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生前、死者と、死出の旅

脳天に風穴が空いてる姉ちゃんと、腹に大穴が空いている中年に挟まれながら、俺は草一つ生えない荒野を歩いていた。雲ひとつない空に、さんさんと照っている太陽。俺が目を細めようとすると、急に砂っぽい風が吹いた。

「ウォォォォ……」「アァ……アアアア……」

両隣の二人が呻き声を上げる。俺はいつものように反射的に追随した。

「ウァァァァ……ォォォ……」

いちいち声のトーンを合わせたりはしない。何も意識せず、うわ言のように呟くのがコツだ。ここ一ヶ月ほどの旅で俺はそれを学んでいた。すると二人は俺に呼応するかのように呻いた。

「ア……アアアア……」「ォォォォ……」

……相槌を打ってくれているのか、それは。

まっすぐにふらつきながら、二人は歩いていく。俺はなるべく不自然な動作で後ろを振り返る。老若男女を問わない3ダースほどのゾンビの群れが、仲良く行進している。

こいつらに俺がゾンビでないとバレたら、どうなるんだろうな?

【続く】

それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。