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【書籍紹介】ファンを作る力 デジタルで仕組み化できる2年で25倍増の顧客分析マーケティング<中編>

プロバスケットボールの川崎ブレーブスサンダースの事業責任者である藤掛直人氏が、同クラブの人気を飛躍的に伸ばしたデジタルマーケティングの奥義を、余すところなく紹介した書籍。

前編は、こちら。

■ファン分析の心得

  • コアファンのインサイトを理解するため自分もファンの一員になり、のめり込む

  • 頭をリセットして冷静な視点を持つ

という複数の視点を自分の中に持ち、体験を設計する。

■相関分析から施策を立案

推しの選手が出来た体験が来場のリピート率と相関。推しの選手を作ってもらう様々な仕掛けを実施。

  • 各選手の特徴を知ってもらう為に、ホワイエの装飾にキャッチフレーズを入れる

  • 試合前に選手紹介のショートムービーを流す

  • 会場で販売するポテトチップスに選手のカードがついてくる

■試合以外の楽しみを作る

「スマイル・キッズ・テーブル」。子供たちが選手のウォーミングアップの一部に参加し、練習中の選手とハイタッチができる特典。

■他業界をリサーチしアイデアをストック

  • 他業界の事例をリサーチし、エッセンスを抽出し自分の中でストック

  • アイデアが必要な際に、ストックしてあるエッセンスの中から使えそうなものをピックアップ

  • 自分の商品に適合させ、更に付加価値をつける

■重点ターゲットの設定方法

単に獲得単価に着目するのではなく、獲得した顧客の将来価値を重視。将来価値とは、今後、顧客を増やすに際し、どれだけポジティブな影響をもたらすか。

■顧客将来価値

  • 来場力:使った金額ではなく、純粋に来場数で評価

  • 勧誘力:どれだけ周囲の方を誘って一緒に来てくれるか

■勧誘力が高い層(アンバサダー候補)

  • バスケをしている小学生の子供を持つ母親

  • イベント好きでアクティブな20~30代の独身女性

■ファンがファンを生む状態をつくる

  • サンダースのファンであることが恥ずかしくないのはもちろん、自己表現として周囲に主張したいアイデンティティとなる

  • ファンになりやすい層に効率よくアプローチすると同時に、ファンになってくれた方にクラブに肩入れして頂き、一緒に盛り上げる側になって頂く

■来場者へのユニフォームプレゼントの効果

来場きっかけになることに加え、サンダースのユニフォームを保有して頂くことで、再来場意向や親近感の誘発に繋がる

■コラボ成功の秘訣はストーリー

サンダースとコラボする何らかの理由がストーリーには不可欠

  • 川崎や神奈川出身である

  • バスケが好き

  • サンダースと何らかの関わりがある

■ファンつくりに感動ストーリーが必須

一方は、名前も知らないプロバスケットボール選手がプレーしているのを見る体験。もう一方は、選手たちが日々苦しみながらトレーニングし、ベンチ裏で苦悩し、ぶつかり、たまにふざけ合って関係性を深めながら優勝を目指していることを知った上でプレーを見る体験。どちらが豊かで、より感動的かは言うまでもありません。

■YouTubeでの成功の秘訣

  • プラットフォームが拡大するベストタイミングで参入できた

  • ブランドの核となる価値で勝負できた

まずは、プロバスケ選手である強みとYouTubeらしい企画が交わる領域で勝負し、その後に領域を広げていくことにしました。例えば、「プロなら、目隠ししても余裕でバスケできるよね?」とか「プロバスケ選手がゲーセンにあるシュートゲームに本気で挑戦した結果」など、プロバスケ×やってみた系の企画です。

さらに「現役プロが特別に教える3Pシュートが入るコツと練習法」「プロバスケ選手がリアルでやっている方のトレーニングルーティン」の様な、プロバスケ×ハウツー系のきかくなど、プロバスケ選手だからこそ見たくなる企画を中心に据えることにしました。

■貫くのか合わせるのか

社長やブランディング責任者なども交えて膝をつき合わせ、白熱した議論を重ねました。競技やプレー系動画とエンタメ企画動画のバランスをどうするのか、どんな視聴者を想定したコンテンツを提供していくべきか。

最終的には「YouTube視聴者層に近い藤掛の意見を尊重する」という社長判断によりYouTubeライクな投稿をする方針で進めることになりました。

エンタメ色の強い企画は結果的に、選手のユニークなリアクションや、選手同士の和気あいあいとした関係性を引き出すことにもなりました。YouTube動画を見たことがきっかけで、選手に注目する方も少なくありません。

■実は重要なカメラマン

カメラマンと演者(選手)の距離が近いことが重要。石川元は、本人の資質はもちろん、ドキュメンタリーの撮影でチームに帯同したこともあり、選手やチームと信頼関係が築けていた。

「プロバスケ選手はどれくらい後ろからシュートが決まるのか検証した結果」は、100万回を超える大ヒット記録をしました。これは、運が良かったことは確かに大きな要因の1つです。この動画は、遠くから制限時間内にシュートを決められるかに挑戦する企画ですが、制限時間が尽きてブザーが鳴る瞬間にシュートが決まったのです。しかも、それが3回も連続で。

ギリギリで成功できるという劇的な展開が3回も連続する奇跡が目立ちますが、その裏にはそれを100万回再生動画に仕上げる陰の仕事があります。奇跡が生まれうる企画の事前準備。個性や仲睦まじさが垣間見える、選手同士の関係性を捉える撮影。奇跡のような獲れ高をうまく見せる編集力。さらにこの奇跡が生まれるまでの様々な企画撮影。そういったものの積み上げで生まれた神回でした。

選手のみんなが楽しんでやれているのは、カメラマン兼進行役を担当してくれる石川元さんとの信頼関係が大きいかと思っています。

初めて会う人にいきなり「面白いことやって」と言われてもなかなか難しいので。元さんが、僕らを気遣いながらも一緒に楽しんでいるという信頼関係がYouTube向けの動画に関しては一番大きなポイントかなと思います。

■YouTubeの集客効果

認知や購入の直接のきっかけになったかは置いておいて、少なくとも50%以上の方がYouTubeを見てからチケット購入に至ったとの調査結果。

  • 選手が全力で取り組んだ

  • 焦って露骨な宣伝を入れることはせず、チャネルの成長を優先した

  • 視聴者にストーリーを根付かせることができた

各選手のストーリーが伝わることによって、親しみやすさや応援への熱の入り方が変わります。極端な例で言うと、友人のお子さんや同級生が、甲子園に出ていたら思わず応援してしまうのと同じです。選手を身近に感じてもらうことができたのが成功要因の1つと考えています。

プロスポーツを含むエンタメにおいて、ストーリーは発信者だけのものではありません。伴走するファンの皆さんの中にも、それぞれのストーリーが派生して生まれるものです。

後編に続く。


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