ひとりのせかい

薄暗い。肌寒い。
昼間だと言うのに、何だか世界は明るくなく、いつもの蒸し暑さもない。
ふと、窓を打つ音が聞こえて、雨が降り出したことを知らされた。

ああ、なんだ。
だから外が暗かったのか。

雨は嫌いではない。
ただ、薄暗い室内にいると、世界に一人取り残されたような不安を感じる。

干したばかりでまだ湿り気を残した洗濯物。
積み重ねられた、まだ開いてもいない本たち。
飲みかけのコーヒーに、途中で飽きて放り投げだされた編みかけの何か。
畳まずにそのまま投げられている洋服たち。
全てやり掛けのまま投げられている、自分の世界のあれこれ。

雨のせいでやる気は出ない。
雨でなくてもやる気はないけど、とりあえず今日のところは、気分が上がらない理由を雨に押し付けてみる。

気分を上げるために、お気に入りの音楽をかけてみる。
アコースティックギターの柔らかなサウンドが特徴的な曲。
そこに乗せられる、美しい歌声。
雨の音と調和して、良い感じの雰囲気じゃないだろうか。
淹れたばかりの温かいコーヒーの香りを楽しみながら、外で降り注いでいる雨の音に耳を傾けてみる。

そんな、土曜日の午後。

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