宇宙船かぐや荘
偶然拾った入居者募集チラシは、あたしの理想の物件を紹介していた。つまり割安で築年数が若くて、お風呂とトイレが別な部屋のだ。
名前はかぐや荘。すぐに電話して…そして今、ようやく引っ越しの片付けが終わった。
「いやー、お疲れ様」
お隣の犬飼さんがマスク越しに言った。妙に毛深いが、優しい人だった。
「遅くまでありがとう」
「いやいや。お互い異邦人だし助け合いだよ」
確かに都会は心細い。頷いたその時、突然部屋が揺れた。地震!?
「あ、始まった。外を見てごらん」
犬飼さんは平然と言った。外を見ると、正面に広がる星空。下を覗くと、遠ざかる地球。
…なにこれ?
疑問を置き去りに、かぐや荘が月面着陸した。二足歩行のウサギや怪生物が入り口に集まってきた。
「い、犬飼…さん?」
恐る恐る振り返ると、そこに狼男がいた。
「いやー、やっぱり夜は月に限るね。あ、そういや君は何星人なんだい?」
生粋の地球人です。そう答える前にあたしは気絶した。
【続く】
それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。