配慮した死体ポーズ

3日目

先日clubhouseで雑談していると、友人が「配慮した死体」という言葉を拾ってずいぶんウケ
てた。

モーションアクター、スタントマンなどをやっていると主人公、敵、モブキャラ含めてよくやられる演技をする。
20年近くこの業界に身を置く存在としては、それはもう死んだ経験が1000回とかでは全然効かない、数千回から数万回死んでると思う。1日に100回死ぬ日なんてのもザラにあった。

なのでやられる演技のパターンも沢山研究開発した。
ダメージを受ける場所、強弱によっての反応、キャラの矜持、意識ありなり、毒、雷、炎、レーザー、上げればキリがないが、果てはワケのわからない闇の力でどんな苦しさかもわからず死んでください、なんてこともある。(どう表現しろと?ww)

このとき、実写の撮影だと自由にやっていいが、モーションキャプチャーの撮影だと気にしなければならないことがある。それが死体の形だ。

理由は二つある。
一つはモーションキャプチャーの撮影の特性上、体のマーカー(センサー)が沢山隠れてしまってる状態で奇怪な形で死んでいると、後からオペレーターやアニメーターさんがデータを綺麗にしたりモデルで再現したりすることが困難で、余計なコストをかけさせてしまう。

まあ、作品の規模や技術者さんの気概によって許される場合もあるが、費用対効果も考えずわざわざ面倒臭いデータばかり提供するのは無神経なので、可能な限りこちらで調整しておく。

もう一つは、衣装、装束物、人外の者、女性キャラクターなら胸の大きさなど、アクターは出来るけど憑依させる3Dモデルによって埋まってしまって取れないポーズがある。 動いてるときはあまり気にならなくても、静止状態になると誤魔化せないことが多々起きる。

こういったことを事前に意識して、死の起因と死ぬまでの演技をしっかり表現しつつ、最終的には後の作業工程のことまで意識した死体ポーズに違和感なくスムーズに移行する。

これが「配慮した死体」である。

自分のデビュー作は戦国無双でした。
その頃は演技はうまく出来てもなぜかオペレーターさんだけが渋い苦笑いを浮かべていた。

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