(幻冬舎)

序盤からかなりダウナーな感じだったけど、中盤でそれまで自分が書いてきた著作ほぼ全否定みたいな言説で、赤裸々すぎる。おもしろい。

なんとなくわかっていたけど、田舎で運営していたシェアハウスの話は、ただの一文字も出てこなかった。

そこでできた繋がりなどはあるとは思うけど、中年クライシスで「詰んできたな」と感じた40代の自分を救う装置には、なりえなかったのかもしれない。

本は全体的にはやるせないというか、アリとキリギリスのキリギリスを見ているような哀しさ漂う内容なんだけど、ひとつだけ希望があった。

それは、phaさんが音楽をはじめていたこと。

ずっと音楽が好きだったのにプレーヤーに手を出せなかった彼が、真正面から音楽に向き合って、ライブ活動もしているらしい。

あぁ良かった。そうだよね、本当にクライシスの只中にいたら、こんな本書けないよね。

phaさんこのままどうなっちゃうの・・・とちょっと不安だったけど、たぶんきっと大丈夫。

この一節を読んだとき(たぶんきっとなれますよ、「謎のじじぃ」)って思った。

最後の一言がいい、すごくいい。

自分に音楽的才能があるとは思っていないけれど、バンドで演奏するのは楽しい。誰かと一緒に音を合わせているときは、今ここにしかない特別な瞬間にいる、と感じられる。スタジオに入るたび、またここに帰ってきた、という気持ちがするようになってきた。ひずんだギターの音。這うようなベースライン。キーボードが同じフレーズを何度も繰り返す。あと四小節でまたボーカルが入ってくるから、そのタイミングに合わせて、力いっぱいクラッシュシンバルを鳴らすのだ。

phaさんに幸あれ!

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