夫婦別室をやめてみた

※これは、単なる夫婦のいちゃいちゃぶりを赤裸々に綴っているだけの、鬱陶しい駄文です。ご理解ください。

ここ数日、私は旦那への求愛行動に勤しんでいる。出勤中に、夕飯には何が食べたいのかメールで尋ねるようになった。帰宅したら玄関に出迎えるようになった。

ワクチンを打って変わったのは旦那の方ではなく、私の方である。日に日に愛しさが増す。これが愛なのか情なのか、そんなのはこの際どうでもいい。旦那と居たい。ずっとずっとそばに居たい。

敢えて細かいことは言わず、寂しいから一緒にいたいとだけ言っている。旦那はどこまで今の私を受け入れられるのか、線引きしたい氣持ちもあった。

子が居る前では旦那にもたれかかるようなことはしてこなかったが、するようにした。子の前で、ママはパパが大好きなんだよとも言った。子は嬉しそうに微笑んで、私を抱きしめてきた。

子を寝かしつけた後は、リビングに行って延々と旦那にべったりくっついている。旦那は何も言わず深夜までテレビを見て、私の好きなようにさせている。

旦那は入浴すると自室に引き上げ、ビールを飲みながら本を読み始める。我が夫婦は長いこと夫婦別室だったが、私が自分の毛布と枕を持って旦那の部屋に押しかけても、旦那の布団の半分を占領しても、旦那は何も言わない。

ただ、旦那が椅子に座り、私に背を向けて読書をしているのだけは、私が氣にくわない。何だよ。本なんかに負けたくない。無駄に対抗意識を燃やす。

ねえ、私が居るとウザい?と訊いた。すると、ん?としか言わない。私は寂しいよ、と言ってみせた。すると、今、本読んでるんだよ、と面倒臭そうな声が返ってくる。

黙って枕と毛布を持って旦那の部屋を出ようとすると、旦那が引き留めてきた。何でそうなるの、と顔をしかめる。だって、あなたが本を読んでるなら邪魔しないもんと膨れてみせる。旦那は何か言いたげな顔で黙る。

黙り込んだ顔を見て私は線引きした。そうか。旦那は戸惑っているのか。この数日、私がこんなに求愛してくるのが、理解できずにいるんだな。そして、この反応を見る限り、それが嫌ではないんだな。

そこじゃなくて、ここに来るのっ、と私は自分の隣の、布団の空いているところをポンと叩きながら命令した。すると旦那は大人しく椅子から立って、布団の上にあぐらをかいた。私は寝転がりながら、旦那の腰に手を回してしがみついた。

旦那は黙って読書を続けて、ビールを飲む。何をそんなに熱心に読んでいるのかと思い、旦那の太ももと腕の間に頭を突っ込んでみた。どうやら椎名誠のエッセイらしい。

メガネもコンタクトもつけていなかったから断片的にしか読めなかったが、何やらミミズにまつわる話のようだ。こんな話のどこが面白いのかと真顔で訊いてみたら旦那は、いいの、と言って笑う。この本は一冊丸ごとミミズの話が書いてあるのかと訊いてみたら、そんなわけないでしょ、とまたしても笑う。時刻はすでに午前3時をまわっている。こんな丑三つ時にミミズの長さや種類や生息分布を知って面白いのか、それが明日役に立つのか、こんなに可愛い嫁がまとわりついてることよりも重要なのかと訊いてみたらまたしても、いいの、と笑い、羽交い締めにされた。

羽交い締めにされたのが嬉しくて脇腹をくすぐった。旦那はのけぞって笑った。あぐらをかく旦那のちん🍄こらへんを枕にして、仰向けになった私は、なんで、ちん🍄こはこんなに温もっているのか、湿度もいやに高くないかと訊いたら、知りませんと言って笑った。私は旦那のほおの肉をつまむ。そして、チューしてみろと命令した。

チューなんかしたらシェディングがモロにくるかもしれない。でももうこの際どうでもよかった。チューごときで死なん。死んでたまるか。

旦那は少し照れながらチューしてきた。口の周りの髭が剛毛で、ゴワゴワしてて痛い。そのゴワゴワがこの頃いっそうしげり過ぎではないか、清潔感がゼロではないかと訊くと、マスクをしているからこれでいいのだ、と開き直った返事が返ってきた。ゴワゴワして痛いがもう一回チューされてやる、と言い張るとチューをしてもらえた。大事なことだからさらにもう一回されてやる、と言い張ると旦那はくすくす笑いながらチューしてくれた。

ビールが飲み終わった旦那と、そのまんま旦那の部屋で寝た。旦那は私に腕枕をして、すやすや寝息を立てる。私はしばらく旦那の尻や背中、モシャモシャした髪の毛を撫でくりまわしていたが、やがて力尽きて寝てしまった。清い夜だったが、まあいいだろう。子の居る寝室には、帰らない。