見出し画像

某ガイド協会公式アカウントが炎上の件

(※タイトルの滝の写真は自前ので、尾瀬とは関係ありません)

ごぶさたです~。皆様お変わりなくお過ごしでしょうか?自分はついさっき尾瀬ガイド協会 ツイッターへの投稿「不適切」と謝罪というニュースを見かけてしまい、ちょっと迷った挙句に何か書き始めてしまいましたよ。。

なるほど、検索で流れて来る削除済の某公式垢のツイートをざっと見た範囲でも、尾瀬保護財団から抗議文を出される事態にまで発展してしまうのもやむなしかな…と思わないでもないです。(リンク先ではかなりハッキリと「差別に該当する発言」と言い切ってますね。日本だと珍しいかも)ここには敢えてツイート(削除済みなので画像も)は貼らないので、興味ある人は尾瀬+ガイド、とかで検索して探してみて下さい。

これは推測の域を出ないのですが、たぶん、このアカウントの中の人(どなたか存じませんが)にとっては、全く悪気もなかっただろうし、何が炎上の原因になったのかも正直わからないんだろうなあ…と思うんですよ。この人が普段から親しくつきあっていて、こういう軽口を交わしてる人にしても。

ご本人を中高年の男性だと想定して、同年配の、価値観が似たような方々をガイドすることが多いんでしょうかね。ガイド中にそういうギャグを言うとウケるんだろうなと。(き〇まろ漫談みたいな下ネタ毒舌系は、一部年配の女性にもウケますしね)「場をなごませるために、潤滑油として」そういう話のタネに、アフガニスタンだったり、女性専用車両が出て来たのかなあ。

でも。それはオフレコの個人レベルの日常会話とかならば仕方ないけれど(ない…のかな?)仮にも何かの団体の「公式」の名を冠したアカウントのツイートとしては適切なんですかね?と疑わざるを得ないわけで。やっぱり相当ツイートの安全運転範囲から踏み外してしまったと言うべきでしょう。

どういう分野であれ、公式アカウントの向こうに、多くの人は意外なほど「人間性」を無意識のレベルでも見ているようです。このアカウントの発言内容は信用できるのか?不測の事態が起きた時に、その態度は公平かつ誠実でありうるだろうか?そうでないなら情報として信じるに値しないので。企業アカウント等ではコンプライアンス研修をしっかり受けて運用してる筈。

難しいのは、登山ガイドとかって就業形態としては個人事業主に近いだろうと思うんですよね。協会から派遣されるにしても、役所とか企業ほど厳密にコンプライアンス研修みたいのは受けていないんじゃないかな?と。お客様にしても、あのガイドの人なんか下ネタ多くて嫌だったな~とか思っても、別にそれをわざわざ協会にまで苦情として言ったりはしないだろうし。そうなると、同一エリアでガイド歴の年数が長い人は常連の固定客もそれなりについていると思うので、例の人も人気ガイドさんとしてむしろ現場では頼られてたりする可能性もある?(職人とかで腕のよい親方は口が悪い的な…)

実際にこの中の人にガイドされたことがあるわけではないので何とも言えませんが、仮に尾瀬の自然の中でトレッキング中に、こういう不謹慎っぽい軽口を言われても自分はさほど気にならない、という客もいるかも知れない。でもその客がもし女性だったら、あのルッキズム(異性を容姿で値踏みするような態度)満点のツイート群を見て、この人と自分だけで人気のない山の中を長時間歩くことになったら、何か怖いし嫌だな…と思うのが普通です。

登山ガイドという職業は、山の技術面や経験において、ちょっと自信のない初心者や中級者をエスコートして、安全に楽しく登山が出来るように導いてくれる仕事の筈なのに、お客さん(女性)を不安にしてどうするのか?と。そういう意味でもガイド協会の公式ツイートとしてふさわしくないです。

アフガニスタンとかに言及したツイートにしてもそうです。今まさに歴史の教科書に載るような大事件が進行していて、そこには明日の命の保障もなく恐怖と絶望の渦中に大勢の人々が現に生きているわけで。安全圏から軽口のネタにするには余りに重く、不謹慎と言わざるを得ません。これはコロナ禍に苦しむ大都市についてのツイートも同じことです。共感がなさすぎる。

その昔、登山家の植村直己さんがエベレストのベースキャンプに滞在していた時。現地のシェルパ族の人から「欧米の登山家は、伝統的に自分達のことを主人と召使のように扱うが、日本から来たあなた達は、我々を対等な友人として接してくれるから嬉しい」と言って大層好かれていた、と何かで読んだ記憶があります。エベレストをはじめヒマラヤ山脈があるのはネパール、アフガニスタンまで雄大な山脈は続いています。アフガニスタンの人たちも欧米と違って自国で戦争をしなかった日本人に好意を持ってくれています。中村哲医師のように地道な復興事業に貢献した偉人もいましたし。

個人的には、尾瀬限定だとすると厳密には登山ガイドとは違うのかも知れませんが、山に関わる仕事をしている人が、そういう異郷の山のある国の人々への共感性のかけらもないツイートをしてしまったという事実が哀しいな…と少し思いました。登山とは、山に想いを馳せるとは、そこに生きる人々を含めた環境そのものに敬意を払い、自分の持てる力を尽くして誠実に峰々と向き合い、征服するのではなく融和し、人知を超えた偉大な自然から活力を分け与えてもらって、ほんの少しでも「よりよい自分」になって、また下界に帰ってくる…そういう気高い営みだと思っていたので。

もし登山やトレッキングとかの行為が、地球への畏敬も他者への共感も育むことはなく、単なる暇つぶしの一種、安っぽい消費行動であり、周囲の環境への「搾取」に過ぎないのだとしたら、私は大分ガッカリすると思います。だってそれでは下界のよくある娯楽とあんまり変わらないじゃないですか?

登山する人やクライマー達をかっこいい!と思って、以前にそういう漫画を描いていた人間としては、だから、そうであって欲しくはないです。たかが知らない人のツイートの内容で何を熱くなってるの?と笑われてもです。

そもそも、あの一連のツイートがどうやって「尾瀬の魅力をアピールする」ことになると考えていたのか?も不明ですね。(そうでないなら公式アカウントで発信する意味がない)公式垢の中の人がいつのまにか自分の個人アカウントかのように錯覚してしまう現象はたまに起きるみたいですが…。今回は担当を変えるまでもなく即アカウントが削除されてしまいましたが、再発防止のための研修等、何か協会のほうで改善策を発表したほうがいいかも。

この手のアカウント炎上騒動が起きるたびに、また世の中が息苦しくなったと嘆く向きもあるかもしれませんが。よくあるフェミニズム叩きとかに留まらず、今度の場合はコロナ禍で身近な人を失った、あるいは今まさに家族が目の前で苦しんでいる人、紛争地の住人や難民として迫害を受けている人々の生死、苦難をあからさまに軽視するような発言があったわけで、ある意味ではよりわかりやすい「人権侵害」のツイートと言えるかもしれません。

願わくば、こういう事例を「不謹慎発言すると怒られるからやめとこう」といった後ろ向きな防御姿勢で警戒するのではなく。この地球上で同じ時代を生きる名前も知らない人々にも、自分と同じように大事な家族がいて、平和に生活を営む権利があって、幸せになりたいと懸命の努力をしているのだ…と心の何処かに留めておけるような、小さなきっかけにでもしてくれれば。

せっかく豊かな尾瀬の自然を紹介してくれるのなら、人間界の喧騒に疲れた精神を少しでも癒したり、浄化してくれるような、そんな公式のツイートであってくれたらよかったのかな~と思います。まだ遅くはないかな、とも。

今後、関係各位の迅速な対応と努力によって状況が無事に収まり、穏やかに澄んだ美しい尾瀬のイメージが回復されることを祈っています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?