剣の魔女と魔具の迷宮
交錯の瞬間、勝敗は決した。
オーガの棍棒はエルザの銀髪を掠めたが、【魂喰い】の刃が入れ違いに心臓に突き立てられたのだ。
ドクン…刃が赤黒く、朧に輝く。エルザは更に刃をねじり込み、無造作に薙いだ。断面から血と臓物が溢れ、オーガが崩れ落ちた。
エルザは刃を振って血を払い、ランタンに焚べる。炎はオーガの脂を得て勢いを取り戻した。
…数年前。王都の東に突然地下迷宮が現れた。宝物と危険に満ちた迷宮はすぐに人々を虜にし、貪った。
【賢王】ローダンすら迷宮の全貌を見通していない。だが、エルザはその主が【東の魔女】クスハだと知っている。【西の魔女】から魔力を奪い、作り上げた迷宮。そこで更なる力を蓄えているのだと。
何故か? エルザこそが西の魔女だからだ。今や彼女の力は、膨大な魔具の知識のみ。だが、十分だ。迷宮に散らばる魔具を利用し、クスハの元へたどり着く。そして…
「頂くわ。貴女の蓄えた全てを」
剣の魔女は不敵に笑った。
【続く】
いいなと思ったら応援しよう!
それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。