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【3日目】つっぴょん巡礼の旅

↑のつづき。

朝になった。たっぷり寝たJr.達は6時過ぎには起きて、寝室を抜け出すと、早くもリビングで遊び出した。ほとんど寝ていないであろうつっぴょんは早起きして、朝ごはんの支度をしてくれていたらしい。私は眠すぎて体が動かず、元子Jr.に脇腹を蹴飛ばされてようやく上体を起こした。はるぴょんは眠過ぎて死にそうな顔をしていたものの、起きていたので、そこでダラダラとおしゃべりを再開した。

話の流れで唇の話になったとき、ふと鏡を見た。私の唇は紫色に染まり、一瞬、状況が掴めなかった。口を開けると、歯も紫色に染まっている。赤ワインの色素がこびりついたらしい。こんなにも氣色悪く恐ろしい顔に誰も突っ込まず、昨夜はシリアスな会話をしていたというのか。みんなは優しいのか優しくないのか、私には皆目分からない。分からないまま唇を洗い、歯を磨いた。

今日は悲しいかな、帰る日である。はるぴょん親子は午前中の電車で、のとにゃんは昼過ぎに飛行機で帰るらしく、車で来ていたわんこ番長は夜から親戚のお宅へ伺うらしい。私たち親子は夕方の新幹線に帰るので、それまでの間、何をしようか決めかねていた。それらを勘案して、つっぴょんやのとにゃんがいくつか観光地を提案してくれた。

つっぴょんが用意してくれた朝ごはんを食べ、帰り支度をした。つっぴょんが、みんなに漢方薬をお土産に持たせてくれた。当分、葛根湯に困ることはなさそうである。

朝は、みんなでつっぴょんの家の前で写真を撮った。ここまで来るとお互いがお互いに馴染み、家に溶け込み、親戚一同のようであった。つっぴょんやわんこ番長は年若いばあちゃんみたいになってたし、孫のJr.達の世話をあれこれ焼いていた。そこへ遠縁にあたり、つっぴょんの親友でもあるちろりんと、その息子であり「親戚のお兄ちゃん」化していたのとにゃんは、Jr.達をシャボン玉で遊んでやってるし、つっぴょんの長男の嫁みたいなはるぴょんはそば茹でたりおにぎり握ったり食器洗ったりしてるし、次男の嫁みたいな私は食器棚から皿やコップを出したり洗濯物を畳んだりしていた。

元子の脳内イメージ

そんな親戚風一同とお別れするのは寂しい。従姉妹のお姉ちゃん化していたはるぴょんJr.とのお別れが寂しいらしく、元子Jr.は別れ際にぎゅっと抱き合っていた。きっとまた会える。そう信じて、はるぴょん親子を先に駅まで送った。

その後、まだ少しだけ時間があるのとにゃんと共に、私たちはとあるヨーグルト工場へと向かった。私はヨーグルトが大好きなので小躍りした。Jr.もアイスクリームが食べられると聞いて喜んでいた。さっきまでのしんみりした空氣はどこへ行ったのか。ここへ連れてきてくれたつっぴょんの提案は、誠にナイスである。

つっぴょんは工場併設の売店へと案内してくれた。ここでアイスクリームを奢ってもらい、暑い中、忙しく食べた。Jr.は食べるのが下手くそで、もたもたしているため、いつの間にやらアイスクリームは液体になってしまった。

乳脂肪分が高いであろう、濃厚でリッチな味わい

液体アイスクリームをバキュームさせ、手を洗うと、今度はヨーグルトを買いに再び売店へ入った。ヨーグルトもいろいろな種類があり、無糖タイプから加糖タイプ、果物入りタイプなど、幅が広い。ここで私たちはそれぞれ好きなヨーグルトを買い込んで食べた。さっきアイスクリームを食べたばかりだというのに、私たちの胃袋は底がしれない。

のとにゃんはまだもう少し時間があるというので、今度は湖へ移動した。たくさんの水鳥が湖面をすいすい泳ぎ回り、楽しげに鳴いていた。売店でつっぴょんに餌を買ってもらった元子Jr.は、鳥たちの顔に向かって餌を投げつけた。投げ方が悪いとわんこ番長がフォローした。なんと平和な情景なのだろう。


飛行機の時間が近づいていたので、お別れをすると、のとにゃんはつっぴょんの車に乗って去っていった。私とJr.はわんこ番長の車に乗せてもらい、海岸へと向かった。

内陸から海岸へ移動すると、美しい景勝地が現れた。海岸線に沿って道は緩やかな曲線を描き、海の水色は深いコバルトブルーと、やや緑みがかった青色とが層のように重なって、光り輝いていた。天氣に恵まれていたことは本当にラッキーだ。こんなにも開放的な氣持ちになるとは。

海水浴場に到着した。お盆を過ぎていたので監視員は居なかったけれど、先客はまばらに居た。どうやらここはシュノーケルスポットらしく、シュノーケルを楽しむ人が多い。

私たちは水着も浮き輪も持ってきていなかったけれど、着替えだけは用意してきたので、早速、裸足になって海岸を駆け出した。風がやや強く、波もそれなりに立っていたので楽しめた。私はわんこ番長に借りた、どピンクのトレーニングパンツを履き、つま先から太ももまで濡らした。番長は自前の緑色のトレーニングパンツを履いて、装いを「いいとこの奥様〜サマーバカンス風」にキメてきた。元子Jr.は全身ずぶ濡れになり、奇声をあげてはしゃいでいた。どうせなら、はるぴょんJr.も一緒にいたらよかったね、今度は海遊びにも誘おうねと話しながら、私たちは水道で体を洗い流し、海を後にした。


わんこ番長にバスタオルを借り、車の中で着替えた。番長には新幹線駅で送ってもらい、そこでお別れすることにした。わんこ番長との付き合いは、かれこれ二年が経つが、いつも番長の車に乗せてもらい、いつも細々と世話を焼いてもらっている。帰り際にもおもちゃをもらって、たっぷり抱きしめてもらった。

元子Jr.は駅のホームで新幹線を待つ間、「あの家で暮らしたかった」「寂しい」と何度も呟いた。一人っ子で、いつも私と二人だけで食事をしていれば尚更だろう。大勢で食卓を囲む楽しさ、一緒にお風呂でお湯かけっこする楽しさ、一緒に布団を並べて眠る楽しさなど、いろんな楽しさを覚えてしまったのだから。なんだかとっても不憫に思い、新幹線の中では好きなだけおやつを食べさせた。その後は抱っこして、お腹やほっぺたをまさぐった。元子Jr.は少しだけ元氣を取り戻して、きゃっきゃと笑ってくれた。

チップスターから始まり、プリッツ、バタークッキー、プッカ、ビスコへと続く

私は私でみんなと合宿のようにして過ごしたこの三日間がとても尊かった。みんなが友達ではなく本当に親戚みたいだったし、普通に、なんの違和感もなく暮らしていたので、心が疲れることがなく、とても充実した。

つっぴょん、ちろりん、わんこ番長、はるぴょん、はるぴょんJr.、のとにゃん、ありがとうございました。沢山のお土産、お料理、心配り、優しさ、愛を注いでくれてありがとうございました。とても英氣を養えました。次回もまた親戚風一同、集まりましょうね(はあと)。